山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

米朝首脳会談復活に期待する

2018年05月26日 14時18分09秒 | Weblog
 トランプ大統領が24日(2018・5)、6月12日に予定されていた米朝首脳会談の中止を発表した。その理由として、北朝鮮があいついで約束を破ったことをあげた。黙認するといっていたのに5月14日からの米韓軍事演習「マックスサンダー」に「「挑発的な軍事的妨害」だと非難したこと、会談準備の会合に北朝鮮が現れなかったこと、核実験場の爆破に専門家を受け入れなかったことをあげた。加えて北の崔善姫外務次官が24日、「米国が我々の善意を侮辱し、非道にふるまい続ける場合、朝米首脳会談を再考する問題を最高指導者(金正恩氏)に提起する」「我々は米国に対話を哀願しない」「会談場で会うのか、核対核の対決場で会うのかは、すべて米国の決心にかかっている」との談話を発表したことが引き金を引いたようだ。トランプ、ポンペオ、ボルトン氏が協議し中止を即断した。
 崔次官の従来型の挑発的な物言いは現下の情勢にふさわしくないし、南北高官協議の中止、現地準備会議キャンセルも昔のスタイルを引きずったままだ。だが、黙認するといったとはいえ、米朝首脳会談直前に軍事演習をやるというのは、やはり挑発だ。アメリカは信頼関係が壊れたというが、このような直前の軍事演習を仕掛けておいて言う言葉かと思う。
 中止決定についても、会談前進のために訪米したムンジェイン大統領と会談した2日後の発表だ。仲介のために労をいとわなかった文大統領に失礼だろう。
 だが中止となった以上は、ここから再出発するしかない。トランプ大統領も配慮はしている。金正恩氏あての書簡でも「あなたが交渉と議論に敬意をもって時間を割いてくれたこと、また忍耐強さと労力に心から感謝する」「いつの日か、あなたに会えることをとても楽しみにしている。一方で、人質を解放してくれたことには謝意を示したい。」「会談をしようと思うなら、遠慮なく私に電話するか、手紙を書いてほしい」と述べている。
 北朝鮮のキム・ゲグァン第1外務次官が25日発表した談話では、「我々はトランプ大統領が過去のどの大統領も下せなかった勇断を下して首脳対面をもたらすために努力したことを内心高く評価してきた。一方的に会談の取り消しを発表したのは我々としては予想外のことであり、極めて遺憾に思わざるを得ない。」「我々は、いつでも、いかなる方式であれ対坐して問題を解決する用意があることを米国側に改めて明らかにする」と述べた。
 北朝鮮は軍事と経済の併進路線から、経済開発路線に舵を切り替えており、後戻りすることはない。具体的な核廃棄への手段ではもめることはあるだろうが、後戻りはないという基本をおさえてアメリカにも、韓国にも努力してもらいたい。韓国の康京和外相とポンペオ米国務長官が25日電話会談した。ポンペオ氏は「米国側は北朝鮮との対話を続ける明確な意思がある。今後、米朝間の対話を行う環境を整えていくために努力していきたい」と、康氏は「ようやく実現した対話の機会を生かしていくために、米国と今後もあらゆる努力を傾けていく」と語った(『朝日』25日夕刊)。
 首脳会談中止でもっともがっくり来ているのは韓国ムンジェイン大統領だろう。ここまで持ってくるのに長い道のりがあった。米朝両国に裏切られた思いがあるだろう。しかし落ち着いて考えれば、1年前はどうだったか。平和の朝鮮半島、ひいては北東アジアの平和体制という枠組みさえも議論にのぼるようになったのだ。考えられないほどの情勢の変化だ。
 トランプ大統領の実務協議後回しの即断路線のツケが回ってきたという見方もできる。本来なら外交官の長い実務協議が実って首脳会談へといくのが、最終首脳会談がまず設定されるという異例の枠組みとなった。限られた期間に収まりきらない重要問題があまりに多く、空中分解してしまったといえなくもない。できれば冷静な判断で、延期措置という形をとってもらえればいうことはなかったのだが。通常の外交交渉ならば首脳会談は最後にとなるが、問題の重さからも、幕あけのひとくくり目の、途中の、そして最終の首脳会談というように段階に沿って何度も首脳会談をもっていくのが実際的だと思う。最初の首脳会談に行くまでに、北が3人の人質を解放したこと、問題を指摘されながらも核実験場を爆破したこと、一方アメリカが北朝鮮の体制保証を表明したことは、首脳会談復活の土台がすでにできていることには違いない。
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