もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

150215 衆参両院の「テロ非難決議」を非難する!「テロの本質」を真面目に語る政治家はいないのか!

 真面目に「テロの本質」を考えれば、その原因が、決して宗教の違いにあるのではなく、世界的に広がる富の偏在、極端な格差拡大、差別構造の継承、及びパレスチナ問題、それらによる<若者たちの絶望>にあることは、実は誰もがわかっていることだろう! それを「世界には凶悪なテロリストが大勢いて、こいつらを叩き潰せばテロが無くなる」なんて話に無理やりすり替えている。誰も、「テロの本質が、日本・世界の社会構造が抱える富の偏在・格差の拡大及びパレスチナ問題の<野放し状態>にこそある」という本質を語らないし、見させようとしない。そして、凶悪なテロリストへの恐怖ばかりを煽りたてている。これはまさにオーウェルの「一九八四年」の世界と同じだ。今回の国会の「テロ非難決議」に社民党・共産党まで加わっていたのには、あきれ果てた。「誰も本質を見ようとしない。」「武力で世界中の<絶望した若者たち>を封じ込めるべきではないし、不可能だ!」

秋原葉月さん「Afternoon Cafe」ブログから

※(1)「もちろん、普通の人間は戦争を望まない。しかし、国民を戦争に参加させるのは、つねに簡単なことだ。とても単純だ。国民には攻撃されつつあると言い、平和主義者を愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張する以外には、何もする必要がない。この方法はどんな国でも有効だ」byヘルマン・ゲーリング ※(2)いつの時代も大衆をファシズムに煽動する手口は同じ。なのに同じ手口に何度も騙されるのは過去に学んでいないから。格差を広げ、セイフティネットを破壊し、冷徹な自己責任論が横行する社会を継続させるのは簡単だ。今よりもっと格差を広げ、セイフティネットを破壊する政策をとればよい。そうすれば人々に自己責任論がもっと浸透し、草の根から勝手に右傾化してくれる。

辺見庸さんのブログから

・権力をあまりに人格的にとらえるのはどうかとおもう。口にするのもおぞましいドブの目をしたあの男を、ヒステリックに名指しでののしれば、反権力的そぶりになるとかんがえるのは、ドブの目をしたあの男とあまり変わらない、低い知性のあらわれである。権力の空間は、じつのところ、非人格的なのだ。だからてごわい。中心はドブの目をしたあの男=安倍晋三であるかにみえて、そうではない。ドブの目をしたあの男はひとつの(倒錯的な)社会心理学的な表象ではありえても、それを斃せば事態が革命的に変化するようなシロモノではない。権力には固定的な中心はなく、かくじつに「われわれ」をふくむ周縁があるだけだ。ドブの目をしたあの男は、陋劣な知性とふるまいで「われわれ」をいらだたせ、怒らせるとともに、「われわれ」をして社会心理学的に(かれを)蔑視せしめ、またそのことにより、「われわれ」が「われわれ」であることに無意識に満足もさせているのかもしれない。ところで、「われわれ」の内面には、濃淡の差こそあれ、ドブの目をしたあの男の貧寒とした影が棲んでいるのだ。戦争は、むろん、そう遠くない。そう切実にかんじられるかどうか。いざ戦争がはじまったら、反戦運動が愛国運動化する公算が大である。そう切実に予感できるかどうか。研ぎすまされた感性がいる。せむしの侏儒との「ふるいつきあい」がベンヤミンのなにかを決定した。そう直観できたアレントほどするどくはなくても、研ぎすまされた感性がいる。けふコビトがきた。ミスドにいった。(2015/11/11)

4 010 細川貂々「ツレがうつになりまして。」(幻冬舎;2006) 感想3

2014年10月12日 23時43分20秒 | 一日一冊読書開始
10月12日(日):

   127ページ  所要時間 1:15  ブックオフ105円

著者37歳(1969生まれ)。漫画家。

漫画である。風呂でふわーっとしながら読んだ。こんなのも読書にカウントしていいものか後ろめたいが、まあ活字に触れたということで…。気分が落ち込んでるときには、同じような状況にある多くの存在を知ることで思いつめてしまうのを抑えられる場合もある。

たいした本ではない。しかし、こころが不調の時の「常備薬」として本棚に入れておくと折に触れて手にしてパラパラ眺めるだけで、こころをそれなりに楽にしてくれる。「うつ病は、誰にでも起こる病気である。ストレスによって心身のバランス・コントロールが崩れた時に起こる。仕事に追われ、ストレスを溜めやすい日々のなかで、健康と精神安定を維持する意識を常に持つことが大切だ。

「気は長く 心は丸く 腹立てず 口慎めば 命長かれ」若い時、最も軽蔑した処世訓だが、うつ病を発症した場合のその後、長期にわたる治療と、完治が見込めず、生き方・人生観の根本的変更を強く求められることを思えば、ある程度、俗物の先人たちの処世訓も受け入れるべきなのだろう。大切な家族を守るためにも、自分を大切にしなければいけない。自分で自分を追いつめてはいけないのだ。

R 005F 帚木蓬生「インターセックス」(集英社文庫;2008) 印象4

2014年10月12日 00時03分47秒 | Review F読み(5秒)、T読み(10秒)
10月11日(土)

610ページ  所要時間 1:05  編集時間 0:25 ブックオフ108円

著者61歳(1947生まれ)。精神科医。

裏書:「「神の手」と評判の若き院長、岸川に請われてサンビーチ病院に転勤した秋野翔子。そこでは性同一障害者への性転換手術や、性染色体の異常で性器が男でも女でもない、<インターセックス>と呼ばれる人たちへの治療が行われていた。「人は男女である前に人間だ」と主張し、患者のために奔走する翔子。やがて彼女は岸川の周辺に奇妙な変死が続くことに気づき…。命の尊厳を問う、医学サスペンス。 」

ブックオフで異例に安かったので買ったが、持てあましていた本である。ダメ元でF読み(12ページ/分)を試してみた。筋は分からないが、どのようなことが問題になっているのかは、おぼろげに感じられた。ひたすら最後までページを繰り、目を這わせた。最終盤になって決定的場面が何処で、種明かしの章で何が語られているのかは、わかった。

F読みの割には、達成感のある読みごたえが残った。ブログ読者に少しだけサービス、秋野翔子の染色体は46XYです。(560ページ)



4 009 斎藤孝「絶対感動本50」(マガジンハウス;2003)感想3+

2014年10月11日 20時29分20秒 | 一日一冊読書開始
10月11日(土):

302ページ  所用時間 3:40    図書館

著者43歳(1960生まれ)。

膨大な著作を出している多作の人である。しかし、著者の作品で今までにすごく感動、感心したという記憶が俺にはない。むしろ、社会に適応する(阿る)能力の高い世渡り上手で、うす味な気がするのだ。悪気はないし、善良ではあるが要領がいいだけで魅力に乏しい作家という感じである。

それでも多くの本を書き続けらることに凄みと敬意を感じるべきだと言われれば、別に争う気はないが、俺は評価する気はない、と答えるのみだ。

本書も、基礎体温は低い印象である。絶対に外れない確実な本と、ひねりを衒った、あまり知られていない本を半々の塩梅で手堅く選定している。「売らんかな」の市場調査優先で選定した著作という感じである。

とはいえ、手堅い内容にはなっている。器用な人なのだ。既読の作品もあったが、名前だけ知っていた作品の概要がわかったり、それなりに参考になった。ノンフィクションの賞味期限切れが目立った。11年の歳月に耐えるのは、やはり古典的作品群だ。当時のはやりを取り上げた作品はいまいちだった。

目次 : *気になった作品を赤字にします。
自伝・エッセイ紫の履歴書(美輪明宏)/ チャップリン自伝(チャールズ・チャップリン)/ 若き数学者のアメリカ(藤原正彦)/ 生きて行く私(宇野千代)/ 父・こんなこと(幸田文)/ 自分の中に毒を持て あなたは“常識人間”を捨てられるか(岡本太郎)/ 色を奏でる(志村ふくみ・文 / 井上隆雄・写真)
ノンフィクション :神の肉体 清水宏保(吉井妙子)/ もの食う人びと(辺見庸)/ 聖の青春(大崎善生)/ ヨハン・クライフ スペクタルがフットボールを変える(ミゲルアンヘル・サントス)/ 素晴らしきラジオ体操(高橋秀実)/ 嬉遊曲、鳴りやまず 斎藤秀雄の生涯(中丸美繪)/ 印度放浪(藤原新也)/ パリ左岸のピアノ工房(T・E・カーハート)
身体・心理・哲学 :胎児の世界 人類の生命記憶(三木成夫) /野口体操 からだに貞く(野口三千三)/ ことばが劈かれるとき(竹内敏晴)/ 「いき」の構造(九鬼周造)/ 開かれた小さな扉 ある自閉症児をめぐる愛の記録(バージニア・M・アクスライン)/ ツァラトゥストラ(ニーチェ)/ ゲーテとの対話(エッカーマン)
歴史世に棲む日日(司馬遼太郎)/ 氷川清話 付勝海舟伝(勝海舟 勝部真長編)/ ある明治人の記録 会津人柴五郎の遺書(石光真人編著)/ 夜と霧 ドイツ強制収容所の体験記録(V・E・フランクル)/ 望郷と海(石原吉郎)/ 腕白小僧がいた(土門拳)
神話の世界ギルガメシュ王ものがたり(ルドミラ・ゼーマン/文・絵)/ リトル・トリー(フォレスト・カーター)/ 神話の力(ジョーゼフ・キャンベル/ビル・モイヤーズ)/ 風の博物誌(ライアル・ワトソン)
絵本・漫画: クレーの絵本(パウル・クレー・絵/谷川俊太郎・詩)/ 高野文子作品集 絶対安全剃刀(高野文子)/ まんだら屋の良太(畑中純)
文学・小説ほか: 中国行きのスロウ・ボート(村上春樹)/ 爆発道祖神(町田康)/ 風と光と二十の私と/夜長姫と耳男 【坂口安吾全集】(坂口安吾)/ 両手いっぱいの言葉 413のアフォリズム(寺山修司)/ 謎とき『罪と罰』(江川卓)/ 古典落語 志ん生集(古今亭志ん生 飯島友治編)/ ライ麦畑でつかまえて(J・D・サリンジャー)/ トレインスポッティング(アーヴィン・ウェルシュ)/ 悪童日記(アゴタ・クリストフ) /停電の夜に(ジュンパ・ラヒリ)/ 欲望という名の電車(テネシー・ウィリアムズ)/ 微笑を誘う愛の物語(ミラン・クンデラ)/ 百年の孤独(G・ガルシア=マルケス)/O・ヘンリ短編集(O・ヘンリ)/ 小説作法(スティーヴン・キング)
あとがき

*スティーヴン・キングの「小説作法」解説がよかった。

141010 28万超え:マララさん受賞でノーベル平和賞の無責任なご都合主義ばれる!

2014年10月11日 20時08分32秒 | 閲覧数 記録
10月10日(金):記録ですm(_ _)m。ブログの開設から1098日。

アクセス:閲覧 389 PV/訪問者 74 IP

トータル:閲覧 280,168 PV/訪問者 109,950 IP

ランキング:日別 14,099 位/ 2,072,754ブログ中 /週別 16,058 位

※17歳のまだ何事もやり遂げてないないマララさんにノーベル平和賞を与えるのは、キリスト教世界のご都合主義を優先して、イスラム教世界の女性の教育に対する本当の理解を得る努力を放棄した頭ごなしの自分勝手な姿勢の表れだ。

これでマララさんは、イスラム原理主義勢力による<キリスト教世界への異議申し立てのシンボル>として一生、いのちを狙われ続ける重い過ぎる運命を背負わされたことになる。17歳の少女に重過ぎる十字架?を背負わせたノルウェー・ノーベル平和賞は結局欧米キリスト教世界に都合よく使われる道具に過ぎないのであって、決してイスラムその他の文明との共存・尊重を目指したものではない。今回の件は、後先を考えない無責任さを世界にさらす平和賞の自殺行為だった。

本当に世界平和に役立てるのであれば、東アジアの最大の不安定要素化しつつある日本の極右安倍自民党政権やそれにすり寄るポピュリスト橋下徹維新や民主党右派(似非自民)に痛打をあびせ、日本国内のリベラル平和希求勢力に力を与えるため、「憲法九条」にこそノーベル平和賞を与えるべきだっただろう。既に69年間の平和維持を実現しているのだから、なおさらだ。

4 008 岸本葉子「四十でがんになってから」(文春文庫;2006) 感想3

2014年10月11日 00時41分52秒 | 一日一冊読書開始
10月10日(金):

242ページ  所要時間 2:05    ブックオフ105円

著者45歳(1960生まれ)。エッセイスト。

2001年、40歳で虫垂がんを告知され、女ひとりのんびりゆったり頑張ってきた生活に大きな転機が訪れる。「この先、一体どうなるのか…」5年生存率50%未満と言われ、再発・転移に怯えながら、手探りで不安と背中合わせの日々を送る。

一方で、少しでも前向きな生き方を手探りで求めながら、2年目、3年目が過ぎて、4年目に突入するが、まだ5年目は超えていない。「がんというのは、つきつめれば老化現象である。5年過ぎたら、不安が無くなるとは考えていないが、がんへの懸念も日々の生活の一部になるのだ。

毎日を大切に前向きに生きながら、一方で自身の命の終わりも常に意識し、死を抱え込んで死と共に生きていくのだ。

R 004F 佐藤優「野蛮人の図書室」(講談社:2011) 印象4

2014年10月10日 00時14分58秒 | Review F読み(5秒)、T読み(10秒)
10月9日(木):

297ページ  F読時間0:40  編集時間0:20  図書館

著者51歳(1960生まれ)。元ノンキャリア外交官で、知の巨人である。

F読みでは、さっぱりわからない。T読みでもきっと同じだ。しかし、今日も、本を開くことができた。ブックオフで200円だったら買う。それ以上はムリ。

目次:第一章:人生を豊かにする書棚/第二章:日本という国がわかる書棚/第三章:世界情勢がわかる書棚/第四章:頭脳を鍛える書棚

以下、アマゾンブックレビューから:
・本書は読書好きの方のみならず「野蛮人 = 今まであまり本を読んだことがない人」への道案内だそうです。
「週刊プレイボーイ」の連載(08/10〜10/03まで)を再構成、加除修正を加えたものです。
 第1章 人生を豊かにする書棚
 第2章 日本という国がわかる書棚
 第3章 世界情勢がわかる書棚
で250P、全57回で1回につき2冊が紹介されます。2冊は大体類似したテーマのものや掘り下げるものに
なっています。週刊連載で一回あたりのページ数は4〜5Pの割とあっさりしたボリュームです。
 第4章 「頭脳を鍛える談話室」は40P、前の章で紹介された本の4人の著者との対談になっています。
「テンペスト」池上永一氏、「出星前夜」飯嶋和一氏、「資本主義はなぜ自壊したのか」中谷巌氏、
「ウェルカム トゥ パールハーバー」西木正明氏です。
以前に読んだ「功利主義者の読書術」に比べると1冊の紹介に割いているページ数がかなり少ないので、
最初物足りない印象を受けました。ただ毎回のはじめに、選ばれる2冊がそれぞれ5行程度100文字前後
の短文で概要説明されているのですが、これをよく読むとこの時点で本文の解説への関心が沸きまくる、
とても上手な面白い説明です。このページ数なので「佐藤氏が味わいつくす書評」というよりも
「テーマ別の佐藤氏のナビゲート、ブックガイド」という性格のものだと感じます



R 003T 有田正光・石村多門「ウンコに学べ!」(ちくま新書;2001) 印象5 

2014年10月09日 00時42分31秒 | Review F読み(5秒)、T読み(10秒)
10月8日(水):

165ページ T読時間 0:40  編集時間 0:30   ブックオフ50円

T読(10秒読み)は、F読(5秒読み)よりも理解が深まるかと言うと、全くそんなことはない。頭に入らない、わからないという点では同じである。時間が長い分、ストレスが溜まる。

さて、本書の内容である。ページを眺めていくうちに、ウンコについて徹底して熱く語り続ける潔さに清々しさを覚えてしまった。本書は、東京電機大学理工学部の教授(理系)と助教授(文系)による文理融合のコラボ本である。

有田正光51歳(1950生まれ)環境工学科教授。
石村多門44歳(1957生まれ)環境倫理学助教授。

眺めているうちに、「類いまれな“面白本”かもしれない。その雰囲気は十分にある」と確信するようになった。そもそも本書は、ブックオフで見つけた時、何かの番組で強く推薦されていたのを覚えていて即購入したものである。

・環境問題がさかんに叫ばれている。だが近代人は、ウンコからは遠ざかろうとしてきたのではなかろうか。そして目をそむけ、鼻をつまむように、語ることが忌避されている。しかし、それは身近なものであるがゆえ、やはりその行方が気になる。本書では、誰もが正面から見据えようとしないウンコを通して、現代科学から倫理までを語る。ヒステリックなエコロジーの書ではなく、抱腹絶倒なのに役に立つ、おもしろ科学読本。

目次:
第1章 あなたのウンコはどこへ行くのか:1海に捨てられるウンコ/2カウボーイも英国紳士も海まで運ばず川に捨てた/3下水処理の手品の真相
第2章 水田―土と水とウンコのバラード:1ペリーが驚いた世界一清潔な国/2生きるとはウンコを食べることである
第3章 ウンコの黄金時代と糞まみれの経済:1日本のウンコの大河ドラマ/2ウンコ処理と財政問題
第4章 ウンコをしない自立とする連帯:1エコノミーからエコロジーへ/2陰翳礼賛/3ウンコをひらない身体/4学校でウンコができない子どもたち
第5章 ウンコに学ぶ環境倫理:1みんなのおかげでウンコができる/2ウンコとは死ぬことと見つけたり/3ウンコに親しむ環境教育

R 002F かめおかゆみこ「演劇やろうよ! 指導者編」(青弓社;2011) 印象3+

2014年10月07日 22時30分54秒 | Review F読み(5秒)、T読み(10秒)
10月7日(火):

248ページ F読時間 0:25  編集時間 0:35   図書館

著者 年齢不詳。中学校演劇部の外部指導員を経て、あらゆる層の人を対象に、演劇指導、表現とコミュニケーションのワークショップ、講演のために全国各地をかけめぐっている。

あまり縁のない世界だからこそ、図書館で手にとった。奇抜さはないが、演劇指導者の経験を織り交ぜた真っ当な本だとお見受けしました。「かめわざ語録」の解説が、反語・逆説的なものも含めて面白そうだった。

・表紙:「演劇のなかには、人生のすべてがある!/小学校・中学校の教員や指導的立場の人にとっての演劇指導の魅力、/演劇教育が人間性や人間関係を育てるための有効なツールであり、/人間性育成のためにはどのような姿勢で取り組めばいいのか、/を実践経験をとおして熱く語る。」

・演劇とは「心をあつかう活動」だ。演劇を通して子どもたちの人間性の育成に立ち会う演劇指導者はどのような姿勢で取り組むべきか、さらに、演劇的指導力の魅力は何なのかを、豊富な演劇指導経験をもとにドラマチックに語る、演劇指導者のための指南書。

目次:
まえがき――自分で考え、自分で決めて、自分で選ぶ体験
第1章 本気で生きる大人として――中学校演劇部指導員の記録から
第2章 表現すること、生きること――お米づくりを劇に(小学五年生)
第3章 自分の痛みと向き合って――即興による劇づくりの体験
第4章 自己解放・自己表現の場として――指導者の視点
 1 真実だけを見つめて/2 声とからだは連動しています/3 「力を抜く」ということ/4 「イエス・アンド」――否定しないということ/5 本気で伝える/6 信頼と尊敬でつながる関係/7 本当にやりたいこと/8 「かっこいい!」/9 覚悟するということ/10 その先の可能性を見る
第5章 レッツ! 「かめわざ語録」
「間違っていいんだよ」/「全部正解、全部OK!」/「やりたくないことはやらない」/「いま、何を感じているの?」/「相手を感じて!」/「役になりきっちゃだめ」/「エスパーにならないように!」/「同じことは二度起こらない」/「かぼちゃに劇を見せたいの?」/「すべては影響しあっている」/「好奇心をもって!」/「感じなかったら反応しない」/「お客さんをなめるんじゃない!」/「本番はあなたたちのものだよ」/「なんとかなる!」/「大切なのは自分で選ぶこと」/「マンネリ化したら交代してみる」/「アドリブ禁止」/「センターをとれ!」/「脚本を疑え」
あとがき

R 002F のRは「Review(紹介)」の意。002は、「2冊目」の意。Fは「1ページ5秒(five)」読みの意。Tならば「1ページ10秒(ten)」読みである。

R 001F 田中優子「カムイ伝講義」(小学館;2008) 印象5 

2014年10月06日 23時54分05秒 | Review F読み(5秒)、T読み(10秒)
10月6日(月):

339ページ  所要時間0:30  アマゾン582円

著者56歳(1952生まれ)。法政大学社会学部教授。

有名な白土三平「カムイ伝」を使って、江戸時代の社会のあり方を民俗学的に分析。
「カムイ伝のむこうに広がる江戸時代から「いま」を読む」
大学の授業であれば、面白いだろう? いや、かえってつまらないか! こうして著作として自分のペースで楽しむのが一番!

目次:
第1章 『カムイ伝』の空間と時間/第2章 夙谷の住人たち/第3章 綿花を育てる人々/第4章 肥やす、そして循環する/第5章 蚕やしない/第6章 一揆の歴史と伝統/第7章 海に生きる人々/第8章 山に生きる人々/第9章 『カムイ伝』の子どもたち/第10章 『カムイ伝』の女たち/第11章 『カムイ伝』が描く命/第12章 武士とは何か


※<読書論>:R 001F のRは「Review(紹介)」の意。001は、「1冊目」の意。Fは「1ページ5秒(five)」の意。Tならば「1ページ10秒(ten)」である。


最近、読書ペースが急速に落ちている。それに伴い、読みたい本は、膨大に有るのに「最後まで読む」を意識すると手が出ない。

対応策として、手元にある読みたい本を、「読めない」までも、短時間で眺め通して、自分自身の読書傾向を再発見し、読書への意欲を高めるとともに、このブログ読者へのサービス向上の意味も込めて、私の関心を引いている書籍のレビュー(紹介)を試みていきたい。と、ふと思い立ったのだ。

この試みが、軌道に乗るかは不明だが、1ページ5秒ならば、1時間に720ページ。1ページ10秒でも、1時間360ページである。疲れて読めない日でも、これだけならば1時間はかからない。

コンセプトは、読書方法の多様化による読書ブログの継続・充実と自己再発見である。




4 007 堤未果「はじめての留学 不安はすべて乗り越えられる!」(PHP;2009/1994)感想3+

2014年10月06日 22時13分42秒 | 一日一冊読書開始
10月6日(月):

196ページ  所要時間 3:20   図書館

著者38歳・23歳(1971生まれ)。

著者の処女作「空飛ぶチキン―私のポジティブ留学宣言」(創元社出版;1994)を新たに編集し、改題したもの。そのせいか、はじめに登場したハウスメイトの詳細なエピソードが一番後ろに出てきて、筋立てが混乱したりした。

要するに、1990年、著者が19歳の時、カリフォルニア州モントレーのカレッジに留学した2年間を回顧した作品である。(その後、ニューヨーク州立大学に編入学する。)

ひと月の仕送り1000ドル(10万円)は、部屋代280ドルと金食い虫の通学用自動車セリカの維持費を入れるとかなり際どいライン。

ホームステイのホストファミリー、そこを出てシェアハウスのハウスメイトらとの交流、カレッジでの変な先生やパスペーパーに汚染されたロバのような日本人留学生集団からの脱出、さまざまな失敗や騒動が軽快に描かれている。

あまり深みは無いが、著者の体当たりの留学ぶりが描かれている。運・不運など留学には関係無い。うまくいかないのは当たり前。道を切り拓くのだ。うまくいくように日本人で仲間を作ったりすれば、留学した意味が薄れるというものだ。

当時の著者の23歳という年齢を考えれば、すでに相当の文章力をもつ能筆家だったと言えるが、それ以上に社会の矛盾に鋭く斬り込むセンスの片鱗も少し感じられるのがよい。

4 006 沖田×華「毎日やらかしてます。」(ぶんか社;2012) 感想 3

2014年10月06日 00時22分20秒 | 一日一冊読書開始
10月5日(日): 副題「アスペルガーで、漫画家で」

131ページ  所要時間 1:50   図書館

著者33歳(1979生まれ)。小学4年生で学習障害(LD)と注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の診断を受ける。成人後、高機能自閉症(アスペルガー障害、AS)と知る。看護師、風俗嬢を経て、2008年に漫画家デビュー。

風呂でマッタリしながら読んだ。

自閉症スペクトラムのマンガ家による自分自身の生い立ちと日常の失敗談を題材にした漫画作品。とり立てて悪くはないが、それほど勉強になるでもなく、よくもない。それ以上でも以下でもないって感じである。

本書を読む限りでは、自立する自閉症スペクトラムの人の生活は単に他人とのコミュニケーションの困難だけではなく、交通事故率の高さ、台所の火の元のうっかりミスなど「毎日やらかしてます」ではちょっとすまされない、かなり危険を引き起こす面がある。補助者が必要なのかもしれない。

本書は当事者によるアスペルガーの日常の面白い紹介だが、一方で偏見や危険視を惹き起こす可能性があるのを見逃せない気がする。

こういう本も読書の内に入れて、自分を甘やかさないと読書習慣を続けることができない。「できる限り、自分に甘くする。」その代わりに「長く継続する」ことが大事だ。

以下、ウィキペディアより:

中華料理店を営む両親の元に生まれる[1][2]。 幼少期に学習障害、注意欠陥多動性障害、アスペルガー障害と診断され、他者とうまくコミュニケーションがとれない日々を送る[1]。学校ではいじめや体罰を受け、高校卒業後北陸地方で看護師となった際も同僚との人間関係に苦しんだという[1]。沖田は成人後、自身の障害に気付くことになる[1]。

看護師の仕事は上手くいかず、両親が離婚したショックが重なったことで自殺を図ったこともあったという沖田は3年で看護師をやめ、風俗嬢となった[1]。ソープランド以外のあらゆる風俗店で働き[3]、アダルトビデオへの出演も経験したという[1]。沖田曰く風俗嬢などの仕事をしたのは、厳格な父親の下で抑圧された感情を抱きながら育った反動から、一人暮らしを始めた時に「やりたいことを全部やろう」と決め、「一生懸命働いてお金をためる」目標のためにとった行動であった[1]。沖田はこのような経歴や、10回を超える整形手術の経験をオープンにしている[1]。

風俗嬢となって2年ほどが経過し仕事に疲れを感じていた沖田は、後の師である漫画家桜井トシフミに出会い、絵が個性的だと褒められたのがきっかけで漫画家を志すようになる[1]。しかし、当時は首から下の絵が一切描けなかったため、最初は「現役風俗嬢ライター」として売り込むも門前払いを受ける。桜井の紹介でエロ雑誌の連載を細々していた時、以前からファンだったゲッツ板谷の個人サイト『コーポG』(現在閉鎖中)にメールを送ったことをきっかけに、『コーポG』内でエッセイコミック『CR幸せになり隊』を連載。この時に板谷が「沖田×華」と命名する(由来はゲッツ板谷がペンネームを考えるのが面倒くさくて、寝起き(起きたばっか)に浮かんだもの)。同年、『漫画アクション』(双葉社)の新人賞に応募し選外奨励賞を獲る。

上京後の2005年に漫画家としてデビュー[1]。作品の中には自身が抱える障害を題材とした作品もあり[1][4](『毎日やらかしてます。』[4])、アスペルガー障害を抱える読者からの反響や、障害について理解できたという内容の感想が寄せられたという[1]。

「毎日やらかしてます。アスペルガーで、漫画家で」は発売当初(2012年6月10日調べ)Amazon.co.jp 書籍ランキング ノンフィクション部門売上げ1位を記録した。


4 005 富坂聰「中国の破壊力と日本人の覚悟」(朝日新書;2013/4)感想5

2014年10月05日 17時48分52秒 | 一日一冊読書開始
10月5日(日): 副題「なぜ怖いのか、どう立ち向かうか」

214ページ   所要時間 1:30    図書館

「縁結び読書」のつもりで、最初1ページ5秒ペースで最後まで眺め通してから、再度1ページ15秒ペースで目を通した。付箋もした。

著者49歳(1964生まれ)。

著者は、テレビ・新聞でもよく見かける現代中国の第一人者の一人である。中国に対する一面的な見方を戒め、多面的な見方の必要性を分かり易く解説してくれる好著である。

中国に対する是々非々の立場を貫きながら、一方で日本人が見落としがちな中国の権力構造や生存競争の厳しさ、国家のスケール・メリット&デメリットに気付かせ、そこから柔軟な視点や理解に導いてくれる。

【目次】はじめに 顔が見えない国
第1章 中国軍はどれだけ怖いか:火器管制レーダー照射問題の発端/解放軍を把握できていない外交部/超大国に対抗するための「竹のカーテン」/戦略的な嘘/周辺国が中国に抱く懸念三つ/繰り返し持ち出される日中間の歴史問題/国防費をめぐる問題/軍事力は数字で判断できない/空母就航までの遠い道のり/空母の性能の問題/中国の空母で費用対効果は得られるのか/軍事に関する本当の問題
第2章 “殺到”が破壊力を生み出す:緊迫した日中関係/漁船衝突事件の本当の被害者/韓国が受けた被害/中国の漁民は何故凶暴なのか/鉄鋼業界の「デフレの輸出」の弊害/“殺到”で崩れる需給のバランス/中国特有の競争原理/なぜ中国の企業は生産過剰に陥るのか
第3章 中国はなぜかくも「残酷」なのか:中国から見れば日本は残虐/中国の「極刑史」/人口圧力が生んだ残虐性/「冷漠社会」の実体/「一人っ子政策」が引き起こした事件/人命軽視①子供の誘拐問題/人命軽視②高速鉄道の衝突脱線事故/中央と地方の温度差/「保身」が「人権」をつぶす/“野味の”犠牲になる動物たち/中国=残酷ではない
第4章 環境汚染と危険食品「負の連鎖」:PM2・5にまつわる中国環境事情/PM2・5に対する政府の反応/中国の環境対策/政治と企業の癒着が環境問題を生む/汚染された大気の元とは?/中国の食品問題が起こった経緯/大企業が儲けるために起こした事件/正義が抹殺される中国社会/農村での衝撃的な光景/死よりも恐ろしい貧困/恵まれている人までも犯罪を起こす理由
第5章 「何をするか分からない国」の核心:たくましいが危険な中国人/負の側面から見た中国の怖さ/たくましいが危険な中国人/負の側面から観た中国の怖さ/外交テクニック/中国の対日戦略の変遷/外面的に攻めてくる外交力/冷静な目で中国の分析を/日本に対する中国の本音/中国の弱み
おわりに 日本のとるべき選択肢

日中関係において勇ましい発言をすることは簡単です。しかし、その発言の先に発生する責任を負うことは簡単ではありません。下手をすれば大きな裏切り行為にもなります。/2012年の尖閣諸島の国有化で、最初に口火を切った石原慎太郎東京都知事は「尖閣を東京が守る」と大々的に宣言してみせましたが、本当に守ることができたでしょうか。略。日本側が騒ぎを起こし挑発したことにより逆に相手に付け入る隙を与えてしまい、問題が起きる前より大幅に中国に押し込まれるという失態を演じてしまったのではないでしょうか。201ページ

・黄土高原に生まれた王朝が中原の覇者となり中華を称し、略、現在の中国に至るまでに大きくその版図を拡大したのは、自分たちが侵略したためではなく、逆に侵略されたことによるものなのです。略、周辺の民族に侵略され、その王朝が閉じたときには、それまで中華の外にあった民族が取り込まれてしまうという経過をたどってきたのです。/だから、豊臣秀吉の朝鮮出兵も、失敗してよかったと胸を撫で下ろす歴史学者がいるほどです。同じように日中戦争で日本が勝利していたとしたら、しばらくは日本による統治ができたかもしれませんが、時代が変わったときには、日本は確実に中国の「日本省」になっていたはずなのです。敗戦もこう考えれば悪いことばかりではないようにも思えます。213ページ   *異論が無いわけではないが、斬新で面白い考え方だ。

141003 昨夜の記事、私の読み違えでした。朝日新聞さんごめんなさい。m(_ _)m…。

2014年10月03日 20時14分25秒 | 日記
10月3日(金):

昨夜載せた「141002 朝日よ大丈夫か?オピニオン欄の「北朝鮮籍」表記は、在日への偏見・差別を拡大する深刻な過誤だ!」の記事は、どうも私の読み違いでした。在特会の馬鹿どもに関する記事の中で、「北朝鮮」という文言が私の頭の中で、「「朝鮮籍」と「北朝鮮籍」の読み違い」と自動的に変換してしまいました。お詫びして削除いたします。m(_ _)m…。

4 004 内田樹「憲法の「空語」を充たすために」(かもがわ出版;2014/8/15)感想5

2014年10月01日 00時24分09秒 | 一日一冊読書開始
9月30日(火):

95ページ   所要時間 3:00    図書館

著者64歳(1950生まれ)。

短くても、「さすが!」と唸らせてくれる内容だ。先日読んだ白井聡「永続敗戦論」も踏まえて、十二分に噛んでふくめて読ませてくれる平和ボケ安倍自民党「従米・売国奴」政権論である。

読んで面白いと思ったところに付箋をしてハリネズミのようになった本書を前にして、底の抜けたバケツのような俺の頭がほとんど内容を忘れているのが悔しい。

短いけど、読み甲斐のあるテキスト! 超お勧め本である。内田先生が今の日本について考えてることと、俺が考えてることはほとんど同じだ。ただ俺はうまく言葉にならないが、内田先生は分かりやすい言葉を与えてくれるので、何か便秘がなおって気持ちのよいお通じが出た感じである。とりわけ、今回は2014年5月3日の憲法記念日の講演録の加筆なので要を得て簡で分かりやすい。

日本国憲法の弱点は「百点満点の答案を書いたのが受験生自身ではなかった」ということである。しかし、69年間、その憲法を守り、有効活用して戦争により、一人の外国人も殺さず、一人の国民も外国の軍隊に寄り殺されていないことの重みと価値は称賛に値する。ノーベル平和賞に値する。それを受けるのは日本国民である。

自民党憲法案は、グロテスクの極み。「立憲主義というのは国民が憲法制定の主体であるという法擬制のことですが、この自民党改革案の制定主体は日本国民ではありません。というのは、国民はこの憲法の尊重擁護義務を憲法で命じられているからです。43ページ」。現行憲法で憲法尊重義務を命じられているのは公務員だけである。「彼ら(自民党)はただ前の選挙で相対的な過半数を得ただけです。総選挙での絶対得票率が15.4%しかない政党が、革命や独立戦争の遂行主体しか自らに賦与しえない「超憲法的主体」の座を要求するのは、やはりグロテスクという他ない。47ページ」

本書では、与党の安倍政権が、国会を軽視して、特定秘密保護法案成立や集団的自衛権容認の解釈改憲を目指して、北朝鮮にも負けない<独裁政権化>を突き進んでいるを指摘する。しかしそのことよりも、むしろその独裁政権化する政府を有権者の多くがいまだに支持している(批判能力を失っている)ことをこそ深刻な問題として取り上げる。そして、その原因を日本社会が「株式会社のサラリーマン」のものの見方を深く内面化してしまったせいだ、と考える。

株式会社の「有限責任」感覚で、国民国家の「無限責任」をすり替えてしまう論法は大阪市長の橋下徹が民主主義を骨抜きにするためによく使ってきたやり方だ。橋下のエピゴーネンの安倍は、不満があれば「次の選挙で私を落とせばよい」というまったく児戯に等しい見当外れの言葉を吐き散らす。しかし、株式会社は、潰れたらそれでしまいだが、政府や政治家の失敗は取り返しがつかない。今回の原発事故然り、戦争をしてしまえばやはり取り返しのつかない「無限責任」を問われる。橋下や安倍の言葉は、それだけで彼らに政治家の資質の重大な欠如を示すものだ。

橋下や安倍だけでなく、日本の?グローバル企業の悪質さ、保守を旗印にしながら、国を守らず、伝統をどぶに捨てる自民党の実体について、自民党の改憲草案「第二十二条の一項、二項」を取り上げて説明する。これを読むと、本人たちにきちんと自覚されているかは別にして、自民党の本質が、グローバル経済推進を掲げる保守のふりをした、実は「売国奴」集団であることがよくわかるのである。

目次:
1.「日本国民」とは何か: 神戸憲法集会について/公務員には憲法尊重擁護義務がある/敗戦国の中での日本の特異性/日本国憲法のもっていた本質的な脆弱性/憲法九条にはノーベル平和賞の資格十分/憲法の主語はそれにふさわしい重みを獲得していない
 2.法治国家から人治国家へ:法治から人治への変質/株式会社的マインドが日本人の基本マインドに/メディアが方向づけした「ねじれ国会」の愚論/国家の統治者が株式会社の論理で政治を行うことのいかがわしさ/「日本のシンガポール化」趨勢
 3.グローバル化と国民国家の解体過程:自民党改憲草案二十二条が意味すること/グローバル資本主義にとって障害となった国民国家/「日本の企業」だと名乗るグローバル企業の言い分

・本来であれば、ナショナリズムは「グローバル資本主義打倒」というスローガンを掲げるはずなのです。略。/でも、日本のナショナリストたち、安倍晋三や橋下徹や石原慎太郎がその典型ですけれど、彼らは伝統を保守することには何の関心もありません。国語を豊かにすることにも、伝統文化を受け継ぐことにも、伝統的な生活習慣を守ることにも何の関心もない。関心もないどころか積極的にそういうものを破壊しようとしてさえいます。彼らが最優先に語るのは「金の話」です。次が「軍事の話」です。金が無いから不幸になる、軍事力が無いから侮られる。だからあらゆる手立てを尽くして金を稼ぎ、軍事力を強めて隣国を威圧すべきだ、極言すれば彼らが語っていることは「それだけ」です。そのような目的のためであれば、たしかに自由貿易のためにすべての障壁を破壊し、生産性の低い産業セクターを潰し、採算の合わない事業は淘汰に委ねるという選択は合理的なのでしょう。/でも、そういったふるまいのどこが「ナショナリスティック」なのか、僕にはよく分からないのです。たしかに隣国から警戒され、嫌われるという点で言うと「ナショナリズムの負の効果」は発揮しているようですけれど、自国の人々を一つの広々としたヴィジョンのうちにとりまとめ、老若男女が、年齢も立場も超えて、相互に支援し合い扶助し合う共生の仕組みを作るという「ナショナリズムの正の側面」については何の達成もしてない。ゼロ以下です。/ですから、今の世界でグローバル化の進行とナショナリズムの強化が「同時的に起きている」という言い方はおそらく不正確なのだろうと思います。グローバル化は起きているが、ナショナリズムは実は生まれていない。われわれが今見ているのは「ナショナリズムのようなもの」です。ナショナリズムの排外主義的傾向、強権的体質、非寛容、暴力性「だけ」を抽出した畸形的なイデオロギーです。それがグローバル資本主義の補完物として活発に機能している、そういう表現のほうがむしろ適切だろうと思います。91~92ページ

・そうやって見ると、今の日本で起きている政治的現象も、グローバル資本主義の爛熟期に固有の「うたかた」のようなものだということがご理解頂けただろうと思います。いずれ安倍政権はが開始、その政治的企ての犯罪性と愚かしさについて日本国民が恥辱の感覚とともに回想する日が必ず来るだろうと僕は確信しています。でも、彼らが主役の舞台の幕が下りるまでに安倍晋三とその盟友たちがどれほどのものを破壊することになるのか、それを想像すると気鬱になります。僕たちにとりあえずできることは、彼らの破壊の手から「それだけには手を触れさせてはならないもの」を守り抜くことです。そのために全力を尽くすこと、それが僕たちの当面の任務であろうと思います。95ページ

150329 タガ外せば歯止め失う 長谷部恭男・早稲田大学教授/「未来志向」は現実逃避 杉田敦・法政大学教授

 杉田 先日ドイツのメルケル首相が来日しました。戦後ドイツも様々な問題を抱えていますが、過去への反省と謝罪という「建前」を大切にし続けることで、国際的に発言力を強めてきた経緯がある。「建前」がソフトパワーにつながることを安倍さんたちは理解しているのでしょうか。  / /長谷部 そもそも談話が扱っているのは、学問的な歴史の問題ではなく、人々の情念が絡まる記憶の問題です。記念碑や記念館、映画に結実するもので、証拠の有無や正確性をいくら詰めても、決着はつかない。厳密な歴史のレベルで、仮に日本側が中国や韓国の主張に反証できたとしても、問題はむしろこじれる。相手を論破して済む話ではないから、お互いがなんとか折り合いのつく範囲内に収めようと政治的な判断をした。それが河野談話です。  / /杉田 談話の方向性や近隣との外交について「未来志向」という言い方がよくされますが、意図はどうあれ、それが過去の軽視という「見かけ」をもってしまえば、負の効果は計り知れない。安倍さんたちは、未来を向いて過去を振り払えば、政治的な自由度が高まると思っているのかもしれません。しかし政治の存在意義は様々な制約を踏まえつつ、何とか解を見いだしていくところにあります。政治的な閉塞(へいそく)感が強まる中で、自らに課せられているタガを外そうという動きが出てくる。しかし、それで万事うまくいくというのは、一種の現実逃避では。  / /長谷部 合理的な自己拘束という概念が吹っ飛んでしまっている印象です。縛られることによってより力を発揮できることがある。俳句は5・7・5と型が決まっているからこそ発想力が鍛えられる。しかし安倍さんたちは選挙に勝った自分たちは何にも縛られない、「建前」も法律も憲法解釈もすべて操作できると考えているようです。  / /杉田 俳句は好きな字数でよめばいいのだと。  / /長谷部 あらゆるタガをはずせば、短期的には楽になるかもしれません。しかし、次に政権が交代したとき、自分たちが時の政府を踏みとどまらせる歯止めもなくなる。外国の要求を、憲法の拘束があるからと断ることもできない。最後の最後、ここぞという時のよりどころが失われてしまう。その怖さを、安倍さんたちは自覚すべきです。 =敬称略(構成・高橋純子)朝日新聞『考論』

0015 オルテガ「大衆の反逆 (桑名一博訳;久野収解説)」(白水社イデー選書;1930)評価5

以下は、オルテガ所論の久野収による抜粋の抜粋である:///  オルテガによれば、政治のなかで「共存」への意志を最強力に表明し、実行していく政治スタイルこそ、自由主義的デモクラシーである。共存は、強い多数者が弱い少数者に喜んで提供する自己主張、他者説得の権利である。敵、それも最も弱い敵とさえ、積極的に共存するという、ゆるがない決意である。/その意味で、人類の自然的傾向に逆行する深いパラドックス(逆説)であるから、共存を決意した人類が、困難に面してこの決意を投げ出すほうへ後退したとしても、それは大きな悲劇ではあっても、大きな不思議とするには当たらない。/「敵と共存し、反対者と共に政治をおこなう」という意志と制度に背を向ける国家と国民が、ますます多くなっていく1930年代、オルテガは、「均質」化された「大衆」人間の直接行動こそが、あらゆる支配権力をして、反対派を圧迫させ、消滅させていく動力になるのだという。なぜなら、「大衆」人間は、自分たちと異類の非大衆人間との共存を全然望んでいないからである。略。///  「大衆」人間は、自分たちの生存の容易さ、豊かさ,無限界さを疑わない実感をもち、自己肯定と自己満足の結果として、他人に耳を貸さず、自分の意見を疑わず、自閉的となって、他人の存在そのものを考慮しなくなってしまう。そして彼と彼の同類しかいないかのように振舞ってしまう。/彼らは、配慮も、内省も、手続きも、遠慮もなしに、「直接行動」の方式に従って、自分たちの低俗な画一的意見をだれかれの区別なく、押しつけて、しかも押しつけの自覚さえもっていない。/彼らは、未開人―未開人は宗教、タブー、伝統、習慣といった社会的法廷の従順な信者である―ではなく、まさに文明の洗礼を受けた野蛮人である。文明の生み出した余裕、すなわち、贅沢、快適、安全、便益の側面だけの継承者であり、正常な生存の様式から見れば、奇形としかいいようのないライフスタイルを営んでいる新人類である。略。///  「自分がしたいことをするためにこの世に生まれあわせて来た」とする傾向、だから「したいことは何でもできる」とする信仰は、自由主義の自由の裏面、義務と責任を免除してもらう自由にほかならない。/われわれは自由主義の生みだした、この「大衆」人間的自由、自己中心的自由に対し、他者と共存する義務と責任をもった自由を保全しなければならないが、一筋縄でいかないのは、この仕事である。(160626:イギリスEU離脱について思うところ=もみ=)