もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

4 005 富坂聰「中国の破壊力と日本人の覚悟」(朝日新書;2013/4)感想5

2014年10月05日 17時48分52秒 | 一日一冊読書開始
10月5日(日): 副題「なぜ怖いのか、どう立ち向かうか」

214ページ   所要時間 1:30    図書館

「縁結び読書」のつもりで、最初1ページ5秒ペースで最後まで眺め通してから、再度1ページ15秒ペースで目を通した。付箋もした。

著者49歳(1964生まれ)。

著者は、テレビ・新聞でもよく見かける現代中国の第一人者の一人である。中国に対する一面的な見方を戒め、多面的な見方の必要性を分かり易く解説してくれる好著である。

中国に対する是々非々の立場を貫きながら、一方で日本人が見落としがちな中国の権力構造や生存競争の厳しさ、国家のスケール・メリット&デメリットに気付かせ、そこから柔軟な視点や理解に導いてくれる。

【目次】はじめに 顔が見えない国
第1章 中国軍はどれだけ怖いか:火器管制レーダー照射問題の発端/解放軍を把握できていない外交部/超大国に対抗するための「竹のカーテン」/戦略的な嘘/周辺国が中国に抱く懸念三つ/繰り返し持ち出される日中間の歴史問題/国防費をめぐる問題/軍事力は数字で判断できない/空母就航までの遠い道のり/空母の性能の問題/中国の空母で費用対効果は得られるのか/軍事に関する本当の問題
第2章 “殺到”が破壊力を生み出す:緊迫した日中関係/漁船衝突事件の本当の被害者/韓国が受けた被害/中国の漁民は何故凶暴なのか/鉄鋼業界の「デフレの輸出」の弊害/“殺到”で崩れる需給のバランス/中国特有の競争原理/なぜ中国の企業は生産過剰に陥るのか
第3章 中国はなぜかくも「残酷」なのか:中国から見れば日本は残虐/中国の「極刑史」/人口圧力が生んだ残虐性/「冷漠社会」の実体/「一人っ子政策」が引き起こした事件/人命軽視①子供の誘拐問題/人命軽視②高速鉄道の衝突脱線事故/中央と地方の温度差/「保身」が「人権」をつぶす/“野味の”犠牲になる動物たち/中国=残酷ではない
第4章 環境汚染と危険食品「負の連鎖」:PM2・5にまつわる中国環境事情/PM2・5に対する政府の反応/中国の環境対策/政治と企業の癒着が環境問題を生む/汚染された大気の元とは?/中国の食品問題が起こった経緯/大企業が儲けるために起こした事件/正義が抹殺される中国社会/農村での衝撃的な光景/死よりも恐ろしい貧困/恵まれている人までも犯罪を起こす理由
第5章 「何をするか分からない国」の核心:たくましいが危険な中国人/負の側面から見た中国の怖さ/たくましいが危険な中国人/負の側面から観た中国の怖さ/外交テクニック/中国の対日戦略の変遷/外面的に攻めてくる外交力/冷静な目で中国の分析を/日本に対する中国の本音/中国の弱み
おわりに 日本のとるべき選択肢

日中関係において勇ましい発言をすることは簡単です。しかし、その発言の先に発生する責任を負うことは簡単ではありません。下手をすれば大きな裏切り行為にもなります。/2012年の尖閣諸島の国有化で、最初に口火を切った石原慎太郎東京都知事は「尖閣を東京が守る」と大々的に宣言してみせましたが、本当に守ることができたでしょうか。略。日本側が騒ぎを起こし挑発したことにより逆に相手に付け入る隙を与えてしまい、問題が起きる前より大幅に中国に押し込まれるという失態を演じてしまったのではないでしょうか。201ページ

・黄土高原に生まれた王朝が中原の覇者となり中華を称し、略、現在の中国に至るまでに大きくその版図を拡大したのは、自分たちが侵略したためではなく、逆に侵略されたことによるものなのです。略、周辺の民族に侵略され、その王朝が閉じたときには、それまで中華の外にあった民族が取り込まれてしまうという経過をたどってきたのです。/だから、豊臣秀吉の朝鮮出兵も、失敗してよかったと胸を撫で下ろす歴史学者がいるほどです。同じように日中戦争で日本が勝利していたとしたら、しばらくは日本による統治ができたかもしれませんが、時代が変わったときには、日本は確実に中国の「日本省」になっていたはずなのです。敗戦もこう考えれば悪いことばかりではないようにも思えます。213ページ   *異論が無いわけではないが、斬新で面白い考え方だ。

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