知的成長戦略論-クールに生きる

かっこよく生きるためのメモ。
知的に成長し、どんな状況でも平静を保てる力を身につける。

プラットフォーム戦略から考える司法制度改革の大失敗3 ロースクールの崩壊

2016年09月20日 | スキルアップ
司法試験改革の失敗は、
 司法試験合格というブランドを棄損した
こと。

ブランドイメージとは、
 司法試験に合格すれば、
 弁護士や検察官、裁判官になれて、初任給500万円以上、
 その後も活躍次第では1000万円から2000万円の報酬が確保できる。
 場合によっては、さらに稼げる。

 社会的意義のある仕事ができて、ステータスも高い。
 
 だから、今、がんばって、いろいろなものを犠牲にして、
 予備校に通ってお金を使っても十分元が取れる
という「信頼」のこと。

それが、合格しても、
 就職先がなく、携帯弁護士とか、年収200万円などという低所得者がいる
という報道がされることで、
 一気にぶち壊された。

その結果、
 高いお金をかけて、
 若い貴重な時間を使って、
 ロースクールに行く意味がない
ということになり、
 結果、ロースクールの受験者数が大幅に減った。


合格者が数パーセントでも、
 合格すれば、輝かしい未来が保障されている
というブランド(信頼)があれば、
 受験者数は減らない。


そして、
 このブランド(信頼)の崩壊が、法曹界全体の停滞につながる
おそれがあるわけです。

優秀な学生が、
 司法試験に見切りをつけ、
 国家一種や大企業への就職に走る
ことで、
 ロースクールの学生の質がさらに悪くなる。

ロースクールで切磋琢磨する環境が生まれなくなると、
 成長できない。

アメリカでハーバードロースクールの人気が高いのは、
 周りの学生の質が高いこと。

その結果、レベルの高い卒業生、教授、一流のローファームの就職など、
 ハーバードブランド
が生まれ、さらに、ブランド価値は高くなる。


しかも、今後、日本で弁護士の数が劇的に減るということは考えられないので、
 待遇が良くなる見込みはない。
むしろ、
 これから数年でロースクール組がどんどん独立して、法律事務所が乱立し、
 弁護士報酬が下がっていく
ので、
 ロースクールに入って、法曹を目指そう
という人が増えるとも考えがたい。

結果、「法曹」というプラットフォーム自体が衰退する。


プラットフォーム戦略とは、
 場を提供することで、そこに人とお金を集め、
 顧客を囲い込む戦略
です。

サービスの例として、デパートや、ITUNEなどが例に上げられる。

プラットフォームに魅力がなくなると、
 人が去っていくので、プラットフォームが衰退する。

プラットフォームが衰退すると、
 人がさらに集まらなくなり、売り上げが減るので、衰退が止まらなくなる。

これは、
 閉店する商店街が増えていくことで、商店街が消滅する
のと仕組みは同じ。

反対に、流行っている商店が多ければ、
 商店街自体に人が来る
ので、
 別の店の売り上げも相乗効果として増える。

デパートなどもプラットフォームで、
 レストラン街に人気店が入る
ことで、
 来客が増える
ので、
 いかに人気のある店を集めるか
が重要となるわけです。

プラットフォーム(場)がいかに重要であるかは、よく分かると思います。
黒川温泉は、ある意味、ほかの温泉宿を助けることで、
 プラットフォーム全体の価値を高めることに成功し、相乗効果をもたらした例
です。

このプラットフォームは、
 司法試験などの試験も同じ。

優秀な学生を集め、プラットフォームを築くことで、
 優秀な弁護士、裁判官、検察官
が集まるようになる。

優秀な弁護士は社会的に意義のある仕事をしたり、
 稼ぐことができたり、
 イメージが良い
ので、
 あこがれの存在
として、
 受験者が増える
ことになる。

受験者が増えることで、優秀な合格者を選別できるようになる。

優秀な人財が、就職先の法律事務所や、裁判所、検察庁などで、
 次を担う人財として、組織の繁栄の礎となる。


しかし、急激に数を増やし過ぎたことで、
 供給過多

 質の低下
を招き、
 プラットフォーム自体の価値
を棄損してしまった。

法曹の質が下がると、社会的にダメージが大きいため、
 今後、おかしな判例や違法捜査、弁護士の横領などモラル事案がますます増えていく
と思います。

そうなると、さらに、法曹に対する憧れ(ブランドイメージ)がなくなる。
そこを目指して頑張ろうという優秀な若者も減っていく。

最終的には、
 魅力のない商店街と同じように、人が集まらなくなり、衰退していく
ということになるわけです。


ロースクールという細分化されたプラットフォームで見てみると、
事態はさらに、深刻です。

ロースクールの3分の1程度が廃校に追い込まれ、莫大な負債のみが残った。
そのため、
 資金難に陥っていく大学も増えていく
はず。

今は、ゼロ金利なので、あまり露呈していないですが、
 デリバティブで多額の負債を出しているところも多いので、
 金利の上昇に伴い、経営破たんする学校法人
も出てくると思います。

結局、司法制度改革は、
 だれにも恩恵を与えなかった
をいうことになりそうです。


本来なら合格できなかった人にとっては、合格できたので、よかったのかもしれませんが、
 資格の魅力自体はさらに低下していく
ので、
 さほど、恩恵はない
のではないかと思います。


ただ、すでに新たな動きが出ています。
旧司法試験の事実上の復活です。

この点は次回。


コメント
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