もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

150215 衆参両院の「テロ非難決議」を非難する!「テロの本質」を真面目に語る政治家はいないのか!

 真面目に「テロの本質」を考えれば、その原因が、決して宗教の違いにあるのではなく、世界的に広がる富の偏在、極端な格差拡大、差別構造の継承、及びパレスチナ問題、それらによる<若者たちの絶望>にあることは、実は誰もがわかっていることだろう! それを「世界には凶悪なテロリストが大勢いて、こいつらを叩き潰せばテロが無くなる」なんて話に無理やりすり替えている。誰も、「テロの本質が、日本・世界の社会構造が抱える富の偏在・格差の拡大及びパレスチナ問題の<野放し状態>にこそある」という本質を語らないし、見させようとしない。そして、凶悪なテロリストへの恐怖ばかりを煽りたてている。これはまさにオーウェルの「一九八四年」の世界と同じだ。今回の国会の「テロ非難決議」に社民党・共産党まで加わっていたのには、あきれ果てた。「誰も本質を見ようとしない。」「武力で世界中の<絶望した若者たち>を封じ込めるべきではないし、不可能だ!」

秋原葉月さん「Afternoon Cafe」ブログから

※(1)「もちろん、普通の人間は戦争を望まない。しかし、国民を戦争に参加させるのは、つねに簡単なことだ。とても単純だ。国民には攻撃されつつあると言い、平和主義者を愛国心に欠けていると非難し、国を危険にさらしていると主張する以外には、何もする必要がない。この方法はどんな国でも有効だ」byヘルマン・ゲーリング ※(2)いつの時代も大衆をファシズムに煽動する手口は同じ。なのに同じ手口に何度も騙されるのは過去に学んでいないから。格差を広げ、セイフティネットを破壊し、冷徹な自己責任論が横行する社会を継続させるのは簡単だ。今よりもっと格差を広げ、セイフティネットを破壊する政策をとればよい。そうすれば人々に自己責任論がもっと浸透し、草の根から勝手に右傾化してくれる。

辺見庸さんのブログから

・権力をあまりに人格的にとらえるのはどうかとおもう。口にするのもおぞましいドブの目をしたあの男を、ヒステリックに名指しでののしれば、反権力的そぶりになるとかんがえるのは、ドブの目をしたあの男とあまり変わらない、低い知性のあらわれである。権力の空間は、じつのところ、非人格的なのだ。だからてごわい。中心はドブの目をしたあの男=安倍晋三であるかにみえて、そうではない。ドブの目をしたあの男はひとつの(倒錯的な)社会心理学的な表象ではありえても、それを斃せば事態が革命的に変化するようなシロモノではない。権力には固定的な中心はなく、かくじつに「われわれ」をふくむ周縁があるだけだ。ドブの目をしたあの男は、陋劣な知性とふるまいで「われわれ」をいらだたせ、怒らせるとともに、「われわれ」をして社会心理学的に(かれを)蔑視せしめ、またそのことにより、「われわれ」が「われわれ」であることに無意識に満足もさせているのかもしれない。ところで、「われわれ」の内面には、濃淡の差こそあれ、ドブの目をしたあの男の貧寒とした影が棲んでいるのだ。戦争は、むろん、そう遠くない。そう切実にかんじられるかどうか。いざ戦争がはじまったら、反戦運動が愛国運動化する公算が大である。そう切実に予感できるかどうか。研ぎすまされた感性がいる。せむしの侏儒との「ふるいつきあい」がベンヤミンのなにかを決定した。そう直観できたアレントほどするどくはなくても、研ぎすまされた感性がいる。けふコビトがきた。ミスドにいった。(2015/11/11)

161130 一年前:5 032 大和和紀「あさきゆめみし11」(講談社コミックス・ミミ:1991)感想4+

2016年11月30日 22時53分55秒 | 一年前
11月30日(水):
5 032 大和和紀「あさきゆめみし 11」(講談社コミックス・ミミ:1991)感想4+
11月25日(火):  著者43歳(1948生まれ)。206ページ    所要時間 3:25(お風呂で(*´ω`))       蔵書  「宇治十帖」の始まりであるが......


161130 一年前:151129 【考論 長谷部×杉田】平和主義守るための改憲、ありえるか

2016年11月30日 22時46分02秒 | 一年前
11月30日(水):
151129 朝日デジタル:【考論 長谷部×杉田】平和主義守るための改憲、ありえるか

11月29日(日):朝日デジタル:【考論 長谷部×杉田】平和主義守るための改憲、ありえるか  2015年11月29日05時00分 憲法解釈の変更で揺らいだ「9条の理念」を守る......


6 015 浦坂純子「なぜ「大学は出ておきなさい」と言われるのか」(ちくまプリマー新書:2009)感想2+

2016年11月29日 00時16分14秒 | 一日一冊読書開始
11月28日(月):  副題:キャリアにつながる学び方

170ページ    所要時間 1:35      アマゾン258円(1+257)

著者39歳?(1970生まれ?)。大阪府生まれ。大阪市立大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。現在、同志社大学社会学部産業関係学科准教授。労働市場の流動化を背景に、労働者が生涯にわたって様々な移動を繰り返しつつ持続的にキャリアを形成する過程を、学校、企業、創業、インターバルなどのキャリアステージを拠点に分析し、社会における適材適所の達成を研究している

 大学受験で捨てられる数学は、実は長い目で見れば給料の額で有意味的に役に立つ、のを統計的に確認できたそうだ。俺も、共通一次と二次試験で数学ⅡBまで受験したので数学受験の意義には同意できる。ただ、読んでいて一番感じたことは、「それで?」「それがどうしたの?」ということ。読み進むうちに、「これはコピペ学生らに対する大学の先生の<愚痴>だなあ」と感じ始め、最後に「この本は大学教授でなくてもかける。つまり、著者でなくてもかける内容だ。」そして、改めて「それで?」という感想を持った。悪しからず。

【目次】はじめに 大きくなったら何になりたい?/第1章 「働く」ことの5W2H/第2章 何のために勉強するのかー可能性を広げる教育/第3章 進路選択に向き合うとき/第4章 学び方が変わるー大学入学準備講座/第5章 本当に身につけるべき「チカラ」とは

【内容情報】将来のキャリアを意識した大学の選び方、受験勉強の仕方、大学での学び方とは?就活を有利にするのは留学でも資格でもない!数々のデータから読み解く「大学で何を学ぶか」。

161128 一年前:【論壇時評】LGBTから考える 困難でも、壁越えよう 作家・高橋源一郎

2016年11月28日 20時17分38秒 | 一年前
11月28日(月):
151127 朝日デジタル:【論壇時評】LGBTから考える 困難でも、壁越えよう 作家・高橋源一郎

11月27日(金):朝日デジタル:【論壇時評】LGBTから考える 困難でも、壁越えよう 作家・高橋源一郎   2015年10月29日05時00分  教え子に性同一性障害の女子学......


161128 一年前::【あすを探る 財政・経済】1億総勤労からの脱却を 井手英策

2016年11月28日 20時16分30秒 | 一年前
11月28日(月):
151127 朝日デジタル:【あすを探る 財政・経済】1億総勤労からの脱却を 井手英策

11月27日(金):朝日デジタル:【あすを探る 財政・経済】1億総勤労からの脱却を 井手英策  2015年11月26日05時00分  ふと思い立ち、国立国会図書館の検索機能を使......


6 014 出口汪(ひろし)「頭がよくなるスーパー読書術」(青春出版社:2005)感想3+

2016年11月27日 19時22分03秒 | 一日一冊読書開始
11月27日(日):   副題「論理力、考える力、発想力が誰でも身につく!」

217ページ   所要時間 2:45    アマゾン258円(1+257)

著者50歳(1955生まれ)。大学受験予備校スーパー・プレップ・スクール(SPS)と、受験参考書を発行し「論理エンジン」を編集・管理する出版社(株)水王舎を経営している。関西学院大学大学院在学中、アルバイトで予備校の教壇に立ち、独自の論理的解法を駆使した授業でたちまち人気講師となる。博士課程修了後、代々木ゼミナール、東進ハイスクール講師として活躍、日本語の「論理」から合理的・客観的に難問を解明していくスタイルは、受験現代文の世界に革命をもたらした。

著者の書を読むのは初めて。著者は出口王仁三郎の曽孫。少し色眼鏡で見ていたが、書かれている内容は、奇を衒わないまともなことばかりだった。著者は、文学をきちんと愛する国語指導者である。

習うより慣れよ。目を前に早く動かしていけば、自ずと頭の機能もそれに合わせて動く。分からなくてもいい。ひたすら論理を追っていくこと。ゆっくり目を動かせば、脳を休ませるだけ。大事なことは必ず繰り返し出てくるので、読み飛ばしても大丈夫。要所に線を引くのも良い。大事なことは、単に読むだけで終わらせず、本の内容について他人に説明できるように、何が書いてあったのか、内容を要約して人に話せるようにまとめ書きをする習慣を持つことである。

  文学作品を読むのは、最初の数十ページを乗り越えて、時代、状況、場面設定をしっかりと把握するまでが勝負である。それさへできれば、あとは豊饒な世界が待っている。
  作品を読む場合、自分の好悪の視点に執着することは、何一つ得るものがない。作品世界を正確に把握することこそが大事なのだ。
  本を読む人生と、本を読まない人生とでは、確実に違う。少なくとも人生の豊饒さが違う。たった一度の人生、その豊饒さを味わい尽くして死んでいきたい。読書は習慣である。

【目次】プロローグ あなたはなぜ、間違った読書をしてしまうのか/第1章 読書で知識が増える人時間の無駄にしてしまう人/第2章 「速読=熟読」にする出口式の秘密/第3章 私はどうやって、読書で頭を鍛えてきたのか/第4章 文章を“速く”“正しく”身につける3つの関係/第5章 文学書を読みこなして、頭脳と感性に磨きをかける/第6章 論文を書いてみる/第7章 読書という武器を人生に生かすために/エピローグ 出口汪の頭がよくなる文学案内

6 013 内藤正典「となりのイスラム」(ミシマ社:2016)感想5

2016年11月27日 01時25分51秒 | 一日一冊読書開始
11月26日(土):  副題「世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代」

252ページ    所要時間 2:30     図書館

著者60歳(1956生まれ)。専門は多文化共生論、現代イスラム地域研究。一橋大学教授を経て、現在、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。

 読書を生きがいにしたいと思うが、仕事に追われて遠ざかっていた。手元には読みたい本、読まねばならない本、読むべき蔵書がどんどんたまっていく。死ぬまでに読みきれないほど本がある。気に入った本に囲まれている幸福感とともに焦慮の念に追い立てられている。食事と同様に読書をしたいと思うが、実のところ食事もままならないほど余裕がない。体も弱っている。体重は、8月から20kg減った。

 いろいろ言い訳はあるが、まず読むことだ。

 まず本書の評価は、買い!だ。イスラムに対する従来常識とされてきた多くの思い込みの間違いを分かりやすく訂正・解説してくれている。その上、著者は、イスラムへの偏見・誤解、無関心に対する研究者としての強い義憤に突き動かされるように書いている。世界が犯しているイスラムとの関わり方の間違いを指摘し、正しい関わり方をを力説している。その意味で、魂のこもった本である。たくさんの気づきを与えてくれるテキスト!である。

 流し読みなのできちんと知識が定着できたか自信はないが、読んでいて理解できない部分はなかった。著者の批判は非イスラムの欧米にも、イスラムの諸国自身に対しても容赦なく向けられる。俺自身のイスラムに対する間違った認識は相当改善されたと思う。イスラムをきちんと「違う人たち」として認識し、「正直に接するのが一番である」ことも分かった。その上で、あえて言うがイスラムの人たちとは根本的に理解し合い付き合うのは困難だ、可能にするためには、自分自身がイスラムになるか、自分の生活の大変大きな部分を苦労して変える必要があると思った。

 一番重要なのは、そういうイスラムが15,16億人いて、近い将来世界の3人に1人になることだ。とても知らないふりをして済まされる数ではない。平穏無事という言葉は、いつの時代もあり得ない。常に我々は覚悟を決めた選択をし、変わり続けなければならないのだろう。願わくば、もうこれ以上、日本が愚か者の指導者に導かれないことを祈る。

 他に:・映画「アラビアのロレンス」は、イスラムに対する間違った理解を世界中に広げた。
 ・和辻哲郎『風土』の「砂漠の宗教」というのも偏見である。正確には「都市の宗教」というべき。

【目次】まえがき /序章  世界を救える国はどこか? /第1章 衝突は「今」起きたわけではない /第2章 イスラム教徒とは、どういう人か /第3章 西欧世界とイスラム世界はもとは同じ /第4章 となりのイスラム教徒と共に /第5章 ほんとはやさしいイスラム教徒 /第6章 日本人が気になる12の疑問 /第7章 イスラムの「病」を癒すために /終章  戦争、テロが起きないために私たちができること /あとがき

【内容紹介】  仲良くやっていきましょう。
  テロ、戦争を起こさないために― /大勢のイスラム教徒と共存するために―― /これだけは知っておきたい。
  現代イスラム地域を30年以上見つめつづけてきた研究者である著者が、いま、なぜ「こんなこと」になっているのか? を解説。「一夫多妻制って?」などの日常的な話題から、「イスラム国」がなぜ生まれたか、といった世界情勢の見方や「テロを本当になくすために必要なこと」まで、抜群のわかりやすさで綴る、現代必読の一冊。
  1980年代にシリアを、その後ヨーロッパでトルコ出身の移民を、それぞれ現地で研究してきました。91年からは、トルコに家をもち、イスラム世界との交流をつづけています。この本では、私が実際に見て聞いて研究した「となりのイスラム」をご紹介することで、みなさんの頭のなかにある、イスラムは怖いという思い込みを解いていこうと思います。そして、ごくふつうに仲良くしていけるんだ、あるいは、そうしていきたい、と思い、行動する人たちが増えていってほしいと思うのです。――まえがきより


【パブリシティ情報】  「これまででもっともわかりやすく、実践的で、役に立つイスラムの入門書だと思う。(…)これなら中学生にも理解できます。その解説力もスゴイです。」(斎藤美奈子氏、2016年9月11日、朝日新聞書評欄)
  「恐怖や嫌悪の原因は、西洋近代とは根底から違うイスラムの価値観にあるとして、生活習慣から世界観まで丁寧に解説。(…)世界人口の3分の1に迫るイスラム教徒とは、もはや無縁ではいられない。共生に向けた一冊。」(2016年 8月28日、山形新聞、神奈川新聞、信濃毎日新聞、徳島新聞書評コーナー)
  「これだけテロが続くと、『イスラム教徒死ね』みたいな手紙がモスクに来る。日本にいるイスラム教徒は日本に対してなんの悪意もないのに、そういうことがきっかけになって敵意が湧いてくる。欧州と同じ失敗だけは避けたい、というのが本を書いた動機です。」(2016年8月28日、西日本新聞「本と人」コーナー)
  「内藤教授は語る。『人の顔を見ようとしなくなった時、国家であれ、テロリストであれ、恐ろしく残酷になる』」(2016年8月23日、京都新聞著者インタビュー)
  「一番大切なのは普通のイスラム教徒がどういう人たちなのかを知ること。内藤さんが知るイスラム教徒は、子供や女性を大切にし、弱者を助け、人と人の間に線を引かない人たち。」(2016年8月14日、北海道新聞著者インタビュー)
  「イスラムやハラールへのさまざまな誤解について日常生活の話題を交えながら解説し、イスラムと共存する知恵や工夫を探ります。」(宮原源太郎氏、2016年8月6日、週刊ダイヤモンド)

161124 80万PV超:

2016年11月25日 22時34分03秒 | 閲覧数 記録
11月24日(木):  記録ですm(_ _)m。ブログの開設から1874日。 

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161122 野田聖子議員

2016年11月23日 00時54分20秒 | 時々刻々 考える資料
11月22日(火):      
朝日デジタル(リレーおぴにおん)産む。生まれる。:3 息子が私を動かしてくれる 野田聖子さん  
2016年11月22日05時00分
  息子ができて、ようやく私が目指す国会議員になれたって気がします。24年も続けていれば、仕事はある程度はできる。でも、自分には「どっしり感」が欠けているというコンプレックスが、ずっとあったんです。
  子どもを持つまでは一人だから、守るものがありませんでした。自分の人生はいつも「強い者」の側にいて、「こういう仕事をやらせてください」とは言うのにためらいがあった。でも、いまは何のてらいもなく言えます。子どもを不幸にしたくないというすべてのお母さんの願いをかなえるために、「やり抜かなければ」と思っています。政治家として欠けていた大事なジグソーパズルのピースが、すぽん、とはまった感じです。私は50歳で産みました。息子には障害があるので、なおさら、親亡き後にきちんとした社会を残さなければと、強く意識しているのかもしれません。
  今年、施行された改正児童福祉法に、経管栄養や胃ろうが必要な子どもたちを意味する「医療的ケア児」について、条文に入れることができました。福祉の支援対象として、ようやく位置づけられたのです。ここまで私を動かしてくれたのは、息子のおかげ。息子が理解できるようになったら、言ってあげたい。「福祉の不備を補うきっかけになったね」と。
  生まれてすぐにNICU(新生児集中治療室)に入った息子は2歳3カ月まで入院し、医者から「余命はわかりません。1日、1日ですよ」と言われました。退院後、自宅で心肺停止になって、顔が紫色になっていくのも経験しました。朝起きたとき、主人との最初の会話は「おはよう」じゃない。「生きてる?」「うん、息してる」です。いま5歳10カ月になったこの小さな命はとてもか弱いけれど、いくつもの試練を乗り越えるものすごい強さを秘めている。多くのことを、頭ではなく心で覚えさせてくれる、私のメンター(良き指導者)なのです。
  障害者を取り巻く日本の環境には、まだまだ多くの課題があります。障害に対し、冷たいと実感することも少なくありません。出生前診断が議論になりますが、この国がすべての障害児を歓迎しているかといえば、そうではないのでしょう。それでも産む選択をする人、無理だと思う人、両方がいる。
  人が下す判断に、正しいとか間違っているとかとは言えるものではない。自分のことには責任を持って行動するしかありません。私は一生懸命、子どもを守らなくてはいけない。いまは人のことをとやかく言う暇もないくらい、とても忙しいですね。 (聞き手・三輪さち子)
    *
 のだせいこ 衆院議員 1960年生まれ。岐阜県議をへて93年の衆院選で初当選。37歳で戦後最年少閣僚として郵政相に。米国で卵子提供を受け、50歳で長男を出産


〈AERA〉野田聖子議員「嫌な男性に会うと脳内でオムツを替える(笑)」 dot. 11/11(金) 11:30配信
※AERA 2016年11月14日号
  超党派議員連盟の幹事長として、女性議員を増やすために、候補者をできる限り男女同数にする法案を国会に提出することを目指していたが、自民党内の男性議員からは「同数」ではなく「均衡」に、と反対意見が出た(撮影/写真部・今村拓馬)

  日本の衆参両院の国会議員(717人)のうち、女性は94人。世界を見渡しても、日本の国会議員の女性比率は低い。彼女たちは男社会の永田町でもがき、懸命に闘っている。オヤジ化した自分と決別する女性議員も出始めた。野田聖子衆議院議員(56)=元自民党総務会長=に話を聞いた。
*  *  *
  初当選した32歳のときは本当に孤独でした。何を言えばいいのか、着たらいいのか、誰も教えてくれない。女性だから下に見られることもたくさんあった。
  だから私も、いわゆるおじさん政治家を演じていました。ポストをもらうためには自分の意思も捨てるし、派閥に入ったら絶対的に派閥のいうことを聞く。こういうメンタリティーって男性的じゃないですか。でもなんで同じ給料のおっちゃんに「先生お願いします」なんて言わないといけないのか、自分が自分じゃないみたいで嫌でした。
  ブレークスルーしたのは結婚して子どもを産んでから。息子の前でヘタレ感満載の政治家・野田聖子を見せたくない。家でも国会議事堂でも同じ私でいたいと思うようになったのがきっかけです。党の方針に逆らって郵政民営化に反対してこっぴどくやられたときは、やった側の人たちを見ると鬱々とした気持ちになっていたんだけど、息子のオムツを替えていたときにふと「ああ、彼らも小さい頃はこんなだったのね」と思ったんです。そこで何かが抜けてね。それ以来、嫌な男性に会うと脳内でオムツを替えています(笑)。

●党も政策も超えて
  私自身が変わると、周囲から威圧されることもなくなりました。総裁選に出ようとしたのも、「今は静かにしておけば良いことあるかも」という男性的な発想がなくなったからです。派閥という同調圧力を脱したら、有権者のほうを向いた、よりクリエーティブな仕事ができるようになりました。法律をつくるためのクライアントは派閥じゃなく有権者ですから。
  日本の女性政治家にとって、小池百合子さんが都知事、蓮舫さんが民進党代表になったことは大きなターニングポイントだと思っています。総理に任命されて就任する女性閣僚と、選挙でポストを勝ち取った彼女たちは全く違う。みんな同じように並べるけど、全然重みが違います。ガラスの天井は大きく破れましたよね。
  でも日本の女性議員は数でいうと絶滅危惧種で本当に危機的な状況です。与党も野党も政策の壁も超えて、今は女性議員みんなが支え合わないといけないとき。社会保障政策がガタつくのも、女性議員が少ないことが関係していると思います。だからまずは数を増やしたい。有権者の皆さんも女性議員が2割に満たないこのアンバランスな現状に気づいてほしいんです。
  あ、そういえば、今も男性的な部分がありました。スーツは紳士物の生地で仕立てているんです。意外ですか? 長持ちするので、すごくいいんですよ。(構成/編集部・竹下郁子)


161119 近況:録画撮りの「逃げ恥」を飽きることなく観ている。知には記憶があるが、情には記憶がない(故桂枝雀師)。

2016年11月19日 12時33分53秒 | 徒然・雑感
11月19日(土):      

 今年は仕事が忙し過ぎる。初老の身を思えば、仕事の量と負担が重過ぎるのだ。今の世で奇跡的に自分の専門性を生かせる仕事に就けているのだから我慢すべきかもしれない。しかし、それにしても馬車馬のように脇目もふらず走らされながら、さして偉くもない年下の上司や、調子に乗った役付きの馬鹿が無神経な言葉を吐いて現場にいる俺の精神状態を逆なでし、混乱させてくる。

 思いやりを欠いた言葉を、小賢しく吐いて青息吐息で踏ん張っている現場の反感を買い、士気を著しく下げているのにも気づかずに「自分は大所高所から良いことを言っている」と満足している馬鹿に出会うと飲んでいるカップのコーヒーをぶっかけてやりたくなる。人間あまりに忙しく、あまりに疲労がたまると精神状態が極めて悪化、不安定化するようです。

 そんな訳で現在私もみは絶不調であります。要領よく手を抜く術を知っていれば、もう少し楽かもしれないけど今いちそんな気分になれない自分自身が恨めしい。その上、風邪まで引いて、いやな咳を繰り返しながら熱っぽい体を押して這う様に週末に漕ぎつけた。というのが現状です。

 本どころか、とっている朝日新聞(堕落して政府広報化しつつある!ので学べない。価値がない。そろそろ止めようかと思っている!)すらまともに読めない日々の中、最近唯一の楽しみが、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を繰り返し観ることである。もちろんまともに見るのは初回だけで、あとは持ち帰った仕事や最低限やらねばならない日々のルーティーンを疲れた体に鞭打って進める際のBGMとして流し見し続けるのである。

 初回から現在第6話まで繰り返しているが、何度見直しても楽しめるドラマは久しぶりである。昨年秋のドラマ「コウノドリ」がそうだったが、「逃げ恥」はこの繰り返し何度見ても面白い傾向がより強い気がする。一年前の、「151219 知のドラマ「下町ロケット」3と情のドラマ「コウノドリ」5。何度でも観れるのは情のドラマ。」でも書いたことだが、故桂枝雀師知には記憶があるが、情には記憶がない。赤ちゃんの顔を何度見ても可愛らしさは変わらない。」「筋がわかっていても、それでも何度聞いても面白い。それこそが落語の本質だ。」と語っておられた。

 「逃げ恥」を繰り返して観る人たちが大勢いるそうだが、俺にはすごくよくわかる。筋を確認するためではないのだ。そのシーンごとの、心地よい情(人情)を繰り返し味わいたいと思っているのだ。他の多くのドラマが、知としてのストーリー展開のみに関心があるのに対して、「逃げ恥」は、物語の展開もさることながら、共感できる情(人情)にこそ最大のポイントがあるのだ。

 結論めかしく言えば、「『逃げ恥』は落語である」と思えばよいのだ。だから、繰り返し観ていても「あああの人にまた会いたいなあ」「あああのシーンをまた見たいなあ」と思えば、筋書きは分かっていても、何度でも見てしまえるのだ。「逃げ恥」を分析すること自体無粋で野暮なことかもしれないが、今回のキャストは絶妙だと思う。嫌な人がいないので感情移入を邪魔されないのも良い。

 ちなみに、昨夜はくたくたに疲れ果てている中で、星野源さん初主演映画「箱入り息子の恋」(2013)の録画を流し観した。最後のいささかシュールな終わり方には驚かされ、感想は3+(夏帆さんが良かった)だったが、この映画の主人公が、津崎平匡の原型であることはほぼ間違いがない。『逃げ恥』での平匡さんの演技は、映画ですでに確立していたのだ。あとは少しアレンジするだけだったのだ。

 また、「逃げ恥」を見始めてから、このひと月半の間に、俺はドラマ「リーガルハイ」1シリーズ・2シリーズ・SPと映画「フレフレ少女」(2008)の録画を全部流し観している。もちろん、日々の仕事に追われながらではあるが、疲れ果て、悪化し続ける精神状態を支えてくれる清涼剤的な効果があった。新垣結衣さん(ガッキー)には、理屈抜きで観る者の疲れを癒やしてくれる清潔感と面白味、爽やかな魅力があると思う。本当に素敵な女優さんだ。

 あと野木亜紀子さんの脚本は、気の利いた言葉遊びとスピード感があって、とても洒落ている。この人、言葉のセンスが抜群だ。落語家・落語作家の素質があると思う。

161111 79万PV超:

2016年11月13日 07時25分33秒 | 閲覧数 記録
11月11日(金):  記録ですm(_ _)m。ブログの開設から1861日。 

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161107 一年前:151106 バッテリー注文 4,262円:TAIWAN YUASAシールド型 バイク用バッテリー YTX7L-BS

2016年11月07日 22時15分58秒 | 一年前
11月7日(日)
151106 バッテリー注文 4,262円:TAIWAN YUASA [ 台湾ユアサ ] シールド型 バイク用バッテリー YTX7L-BS
11月6日(金):   アマゾンで4,262円!。バイク屋の5分の1、ホームセンターの3分の1でバッテリー交換ができる。市場経済とは摩訶不思議だ。安いバッテリーの存在を実感......


161102 池澤夏樹【終わりと始まり】内地から見る沖縄問題 「植民地の叛乱」の構図

2016年11月03日 00時06分48秒 | 沖縄と共に生きる
11月2日(水):    

 普段漠然と感じている思いに言葉が与えられた。このコラムは朝日新聞夕刊に掲載されているが、決して朝日新聞社の記事ではない! アウトソーシングの記事である。

朝日デジタル(終わりと始まり)内地から見る沖縄問題 「植民地の叛乱」の構図 池澤夏樹  2016年11月2日16時30分
  (以下に書いたことは十月三十一日の琉球新報に載せたコラムとほぼ同じ内容である。なぜ沖縄の地方紙と朝日新聞に同じことを書くか、お読みいただけばわかると思う。)
  沖縄を離れて十三年になるが、あの島々を忘れてはいない。機会を得れば行くことにしている。先日も恩納村の図書館から講演に呼ばれた。
  その前の日、急に思い立って高江を見に行くことにした。政府が米軍の意向を汲(く)んでオスプレイなどの離着陸場(ヘリパッドと呼ばれる)を新設している現場。そのやりかたが強引すぎるとぼくは思っていた。そもそも、ヘリコプターではなく垂直離着陸機であるオスプレイの基地をヘリパッドと呼ぶのは意図的な誤訳である。
  新川ダムの先にある反対派のテントを訪れ、リーダーの山城博治さんに挨拶(あいさつ)し、集まったみなさんを労(ねぎら)った。翌日の土曜日には、反対派の人々二百人以上が現地に集結したと聞いた。
  数日後、ぼくは小豆島にいたのだが、大阪府警に所属する機動隊員が反対派に向かって「土人」、「シナ人」という言葉を使った、という報(しら)せが入った。
  これらは相手を侮蔑する場合のために予(あらかじ)め用意された言葉だ。未開の地の、文化的に劣る民が「土人」であり、日本人より劣る民族が「シナ人」。シナは China と同源だが、しかしかつて日本人は蔑視の文脈でこの言葉を使った。だから今も中国の人はこの語を嫌う。使えば挑発になる。
     *
  なぜ沖縄人が土人と呼ばれたのか?
  東京の政府や警察庁にあるのは、遠い植民地の叛乱(はんらん)という構図なのだ。
八世紀の末、陸奥(みちのく)に新しい砦(とりで)を造ろうとしたら、蝦夷(えみし)が集まって反対と言って騒ぐ。鎮圧のために中央から五百名の軍勢を送る。
  そう教えられてきたから公務執行中の大阪の機動隊員は「土人」といった。「シナ人」という言葉も使った。そして松井一郎大阪府知事は「よくぞ言った」とばかりこれを追認した。
  高江のヘリパッド建設に反対する理由を整理してみよう。
  1 沖縄はすでに過剰な数の軍事基地を負わされている。県民にすれば、もうこれ以上は一メートル四方でも基地を増やしたくない。今回の新設は北部訓練場の返還と引き替(か)えと言うけれど、返ってくるのはもともと米軍が使っていなかった土地。朝三暮四そのままの欺瞞(ぎまん)である。
  2 外交と軍事は国の専管事項と国は言う。それならば生活は国民の専管事項である。平穏に暮らす沖縄県民の日々を乱す権限は国にはない。日本国憲法第二十五条、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」がこれを保障している。軍用機の騒音と事故の危険は明らかにこれに違反する。
  3 生態系への影響が大きい。やんばるの自然林の木を二万四千本伐(き)って四ヘクタールの空き地を作る。やんばるの自然はまだまだ未知であり、ヤンバルクイナやノグチゲラのような新種がいないとは言えない。
  これは沖縄県民がよく知っていることである。問題は内地の人たちの無知と無理解。
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  「土人」発言はさすがに暴言として内地でも話題になった。多くの新聞が記事にしたし、テレビのワイドショーで取り上げるところもあった。おかげさまで大阪府知事の正直な発言が話を大きくしてくれた。
  しかし、そこまでなのだ。後は下品な週刊誌が尻馬に乗って反対する人々を更に罵(ののし)ったくらい。
  朝日新聞は普段から沖縄の事情に理解を示す新聞であって、この件については二十日の朝刊の社会面で六十行ほどの記事を載せた。翌日、「差別構造が生んだ暴言」という社説を掲げた。
  そして、そこまで
  なぜ沖縄の人たちがこの高江の基地新設にかくも反対するか? なぜ沖縄のメディアが辺野古と並べて高江を報じるか? それをていねいに解説する紙面はない。速報と、社説の総論のみ
  この一件には(内地から言うところの)沖縄問題が集約されている。厄介なものは沖縄に持っていけばなんとでもなる。あそこは戦後七十一年間ずっと抑圧されてきたから抑圧慣れしている。騒ぐのは一部の活動家ばかり、内地の機動隊で押さえ込める。予算の分配を少し増やしてやれば県民もおとなしくなる。送電線さえ延ばせれば、原発もみんな沖縄に集約できるのに。
  そう気づいたところで、また別の構図が見えてきた。泊(とまり)も東通(ひがしどおり)も柏崎刈羽(かしわざきかりわ)も敦賀(つるが)も美浜(みはま)も大飯(おおい)も伊方(いかた)も玄海(げんかい)も川内(せんだい)も、実は高江である。米軍基地と原発はよく似ている。どちらもなくても済むもの、ない方がいいものなのだ。

  平等という原理は自由や友愛と並んで近代国家の基本理念である。機動隊の「土人」発言は国としてみっともない、とあなたは思わないか。

161031 琉球新報:【社説】土人発言抗議決議 沖縄差別の政策やめよ 国民と県民の分断強める

2016年11月01日 00時02分02秒 | 沖縄と共に生きる
10月31日(月):
琉球新報:【社説】土人発言抗議決議 沖縄差別の政策やめよ 国民と県民の分断強める  2016年10月29日 06:01
  県議会はヘリパッド建設現場での機動隊員による「土人」「シナ人」発言について「県民の誇りと尊厳を踏みにじる」とする抗議決議、意見書を可決した。政府、警察は重く受け止めるべきだ。
  ただ決議の文言調整で当初の「機動隊撤収」は削除され「警備体制の改善を求める」との訴えにとどまった。自民会派は「市民側にも暴言があった」との意見書案で対抗し、与党・中立会派の決議案を賛成多数で可決した。
  県議会の抗議を全会一致で示せなかったのは残念だ。県民が共有する怒りと抗議が分断され、国民世論への訴えが弱まった形だ。

偏見を再生産
  県議会の会派が分断され、決議が全会一致とならなかったことを政府は内心、喜んでいることだろう。しかしそれは大きな間違いだ。今回の差別発言問題は県議会、県民の間だけでなく、国民と県民にも大きな分断と亀裂を生じさせたからだ。
  機動隊員の「土人」発言に県民は激怒した。だが「シナ人」発言に戸惑った県民も多かったのではないか。20代の機動隊員が、死語に近い「土人・シナ人」の言葉を発したことも不思議だった。
  ネット上で国策の基地建設に反対する県民が「土人・シナ人」呼ばわりされ、県民を異端視し偏見を助長する言説が流布されていることが背景にある。
  政府の沖縄への基地集中政策と、これに抗(あらが)う県民の対立が県民に対する偏見を助長し、若い世代の差別感を再生産しているのだ。
  公人たる松井一郎大阪府知事の機動隊員を擁護する発言が、さらに差別と偏見の再生産を強めた。
  基地建設を巡る政府と沖縄の対立だけでなく、「日本」対「沖縄」の対立構図が深まりつつあることを危惧する。
  日本復帰前の米軍占領から復帰後の日本政府に引き続く沖縄統治政策は、県民を分断する歴史でもあった。日本復帰運動に対しては「イモはだし論」で反対する主張があった。復帰後も基地問題を中心に保革対立の政治は続いた。
  県民世論が反対する辺野古新基地建設を巡り政府と県が対立を深める中で、政府の「基地と振興のリンク」が公然化した。沖縄担当相の「選挙と振興のリンク」など、沖縄に対する「アメとムチ」の政策が、県民分断の背景にある。
  政治学の用語に「分断統治政策」がある。「支配される側を分断し、統治者への反発を抑える」統治法で、植民地政策の常套(じょうとう)手法だ。沖縄の歴史は日米両政府による分断統治の歴史と言っていい。

見えぬ米軍の姿
  辺野古新基地もヘリパッドも米軍基地建設なのに、そこに米軍の姿は見えない。「沖縄の負担軽減」を名目に、日本政府が経費を負担し、建設を進めているからだ。
  米軍は背後に隠れ、政府と県民の対立、現場での機動隊と県民の対立が激化しているのである。
  2004年の辺野古沖調査で、大型台船の前に反対運動の市民が飛び込み台船を止めた。命を賭しても工事を止めるという悲壮な決意をうかがわせた。金武町伊芸区の米軍都市型戦闘訓練施設の建設反対運動では、基地内で実力阻止すべきだとの声を聞いた。 
  ヘリパッド建設では米軍北部訓練場内の抗議行動で反対運動のリーダーが逮捕された。本来、平和的で非暴力の基地反対運動が、言論の訴えが顧みられない状況下で市民を物理的行動に駆り立てているのである。現場の対立は先鋭化し、臨界点を迎えつつある。
  差別発言を契機に、「自治権確立」、さらに「琉球独立」の声すら高まりつつあるように思われる。独立論の高まりは「日本」対「沖縄」の対立をさらに深めることになるだろう。
  日米両政府は沖縄への差別政策をやめるべきだ。沖縄に基地を集中する「構造的差別」が続く限り、県民の分断、「日本」対「沖縄」の亀裂は埋まらない。

150329 タガ外せば歯止め失う 長谷部恭男・早稲田大学教授/「未来志向」は現実逃避 杉田敦・法政大学教授

 杉田 先日ドイツのメルケル首相が来日しました。戦後ドイツも様々な問題を抱えていますが、過去への反省と謝罪という「建前」を大切にし続けることで、国際的に発言力を強めてきた経緯がある。「建前」がソフトパワーにつながることを安倍さんたちは理解しているのでしょうか。  / /長谷部 そもそも談話が扱っているのは、学問的な歴史の問題ではなく、人々の情念が絡まる記憶の問題です。記念碑や記念館、映画に結実するもので、証拠の有無や正確性をいくら詰めても、決着はつかない。厳密な歴史のレベルで、仮に日本側が中国や韓国の主張に反証できたとしても、問題はむしろこじれる。相手を論破して済む話ではないから、お互いがなんとか折り合いのつく範囲内に収めようと政治的な判断をした。それが河野談話です。  / /杉田 談話の方向性や近隣との外交について「未来志向」という言い方がよくされますが、意図はどうあれ、それが過去の軽視という「見かけ」をもってしまえば、負の効果は計り知れない。安倍さんたちは、未来を向いて過去を振り払えば、政治的な自由度が高まると思っているのかもしれません。しかし政治の存在意義は様々な制約を踏まえつつ、何とか解を見いだしていくところにあります。政治的な閉塞(へいそく)感が強まる中で、自らに課せられているタガを外そうという動きが出てくる。しかし、それで万事うまくいくというのは、一種の現実逃避では。  / /長谷部 合理的な自己拘束という概念が吹っ飛んでしまっている印象です。縛られることによってより力を発揮できることがある。俳句は5・7・5と型が決まっているからこそ発想力が鍛えられる。しかし安倍さんたちは選挙に勝った自分たちは何にも縛られない、「建前」も法律も憲法解釈もすべて操作できると考えているようです。  / /杉田 俳句は好きな字数でよめばいいのだと。  / /長谷部 あらゆるタガをはずせば、短期的には楽になるかもしれません。しかし、次に政権が交代したとき、自分たちが時の政府を踏みとどまらせる歯止めもなくなる。外国の要求を、憲法の拘束があるからと断ることもできない。最後の最後、ここぞという時のよりどころが失われてしまう。その怖さを、安倍さんたちは自覚すべきです。 =敬称略(構成・高橋純子)朝日新聞『考論』

0015 オルテガ「大衆の反逆 (桑名一博訳;久野収解説)」(白水社イデー選書;1930)評価5

以下は、オルテガ所論の久野収による抜粋の抜粋である:///  オルテガによれば、政治のなかで「共存」への意志を最強力に表明し、実行していく政治スタイルこそ、自由主義的デモクラシーである。共存は、強い多数者が弱い少数者に喜んで提供する自己主張、他者説得の権利である。敵、それも最も弱い敵とさえ、積極的に共存するという、ゆるがない決意である。/その意味で、人類の自然的傾向に逆行する深いパラドックス(逆説)であるから、共存を決意した人類が、困難に面してこの決意を投げ出すほうへ後退したとしても、それは大きな悲劇ではあっても、大きな不思議とするには当たらない。/「敵と共存し、反対者と共に政治をおこなう」という意志と制度に背を向ける国家と国民が、ますます多くなっていく1930年代、オルテガは、「均質」化された「大衆」人間の直接行動こそが、あらゆる支配権力をして、反対派を圧迫させ、消滅させていく動力になるのだという。なぜなら、「大衆」人間は、自分たちと異類の非大衆人間との共存を全然望んでいないからである。略。///  「大衆」人間は、自分たちの生存の容易さ、豊かさ,無限界さを疑わない実感をもち、自己肯定と自己満足の結果として、他人に耳を貸さず、自分の意見を疑わず、自閉的となって、他人の存在そのものを考慮しなくなってしまう。そして彼と彼の同類しかいないかのように振舞ってしまう。/彼らは、配慮も、内省も、手続きも、遠慮もなしに、「直接行動」の方式に従って、自分たちの低俗な画一的意見をだれかれの区別なく、押しつけて、しかも押しつけの自覚さえもっていない。/彼らは、未開人―未開人は宗教、タブー、伝統、習慣といった社会的法廷の従順な信者である―ではなく、まさに文明の洗礼を受けた野蛮人である。文明の生み出した余裕、すなわち、贅沢、快適、安全、便益の側面だけの継承者であり、正常な生存の様式から見れば、奇形としかいいようのないライフスタイルを営んでいる新人類である。略。///  「自分がしたいことをするためにこの世に生まれあわせて来た」とする傾向、だから「したいことは何でもできる」とする信仰は、自由主義の自由の裏面、義務と責任を免除してもらう自由にほかならない。/われわれは自由主義の生みだした、この「大衆」人間的自由、自己中心的自由に対し、他者と共存する義務と責任をもった自由を保全しなければならないが、一筋縄でいかないのは、この仕事である。(160626:イギリスEU離脱について思うところ=もみ=)