山上俊夫・日本と世界あちこち

大阪・日本・世界をきままに横断、食べもの・教育・文化・政治・歴史をふらふら渡りあるく・・・

集団的自衛権行使へ公明党がすすむ道

2014年05月19日 22時49分00秒 | Weblog
 安倍首相が自分と同じ意見の人物ばかりをあつめた私的な諮問機関の提言を、さも公的な正統性があるかのように装って、それを受けた「基本的方向性」を語り、公明党を引きずり込んで閣議決定へもっていこうとしている。
 公明党は、安倍首相が集団的自衛権にふみこむのは許せない、撤回すべきだとは言っていない。山口代表は、「首相が示した具体例においては、これまでの憲法の考え方で対応できる部分が相当あると考える」「従来の憲法解釈との論理的整合性がまったくとれない分野に踏み込むのであれば、憲法改正手続きをとるのが一つの道筋ではないか」とのべた(15日)。ことばを変えれば、屁理屈であれ従来の憲法解釈とつながる部分があれば容認するということを暗にしめしているのだ。
 安倍首相が示した在留邦人を輸送する米軍艦船の防護とPKO警護という2つの事例について、前者は個別的自衛権で対応、後者は「警察権の範囲であれば抵抗が少ない」と歩み寄りをみせている。抵抗が少ないのは創価学会のことだ。抵抗が少なければ賛成するのが本音だ。
 イラク戦争時03年12月20日、オランダ軍に守られた当時の公明党神崎代表が防弾チョッキをつけて3時間半サマワに滞在した。そして「サマワ市内は比較的安全だと感じた」と語った。これが創価学会を説き伏せ、04年1月早々から自衛隊をイラクに派兵する合図となった。こんども公明党山口氏らにとって、創価学会をどう納得させるかその手順、方法だけが問題となっているようにみえる。
 創価学会は17日、「集団的自衛権を限定的にせよ行使するという場合には、本来、憲法改正手続きを経るべきであると思っております」と広報室コメントをだした。安倍首相への抗議はなく控えめな声明だ。だが宗教団体としては、佛教の教えからして当然のことだ。問題は、この姿勢を貫き通せるかどうかだ。イラク戦争の時のように口をつぐむのか。憲法と対をなす基本法である教育基本法が2006年第1次安倍内閣の時に改悪された。創価学会名誉会長の池田大作氏が「教育基本法 見直すより大いに生かせ」という見解を『朝日新聞』01・5・23に発表していたが、公明党は教育基本法改悪で突っ走った。
 安倍・石破氏らは、公明党は最後は同調してくると踏んでいるにちがいない。集団的自衛権に反対を貫けば、連立離脱が当然でてくる。だが、山口氏は、「政策的な違いで離脱は到底考えられない」と明言している。離脱は到底考えられないのだ。これが絶対的な原則になっている。となると支持者をどうなだめ、ごまかすか、その道をさぐるということになる。
 自民幹事長石破氏は、18日のNHK討論会で、「自公の関係はやわなものじゃない」とのべ、PKOや有事法制、インド洋・イラクへの自衛隊派遣をあげて「最初は考え方がずいぶん違っても、真剣な議論を濃密にやって常に国家のために答えを出してきた」と自信を示した。安倍首相が持ち出した、朝鮮半島有事の際に、韓国から避難する日本人を運ぶ米軍艦護衛という事例は、兼原信克内閣官房副長官補が「『集団的自衛権行使に必要な事例を探せ』と言われたので、ひねり出した」と14日の公明党の勉強会でしゃべっていた(『朝日』16日4面)。つまり公明党も同調できる特殊な事例(米国民でなく日本人を優先して運ぶ、しかも攻撃の的になる軍艦で運ぶという非現実的な事例)を「ひねりだして」きたのだ。これに対し公明党は、併走している艦船ならば(数キロ離れて併走)日本への攻撃とみなした個別的自衛権でいけるというのだ。これはむちゃだ。安倍氏らがこれを持ち出したのは、集団的・個別的のどちらにもとれる境界事例として、公明党を引き込もうとしているのは見え見えだ。自民党は集団的だといい、公明党は個別的だといってお互いが認め合うような形で決着すれば、創価学会をごまかすことができる(自民党を説き伏せたといって)。PKOやNGOの活動に対して自衛隊が護衛するのも、公明党は警察権の範囲ならばとGOサインを出している。武器使用についても、武装集団相手ならば容認する方向だ。外国に出向いて行って、武器使用をするのは憲法9条2項で禁じられている。これを警察行為だと公明党はいいだしている。いつから警察行為ならば外国で武器をつかっていいとなったのか。
 公明党を丸め込めば、安倍首相はいっきに閣議決定をし、それにもとづいて、まず上記2例を法制化するだろう。9条破壊の瀬戸際にある。作家の半藤一利さんは「今が引き返せぬ地点」だという(『毎日新聞』19日夕刊)。そのとおりだ。日本国民の見識が問われる。
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