湘南発、六畳一間の自転車生活

自転車とともにある小さな日常

北アルプス大展望と秋の農村を巡る小さな旅

2010年10月03日 | MERLINチタン号
 ワニガメさんにロードでの日帰りツーリングにピッタリなフロントバッグとサドルバッグ、それからそれら専用のサポーターを5月頃つくって頂きました。それ以来、このバッグをつけたロードが似合うツーリングに行きたいとずっと思い続けていました。夏に秋葉街道を目指したのがその第一弾のつもりだったのですが、そのときは事情により最初の峠である杖突峠を上っただけでそこから引き返してきてしまいました。

 実は今回はそのときのリベンジとしてまた秋葉街道に出かけるつもりでした。ただ夏に読んだニャロメさんのブログで知った分杭峠大鹿村側の通行止めが未だ解除されていないこと、それから実は秋葉街道は一昨年のちょうど同じ時期に走っていること、さらに今回自分がイメージするツーリングよりは距離が長くハードなことが引っかかっていました。そんなあれこれと、天気予報では長野県の南よりも北のほうがすっきりと晴れそうだったことなどもあり、前日にようやく考えついたのがとくにランドナーなどの旧車派の人たちに好まれてきた小熊黒沢林道と嶺方峠、それから少し前に知って興味を持った旧大岡村を巡るコース。距離的にも100kmちょいとちょうど良いし、すべてにおいてまったくはじめて走るコースというのが自分にとってとても魅力的と思えました。

 ムーンライト信州で信濃大町駅に着いたのが5時11分。自転車組み立てたり、のんびりと暖かい缶コーヒーを飲みながらパンを食べたり、トイレに行ったりして、走り出したのが6時少し前。木崎湖畔から小熊黒沢林道に入るといきなりのきつい上りです。先日のターンパイク・ヒルクライム同様、だいたい10%くらいの上りが続きます。ただ朝の静かな林道をまわりの木々を見たり、鳥の声を聞きながらゆっくり上っているのでそんなにきつくありません。上るにつれて湖から湧き上がる朝もやが見えたり、北アルプスがちらちらと見え出したりします。ひとつ目のピークを越え、ふたつ目のピークを上ると、雑誌やブログでよく見る眼下に木崎湖を見下ろすポイントがありました。立ち上がり消えつつあるもや。それを薄く照らす朝の光。一応予備知識のあった風景ですが、こういった雰囲気のものはあまりなかったので思わず息をのんでしまいました。素晴らしい景色でした。
 ふたつ目のピークを下ったあとは、また上り。爺ヶ岳、鹿島槍がくっきりと近くに見え出します。素晴らしい景色の連続で上りも下りもなかなか前に進みません。時間帯のせいもあるのかもしれませんが、本当に素晴らしい林道でした。















 小熊黒沢林道の次は、これまた白馬岳の大展望が有名な嶺方峠へ。青木湖畔を走り、国道をなるべく避けながら、嶺方峠への道を上りはじめます。上りはじめはまたしても急勾配。湧き水を補給したりしながら、国道に合流すると途中からまたしても北アルプス・白馬連峰の姿がちらほら。基本背後なのですが、カーブなどでは自転車に乗りながらでもしっかりその姿を見ることができました。そして程なくして嶺方峠へ到着。今回は白馬から上ったわけですが、それでもこの景色に感動するのだから、鬼無里側から上ってきてトンネルを抜けてこの景色が目の前に広がったらきっとすごい感動なんだろうなと思いました。











 嶺方峠からは鬼無里方面へゆるい下り。ときおりあらわれる秋の農村の風景に気持ちが和みます。鬼無里からは旧大岡村まで県道をつないで“移動”の走りですが、ここで誤算がいくつか。想像以上に上りがきついのと、移動のためのコース設定だった割にはとても雰囲気が良かったことです。黄金色に実った稲、刈り取られて畑に干されている稲穂、小さな集落、棚田、要所要所であらわれるパノラマ的な風景。ずっと上り下りの連続、それも「えっ、ここで標高下げちゃうの?」という気持ちの凹む場所もいくつかあったりはしましたが、予想を裏切る情緒ある素晴らしいコースに思えました。























 信州新町から旧大岡村まではちょっとわかりにくい道。小さな集落への分岐がたくさんあるのだけれども、道幅が県道とほとんどかわらないのでどちらへ行けばいいのか迷う場所がいくつもありました。そしてぽつぽつとあらわれる小さな集落を越えて、唐突に旧大岡村へたどり着きました。目的の棚田があらわれ、すぐそこに小さな大岡温泉がありました。まだ旅は終わりではないのですが、着いた~と思った瞬間でした。









 大岡温泉に入るかはかなり迷いました。コースの終わりである聖高原駅まで約20km。どんなコースかわからないだけに、時間的に心配だったのです。でもこの時期だからこそそんなに湯冷めもしないだろうし、かといって温泉入ったあとひどく汗だくになることもないだろうと思い、この温泉に入るか入らないかでこのツーリングの充実感はかなり変わると考え、結局入っていくことにしました。棚田を見下ろすぬるめの気持ちの良い温泉につかり、温泉を出てからは小さな休憩所で手打ちの十割蕎麦を食べました。立ち寄って大正解の大岡温泉でした。

 ちなみにこの大岡の棚田、それから旧大岡村までに至る道の景色の開けた場所からも、空気さえ澄んでいれば北アルプスを眺めることができるようです。今回は残念ながら雲に隠れてしまいましたが、北アルプスをずっと見ることができたならこのコースの満足度はさらに上がることと思います。



 温泉を出たあとは終着点の聖高原駅を目指します。しかし、最後のダウンヒルに入る前に2回の上り返し。でも景色が素晴らしいので許せます。そして民俗学的な価値も高いらしい芦ノ尻の道祖神に立ち寄って、あとは快適なダウンヒルを楽しみ、会心?と思える小さな旅の充実感を味わいながら14時20分くらいに聖高原駅に到着しました。













 走行距離104km。上りの多い少しきつめのコースですが(→ルートラボ)、北アルプスが雪をかぶっている時期にまた走ってみたいと感じた充実の輪行ツーリングでした。こんなコースを走るきっかけになるバッグをつくってくれたワニガメさん、ありがとうございました。そしてバッグですが、使いやすくまた走りやすくて大変ありがたかったです!