カナダ航空宇宙博物館の続きです。ちょっとだけ宇宙コーナーもあるので、見てみます。
これはカナダーム (Canadarm) という船外作業用マニピュレーターです。1981年登場。日本語だとカナダアームとも書かれており、表記揺れがあります。
1981年11月にアメリカのスペースシャトル「コロンビア」でこのカナダーム201号が打ち上げられました。1億5300kmもの距離を移動(地球約3,800周分)し、23回の任務をこなしました。最後の任務は2011年6月、スペースシャトル「エンデバー」の最終任務のときでした。
こんな感じ。こういう宇宙関連の実物展示はだいたいモックアップと相場が決まっていますが、これは実際に宇宙に行って実戦投入されていますから重みがちがいますな。
カナダームはスペースシャトルの貨物室に取り付けられて、貨物室にある貨物を掴んで船外へ放す、あるいはその逆の作業ができます。シャトル・リモート・マニピュレーター・システム (SRMS) と呼ばれています。
宇宙空間でのロボットアーム制御は想像するよりも難しいみたいですが、そこら辺の説明が少ないのでよく分からず。
スペースシャトルは退役してしまったのでカナダームも一緒に退役しましたが、今度は国際宇宙ステーションに取り付けられたカナダーム2というマニピュレーターが現役です。
こちら宇宙空間での船外活動ユニット (EMU) です。船外活動中の宇宙飛行士の保護と生命維持を目的とした、いわゆる宇宙服です。
胸部はごちゃごちゃしています。生命維持装置やら通信装置やらなんだと思います。
目盛りの文字が反転しているんですが、これは腕についている鏡を通して目盛りを確認するため。首を倒して覗き込みながら目盛りを見ることはできないんですって。
他にも宇宙関連の展示がありますが、割愛します。みんなも行ってね。
宇宙の次は、ブッシュプレーンのコーナーに迷い込みました。ブッシュプレーン (Bush plane) というのはカナダ独特の航空機の種類で、カナダ北部やアラスカ、ユーコン等の外界との接続が乏しい辺境の未開地へ行くための物です。
未開地なので飛行場があるところは少ないわけでして、そういう辺境でも運用できるように、通常の車輪の他に水上用のフロートや雪原用のスキー板を装備できるように、なおかつ簡単に換装できるように設計されています。
他にも、下方視界に優れた高翼配置、高い短距離離着陸性能、低圧タイヤ等の性能を付与されていることが多いです。
さてこの機体はノールダイン・ノースマンMk.VI (Noorduyn Norseman Mk.VI) です。1935年初飛行。
カナダで初めてのブッシュプレーンと言われています。頑丈な構造と広い荷室が評価されて、カナダ空軍やアメリカ陸軍でも採用された実績を持ちます。カナダで開発された機体は数多くありますが、これは人々から頭一つ抜けた誇り高い扱いを受けているように感じました。
変わっているのは、機体は順当にMk.Iから開発されていったんですが、Mk.IVの次は一個飛ばしてMk.VIでした。その後第二次世界大戦後にMk.VIの改良型としてMK.Vが開発されています。つまりマークナンバーが逆戻りしているわけです。
これは、V (5) は勝利 (Victory) のVとも読み取れるので、第二次世界大戦に勝った暁にはそれを記念したマークナンバーを開発するためにあえて空席にしていたというのです。なんだか余裕っすね。
この個体は1943年製で、戦時中は通信士の訓練用に使われたんだそうな。戦後は連絡、輸送、訓練等多用途に使われて、1950年に退役。その後博物館が取得しています。機体は晩年の姿をしているとのこと。
胴体は機首からエンジンマウントあたりまでが金属製ですがそれより後ろの胴体は鋼管羽布張りです。主翼も羽布張りです。速度は求めていないのでこういう構造のほうが合理的でしょう。ブッシュプレーンは過酷な環境での運用となりますので、鋼管羽布張りの方が修理が容易というのも評価される理由でしょう。
がに股の脚が特徴的。これは、水上用フロートに履き替えた時に安定性が出るように左右の間隔を広げるためだと思います。
どうでもいいですが、エンジンから伸びている長い排気管は、当時のカナダ空軍のレシプロ機によく見られるものですね。機体に排煙が付着しないようにするためか、消音性を出すためなのか、よく分からないのですが・・・。」
プラット&ホイットニー R-1340-AN1ワスプエンジンです。星型9気筒、600馬力。1920年代の代表的航空機エンジンのひとつで、これを搭載した機体は多いです。ノースマンのエンジンもこれです。
カーチスHS-2Lラ・ビジランス (Curtiss HS-2L La Vigilance) です。1917年初飛行。飛行艇ですね、つまり羽のついたカヌー。
アメリカ海軍の沿岸哨戒飛行艇として開発されました。ブッシュプレーンとしての適性に目をつけたカナダでも戦後に余剰となった機体を購入し、第一次世界大戦後初めてのカナダのブッシュプレーンとして使われだしました。他にも1919年にはカナダ初の森林パトロールと上空からの森林調査、1920年に上空からの鉱山権益の発見、1924年には初の定期航空便などを達成しています。
「紅の豚」に出てきたモブの飛行艇はこういう感じだったような、という気がします。
機体の隣りにあった黒い物体。特に説明はありませんでしたが、これがオリジナルの船体だと思います。
骨組みまで見れるのはありがたいですね。オリジナルの船体は湖に水没後40年以上そのままでしたが、良好な姿を留めています。寒冷地の淡水湖に沈んでいたのが幸いして腐食があまり進行しなかったのだと思います。湖に沈んだ飛行機って意外と物持ちがいいんですよね。
飛行艇なのでエンジンに海水が被らないように高位置に置かれています。エンジンはリバティで、V型12気筒、360馬力です。
この個体は1918年製で、1919年にカナダ初のブッシュプレーンとして飛行した記念すべき機体なのです。1922年に機体はオンタリオ州の湖に墜落して、機体は水没しました。1967年に発見されて、翌年から引き揚げられました。
オリジナルの船体はいじらずに残しておいて、復元用に別の機体から供出したものを使っています。復元は1970年から1986年までの長期間にわたっていて、当館の中でも最大最長の復元計画だったと言われています。
カーチス・シーガル (Curtiss Seagull) です。1912年初飛行。
これもアメリカ海軍が当初使用した飛行艇で、第一次世界大戦後に民間に放出された機体がカナダで運用されたものです。飛行艇としては小型に属するのでブッシュプレーンとして最適でした。
この個体はブラジルのアマゾンの探検に使われたんだそうな。まさしく、取材班はアマゾンの奥地へと向かった・・・・時に使った機体ですな。
主翼は長めですね~。
1925年式のヘンダーソン社製バイクです。聞いたこともないメーカーですが、1912年にアメリカで創業したものの世界恐慌で1931年に倒産してしまった短命の会社です。4気筒バイクの雄だったそうな。
私はバイクはみんな同じ形に見えるバイク音痴なのでどういうモデルなのかはよく分かりません。4気筒エンジンは見たところ直列配置ですが置き方が現代のものと比較すると90度回した状態で置かれています。
なんで置かれているのかもよく分かりませんが、ブッシュプレーンに運ばれていって現地のアシに使われたというところだと思います。
ベランカCH-300ペースメーカー (Bellanca CH-300 Pacemaker) です。1925年初飛行。
アメリカのベランカ社で開発された6人乗りのブッシュプレーンです。カナダ空軍向けにカナディアン・ビッカーズでもライセンス生産されました。
2機しか現存しないCH-300のうちの1機で、テキサス、メキシコ、アラスカ等で飛行をしていた機体です。
1920年代にもなるとはやくもブッシュプレーンとしての機体の形状は確立された感はありますね。
エンジンはR-985ワスプジュニア(星型9気筒、450馬力)。
1925年式のフォード・3トントラックです。モデルTTかな?平トラックですが、ダブルキャブなのはちょっと珍しいかも。
これも唐突に置かれているだけですが、ブッシュプレーンが内地の飛行場から飛び立つ前に積み込む物資を運ぶトラックなんだよ、という演出というところでしょうぬ。
というところで今日はここまで。
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