黒鉄重工

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北米project 4 ~Is the order a warbird? その71【2016/03/04~10】

2019-01-18 22:28:10 | 海外旅行記
2016年3月7日(月)12時20分
 アリゾナ州ツーソン ピマ航空宇宙博物館
ボーンヤードツアーから戻ってきて、再び博物館の見学を再開します。ところで見学時間はあと2時間ちょっとしか残っていないんですけど、結構不安です。駆け足で行きましょう。

まずは博物館のロータリーにゲートガード的に置かれているダグラスA-4Cスカイホーク(1日ぶり5機目・301機目)
A-4の中で全天候攻撃能力が付与された最初の型式です。塗装は民間のフライトシステム社のものになっています。


館内に戻りまして、ツアーで中断したところ・・・フェアチャイルドA-10AサンダーボルトII(1975年・302機目)から見学を再開しましょう。
アメリカ空軍の導入した攻撃機です。主に陸軍の地上部隊への上空からの近接航空支援攻撃(CAS)を目的として開発された機体です。これの開発史はなかなかおもしろいんですが、脱線が過ぎるので割愛。気になったら調べてみてね。これも見てみたい機体でしたので、感激でございます。

F-15と同世代のジェット機でありながらレシプロ戦闘機並みの700km/hしか出せない速度、分厚い直線翼、格納しきれない主脚、ろくな電子装備も無いなど、いろいろ変わった機体なのです。これも被弾の可能性の高い近接航空支援任務とからの生存性確保のための設計で、とても興味深いのです。


頭から尻尾まで面白い構造なんですが、まずはしっぽから。
エンジンはTF34ターボファンエンジンを採用しています。これ、速度面で不利のある高バイパス比エンジンで、戦闘用の軍用機でこれを採用するのは異例です。はなから速度なんて求めてはいないのだ、ということです。代わりに高燃費を実現しています。
エンジンの配置位置も興味深く、胴体の上に背負うように双発で装備しています。被弾時の被害を低くするためにポッド式で機外に配置しています。高い位置にあるので砂埃の舞う前線基地でも故障の原因になる砂や石を吸い込むことも低くなるのです。さらに双発にすれば片方がやられても生存性が高まります。

垂直尾翼も左右2枚になっています。これも双発エンジンと同じで生存性向上が目的です。さらにジェット噴流が出す赤外線を遮る効果もあるとかないとかで。赤外線を抑えられれば赤外線誘導の地対空ミサイルを防ぐことが出来ますからね。


WWII期の練習機かな?ってくらい分厚い直線翼。大きい上半角が付いているのも特徴。低速でも揚力を確保できるし、武装の搭載でも有利です。
主翼の翼端は下方に曲げられています。旅客機のウィングレットのようなもので、翼端渦流発生を抑えて誘導抵抗を減らすのが目的だとかで。


正面。WWIIの双発攻撃機かいなって感じ。
なんといっても固定武装の30mmガトリング砲GAU-8アベンジャーが目を引きます。発車口が機首の中心線に来るように、中心線からやや左側に配置されています。
で、変わっているのが中心線から右側に配置されている前脚です。クソでかいアベンジャーを機首に置いたがために前脚をしまう空間がなくなってしまったのです。なのでやむを得ずオフセット配置にしたのです。


A-10の代名詞、GAU-8アベンジャー。強力な30mm劣化ウラン弾をお見舞いするぞ。対戦車兵器で、肉厚の薄い上面装甲をぶち破るのだ。対人兵器に使うには威力過剰です。
弾倉や給弾装置も含めるとクソでかい武装になるんで、A-10の主翼より前方はだいたいアベンジャーを収めるのでいっぱいいっぱいになっているのです。
なお開発したのはゼネラルエレクトリックです。軍用機方面ではジェットエンジンで有名な会社ですが、こんなのも造ってるんね。


給弾部。


こっちはGAU-13 30mmガトリング砲。アベンジャーは7砲身ですがGAU-13は4砲身で発射速度も低いアベンジャーの廉価版です。
これを外装化して機関砲ポッドとしたのがGPU-5で、F-16に装備されました。あんまり使い所がなかったのか、1990年代には用途廃止になっています。


超巨大紙飛行機・・・の破片。
子供向けの巨大紙飛行機コンテストの一環で作られたものだそうな。大きさは全幅7.3m、全長13.7m。
ヘリコプターで高度800mまで運ばれてそこから飛ばして160km/h手前まで速度が出ました。ただし着陸がうまく行かなくて損壊してしまいました。


フリート モデル2 バイプレーントレーナー(1928年・303機目)
アメリカ陸軍の練習機PT-3とアメリカ海軍の練習機NYを原型にした民間用の複座練習機です。1930~1940年代にかけて人気のある機体でした。


リパブリックRF-84Fサンダーフラッシュ(2日ぶり2機目・304機目)
戦闘爆撃機のF-84Fを写真偵察機に再設計したやつです。F-84は機首に大きい空気取り入れ口が1つあるんですが、RF-84Fでは機首にカメラを配置したので、空気取り入れ口をそれぞれの主翼前縁の根本に移設しています。
何度も書いてますが、そんだけ形を変えてるのに同一形式にするのは無理があるんじゃ・・・。

これの初飛行は1952年で、1970年前半まで現役でいました。機種の置き換え速度の早い当時としては意外と長生きでしたね。塗装的にベトナム戦争にも参戦していたんでしょう。
この機体は4つの飛行隊を渡り歩いてきていて、在日米軍の飛行隊に配属されていた時期もあったようです。こんなところに訪日歴のある機体がいるとはね。


ここのRF-84Fの見どころは、偵察カメラが内蔵されたまま展示されていることです。大抵の場合、偵察機のカメラは抜き取られて展示されているので、これは珍しいです。
まあレプリカの可能性もありますが、こういう展示はうれしいです。


機首の先端の他にもカメラが展示されています。RF-84Fは全部で8台のカメラが有りました。


ロッキードYO-3Aクワイエットスター(1969年・305機目)
アメリカ陸軍が使用した小型観測機です。これの初飛行の少し前の1967年に陸軍の固定翼機はほぼ全て空軍に召し上げられてしまったはずですが、これは例外だったんでしょう。
クワイエットスター・・・静かな星という意味ですが、名前通り静粛さがウリの飛行機です。ちなみに「◯◯スター」というのはロッキードお得意の命名規則で、スターには特に意味はないと思います。

グライダーにエンジンとプロペラを付けたような機体で、主翼はやたら幅の広いものになってます。上空400mの低空を飛行しても地上から機体の音が察知されないような飛行機という要求仕様に応えたものです。
エンジンの排気音を抑えるために排気管は胴体後部まで延びていて、その先には特殊な消音装置があります。さらにプロペラも低回転で回せたようですし、半分滑空しながら飛んでたと思われ。
音によるステルス航空機と言えましょうぞ。


YO-3Aの任務は砲撃の着弾観測もあったそうですが、主任務は夜間に飛行して北ベトナム軍の特殊訓練を受けたゲリラの動きを観測すること。そのために機首下部に取り付けられたのが赤外線探知機と暗視装置です。
これを使えば、夜間でもジャングル越しでも北ベトナム軍の動きを捉えられるのです。人間の熱を捉えるのは無理だったようなんで、車両などの排熱を頼りにしていたんでしょう。


透明な突起は何なのかよく分かりませんが、目標照射装置の可能性はあります。
結局試作機を表すYナンバーが取れないまま10機ちょっとしか作られなかったんですが、実戦投入されていたようです。試作機で実戦って、ガンダムみたいだね。

というところで今日はここまで。