知的成長戦略論-クールに生きる

かっこよく生きるためのメモ。
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プラットフォーム戦略から考える司法制度改革の大失敗1 改革の経緯(独断と偏見含む)

2016年09月18日 | スキルアップ
司法試験改革の大失敗ぶりが明白なものとなっています。

「創立当初の人気から一転」
http://benesse.jp/kyouiku/201606/20160620-1.html
出典:ベネッセ

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/012/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/05/20/1370787_03.pdf
中教審・法科大学院特別委員会


2006年の司法試験から、従来の司法試験とロースクール出身者による新司法試験との併用がスタートしたので、
 10年近く経って、この制度の問題点が破たん寸前まで大きくなってきている
ということです。

かわいそうなのは、
 制度に翻弄された受験生
と、
 能力が低い弁護士を受け入れさせられ、競争激化に巻き込まれた弁護士
と、
 能力が低いことが分からず依頼し、普通の弁護士だったらもっと良い解決ができたのに、
 そのことすら気が付かない依頼人
だと思います。

2005年から数年間は、旧司法試験と新司法試験が併用されていたので、
 合格者が1500人から一気に2200人へ1.5倍
となり、さまざまな弊害が出てきているわけです。


※ここからは憶測も交えたものなので、個人的なつぶやき(推理もの)として読んでもらえばよいと思います。


2000年ころの司法試験では、平均合格者の高齢化が問題となっていました。

裁判官や検察官は、他の省庁と同じように、できれば大卒の若手を採用して、
 自分で育てていきたい
という思惑がありました。

ただ、司法試験は合格率2~3%の難しい試験で、
 受験する人たちもそれなりの大学で、優秀な人が多い。

そうなってくると、
 平均年齢はどんどん上がっていく。
 苦節10年は当たり前。

司法試験は、特別な試験として、そもそも受験しないという人が増えてしまい、
 人気がなくなった。

受からないリスクが高い司法試験よりも、
 国家一種や、大企業の方が魅力的。
そうなると、司法試験受験生がどんどん高齢化していってしまう。

そこで、
 当初は、単に知識を問う問題ではなく、
 パズル的な要素を加えたり(知識だけでは解けない)、
 知識の多い人が引っ掛かるようなトラップを問題に用意したり、
 心理学を駆使して、難しい問題を始めにおいて、時間不足に陥らせて、
 ベテラン受験生を落とすような工夫をした。

これで、頭の柔らかい若手が受かりやすくなったものの、
 試験問題によって変動するため、もっと確実な方法を取りたい
というわけで、
 受験3年目までの受験生の合格枠(丙案)
を用意することにした。


これで、若手(受験3年目まで)が確実に一定数合格するようになった。

(こういう特別枠は、アファーマティブアクションといって、
被差別者に対する差別是正措置のために設けられることがあります。
逆差別という問題を抱えている。
アメリカのアフリカ系アメリカ人の特別枠が問題となった事例 バッキ―訴訟。

ただ、受験回数で合格者制限する合理的な理由は見出しにくいので、
丙案が原因で不合格となった受験生が裁判をしていたら、
14条違反を理由に違憲無効となった可能性もないとはいえない。)


その他、破産法、労働法、少年法、国際私法といった試験科目を選択科目を廃止して、
 憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法
に統一したりと、いろいろな手を打った。
これにより、破産法などで選択科目で高得点をマークしていたベテラン受験生は
民事訴訟法や刑事訴訟法を一から学びなおすことになった。

ここまで露骨に優秀な若手合格者を確保したかった理由は、
 M&A案件などがさかんになり、
 大手渉外事務所が数十人規模で採用を拡大するようになっていたこと。
 優秀な若手合格者を年収1500万円以上の好条件で持って行かれると、
 裁判所や検察官の初任給では太刀打ちできないという危機感があった。

 ちなみに、現在でも、優秀な若手合格者を巡っては、裁判官、検察官、大手ローファームで
 壮絶なリクルート合戦が繰り広げられている。


さらに、
 優秀な大学生に、丙案枠があるから、合格しやすくなったよ
とアピールして、
 受験生を増やそうと考えたこと。

現に、平成5年には2万人に受験者数が落ち込んでいたものの、
 平成8年に導入された結果、平成8年に25000人、
 平成10年に30000人、平成15年に50000人と
 ぐんぐん受験者数が増えていった。

この受験者数の増加分は、ほぼ大学3年生、4年生、卒業数年の20代前半。


そのため、平成11年に合格者を800人から1000人に増やしても、
 合格率は2から3%を保つことができ、質を保ちつつ、若手も合格者も確保できた
わけです。


しかし、丙案導入により、別も問題が浮かび上がってきた。
それが、司法試験予備校の存在。

大学生が、司法試験に合格するため、司法試験予備校を利用し、
 受験対策を徹底的に行い、効率よく勉強するようになった。

皮肉なことに、受験回数が少なくても合格しやすいように、試験の傾向を変えたため、
 予備校の対策が効果的にヒットする
ことになったため。

ラーメン学校がスープを数値化して教えるのと同じように、
 職人の世界を、スクールで効果的に教えるのと同じ。

司法試験も、若手を受からせやすくするように変えたことで、
 予備校で対応できるような試験に代わっていた
ということ。

現に、若手合格者は、ほとんど、
どこかの予備校(LEC、伊藤塾、早稲田セミナー、辰巳)の
授業やテキストを利用していた。

大学は、司法試験の合格のために授業をするわけではないので、
 合格からすると無駄なこと(実務や視野を広げるという意味では有用であることも多い)
を教えているので、
 司法試験受験生は、大学に行かず予備校の自習室に通い、猛勉強をするようになる。

ちなみに、この猛勉強というのは、
 大学3年で一発で受かる人は、
 大学1年からほとんど休むことなく、朝10時から夜9時まで
 2年間徹底的に理解し、覚えまくるというレベル。
 どの自習室にも、こういう猛者がかなりいた。 

こうなると、大学(法学部)の意義が問われてしまう。

そこで、
 大学後に、ロースクールを2から3年行かせて、実務的な勉強をさせよう
という方向に向かう。

ロースクールでは、
 裁判官や検察官の退官者、弁護士なども講師や教授に迎えよう。
 実務的な視点を教えることができるし、再就職先の確保にもつながるぞ。

 あの忌々しい司法試験予備校を叩き潰すこともできるはず。


こうして、ロースクール計画は加速する。

しかし、大学・ロースクールは文科省の管轄。
司法試験は法務省の管轄。

縦割り行政の弊害から、思惑が外れていく。


続きは次回。
コメント
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