ウェストウィンドIVという双発の軽飛行機。元々はビーチクラフトの18型という1937年初飛行の機体だったんですが、「お前テキトーなこと言ってんじゃねえぞ」と逆に怒られてしまいそうなくらい大改造されていて、原型を留めていません。
この個体は1943年製でカナダ空軍に納品されたもの。1966年にBC州に払い下げられて、このように魔改造されました。BC州航空局では空中調査、輸送、救急搬送に使われていました。
後の火災で損傷したので登録抹消されて博物館へやってきました。つい最近まで復元作業されていて、2015年に作業が完了したばかりだったはずです。
まずエンジンは原型の星型空冷エンジンに替わってプラット・アンド・ホイットニー・カナダのPT-6ターボプロップエンジンに換装。この時点でやべぇってなります。
次に、車輪の配置を尾輪式から前輪式に変えました。前輪式にすると地上にいる時の前方視界が良くなると同時に、これで地上にいる時に機体を横から見た時の角度が変わりました。前輪を設けるために機種の形状も長く延びたものに大きく変わりました。
尾翼は、原型では垂直尾翼が左右に分かれた双尾翼だったのを普通のこういう配置→┻にしました。
もうお前誰やねーんとしか。
ローターウェイ スコーピオンIIというヘリコプター。ホームビルド機の中でも珍しい、ヘリコプターのキットです。初代のスコーピオンIは1967年に発売、その改良型のスコーピオンIIは1971年発売。IIでは2人乗りになりました。
ノールダイン ノースマン。1935年初飛行。ブッシュプレーンという未開地用機の中でも代表的な機種です。降着装置は予め車輪、水上フロート、雪上スキー板へと容易に換装できるように設計されていて、カナダのあらゆる未開地に適応できる軽飛行機なのでした。
カナダ製の航空機としてははじめて輸出にも成功した機体で、アメリカ陸軍がUC-64として使いました。
この個体は1944年にアメリカ陸軍のUC-64Aとして納品され、1956年にカナダのグリーン・エアウェイズ (CF-JDG) に払い下げられました。その後アメリカのアラスカに移籍して登録番号もN538DWになりました。最終的にはBC州の鉱山会社で使われましたが、ある日の着陸時に車輪が外れたことが原因で深い損傷を負ってしまいそのまま廃棄されてしまいました。
博物館はその機体を引き取って復元に着手しました。胴体の損傷はかなりひどかったらしく、他の現存機からニコイチしてきました。復元後の塗装はカナダ空軍のものに改められました。
単発機にしてはやや大柄な印象もあります。軽輸送機としても使えます。この搭載量を活かしてカナダの奥深くの辺境の遠隔地まで物資を運んできたのです。
エンジンはプラット・アンド・ホイットニーR-1340ワスプです。
胴体は意外と厚い・・・?
いわゆるロングシートですが人間も運べるのね。この座席配置はやはり輸送機のそれですね。配列次第では旅客機のような前向き座席にもできたでしょうけど、そのような資料を見たことがないので謎としておきます。
アリソンV-1710 12気筒液冷エンジン。例えばP-38、P-39、P-40のアメリカ陸軍戦闘機三兄弟、P-51の初期型とその派生型A-36、これらの搭載エンジンがV-1710です。
どの機体もスカポンタンだったので、ダメエンジンとよく言われます。例外的にP-38は成功しましたけどあれは排気タービンを載っけたからという部分が大きいでしょう。
この個体は第二次世界大戦中、カナダ空軍パトリシアベイ基地所属のP-40に搭載されていたものだそう。よく残っていたねというところですが、これは戦後に「ミスUS」という名前のパワーボートのエンジンに転用されて、数々のボートレースに出場したのでした。
エンジンの後ろ側。アリソンは給気口が上を向いているのか。マーリンは下側でしたね。戦闘機の空気取入口を観察すれば確かにその通りなんですね。
ライトR-3350サイクロン18 18気筒空冷エンジン。R-1820 9気筒エンジンを複列18気筒化したもので2,500馬力以上出せる強いエンジン。
有名な搭載機は皆さんも御存知B-29爆撃機。B-29に搭載した時はよく燃えるわ爆発するわ、ろくなもんじゃありませんでした。B-29の搭乗員は日本の対空砲で撃墜されるよりも機体のエンジン故障で墜落する方を恐れていたんじゃないかと。
戦後になって熟成が進むと信頼と実績を積み重ねていって、C-119輸送機、A-1攻撃機といった軍用機に加えてDC-7、コンステレーションといった旅客機にも使われるようになりました。
この個体はマーティンJRMマーズ飛行艇に搭載されていたもの。消防飛行艇に改造されていた機体のエンジンでした。
カナディアCT-33シルバースター。航空博物館の常連、ロッキードT-33をカナディアがライセンス生産したもの。もう何度も出ているので説明不要でしょう。
学芸員が付いていれば操縦席に座れるようです。私はボッチ見学でしたんで出来ませんでした。
翼端の燃料タンク。チップタンクと呼びます。個人的には翼端の燃料タンクは見た目があまり好きではないです。
空気取入口。口の中に板が挟まっていて、境界層対策なんやろなと。でも板の右側にある口はどこへ導かれているのだろうか?(調べない)
シュレーダーHP11-Aエアメイト。1962年初飛行のグライダーです。壁に貼り付けられている形で展示されています。グライダーって主翼が大きいし車輪も付いていないので置き場所無いし安定して置くのも難しそうなんですよね。
主翼は18mありにけり。競技用に設計されたガチ仕様です。
ニューポール11のレプリカ。縮尺しているんだと思います。
オースターAOP6。イギリス製の観測機です。アメリカ陸軍で言うところのOナンバー。1945年就役なので朝鮮戦争で実戦投入されたそうな。
この個体は1946年製でカナダ空軍に納品されたもの。マニトバ州の訓練校にある第444飛行隊で使用されていました。
主翼に吊られている小さいプロペラは何なんでしょうね?ラムエアタービン?
リパブリックRC-3シービー。海の蜂という名前の1944年初飛行の飛行艇。第二次世界大戦終結後の民間航空需要の高まりを見越して開発されました。その頃はもう潮目が変わっていたとは思いますが余裕ぶっこいてるなぁ。
ただし需要を見誤ったみたいで思ったほど売れずに製造原価だけで半分以上掛かってしまいました。当初4,000ドルだった定価は最終的に6,000ドルまでうなぎのぼりに。なので2,500機造ったあたりで生産打ち切りになってしまいました。
2人乗りですが頭でっかち。エンジンはキャビンの後ろに後ろ向きで配置されています。プロペラの回転する空間を確保するためにキャビンより後ろの胴体は極端に絞り込まれた形状をしています。こんな形状でも飛ぶんだ、と驚きます。
この個体はアラスカコースト航空の社用機だったもの。1991年に博物館に寄贈されました。
これでとりあえず一通り見終えました。
ドマイナーな機体ばかり収蔵しているのがお分かりかと。それでも航空博物館の定番品T-6とT-33を両方とも収蔵しているあたり流石です(個人的にはこの2機を収蔵しているところはいっぱしの博物館だと思っている)。
今回改めて博物館のホームページを覗いてみましたが、この数年内に収蔵品をまた増やしているようです。特にランカスターの収蔵はびっくりです。今は復元中でその作業もあと10年くらいかかりそうな気がしますが。
またビクトリアに行く機会があれば寄ってみたい博物館です。
というところで今回はこれでおしまい。