【ヤマザキナビスコカップ 札幌 vs 鹿島】レポート:スコアこそ1-2ながらも、シュート数は1-35。鹿島がグループ首位を守った試合は、あらためてサッカーの難しさを思い知らされる内容だった(12.04.19)
4月18日(水) 2012 ヤマザキナビスコカップ
札幌 1 - 2 鹿島 (19:03/札幌ド/6,877人)
得点者:16' 榊翔太(札幌)、85' ジュニーニョ(鹿島)、90'+4 岡本英也(鹿島)
「両チームともに大幅なメンバー変更があって、連係というところでは難しい試合内容になるのではないかという部分を皆さんは予想されたと思います」。試合後の会見で鹿島のジョルジ―ニョ監督がそう切り出したように、直近のリーグ戦からメンバーを入れ替えたチーム同士の対戦とあって、立ち上がりは互いに選手間の距離が広がりパスがつながらず、10分過ぎまでは長いボールを蹴り合う展開となった。
その後はどちらも距離感や間合いを取り戻し、札幌は守備的MF宮澤裕樹が最終ラインに下がってビルドアップの中心を担ったり、鹿島は青木剛が中盤の底からスムーズにパスを散らし、アレックス、西大伍という左右サイドバックらが徐々に高いポジションを取れるようになっていく。どちらも狙いを持った攻撃ができるようになってきた。
そんななかで先制点を奪ったのはホームの札幌だった。16分、右サイドを攻め上がった日高拓磨が蹴ったクロスを相手ペナルティエリア内で榊翔太がコントロール。うまく左足でシュートを放ち、ゴールネットを揺らしてみせたのだ。
0-0のスコアというノーマルなシチュエーションからホームチームが先制。パワーバランスに変化が生まれ、ここからはリードした札幌がどのようにゲームをコントロールしていくのか、ビハインドを追う鹿島がどこでリスクを冒して前に出るのか。その後は、そうした機微を楽しむ展開になっていくはずだった。
しかし、ここで札幌にアクシデントが重なる。先制点を挙げた榊が36分に負傷退場し、39分にはキリノがこの日2度目の警告を受けて退場となってしまう。榊の代わりには古田寛幸が投入されたが、キリノの退場によって札幌は残り時間を10人でプレーしなければならなくなった。キリノの2度目の警告は相手ボックス内でのシミュレーションと判断されてのものと思われるが、試合後に石崎信弘監督が「あのプレーが退場になるかPKになるかですごく大きな差になった」と振り返ったように、その後の主導権争いが興味深くなるはずだった試合は、数的優位に立つ鹿島が一方的に攻め込む大味な展開となっていく。
後半に入ると鹿島はドゥトラ、遠藤康、佐々木竜太と攻撃的な選手を積極投入し、1人少ない相手を攻め込んでいく。札幌も岡本賢明を前方に置き、残りの選手で必死にブロックを形成して応対するも、猛烈なシュートの雨に晒されてしまう。それでも何とか体を張った守備でシュートを跳ね返し続けたのだが、85分に自陣ペナルティエリアでハンドをしてしまい、このPKをジュニーニョに決められて同点に。そしてアディショナルタイムには左CKから岡本英也に頭で押し込まれ、逆転を喫しそのまま敗戦となった。
言うまでもなく、札幌にとっては退場者を出したことが痛かった。最終ラインの選手ではなく前線の選手を失ったのだから、一般的に考えれば、やりようによっては何とかごまかしながら時計の針を進めることもできたはず。だが、後半だけで26本ものシュートを浴びたことを考えると、昇格チームの数的不利というのは思った以上に負担が大きかったようだ。退場者を出す前に交代枠を1つ使ってしまっていたことも、ダメージを増長させたことだろう。
終わってみれば、スコアは1-2ながらもシュート数は札幌がわずかに1本で鹿島が35本。ここまでシュート数の差がつくゲームもなかなかないだろう。ある意味では、札幌が驚異的な粘りを見せていたと言えるかもしれない。
札幌が先制点を奪った時点では、その後はどのような攻防が繰り広げられるのか注目された。だが、結果としては「攻防」ではなく鹿島が一方的に攻めて、札幌が一方的に守るという偏った展開へと移り変わってしまった。あらためて、退場者が出ることでその後の展開というのは予想がつかず、時にはドラスティックに内容が変化してしまうというサッカーの難しさを、モロに思い知らされる試合だった。
以上
2012.04.19 Reported by 斉藤宏則
またもジャッジで後味の悪い試合になってしまった。
とはいえ、キリノの倒れ方が微妙で、この判定は難しいところであったように思える。
また、このようなジャッジはこれまでに本山が幾度となく取られておる。
逆に、先日のFC東京戦に於いては興梠がPA内で明らかにファールを受けたが堪えて倒れず、ボールをキープしたが故にPKを得られなかったというケースもある。
そして、昨日の試合に於いては、キリノはシミュレーションで退場になる以前に、山村への肘打ちを行っておりこの時点で退場させるジャッジを下すべきであった。
さすれば、後に遺恨を残すような判定は行われずに済んだと言えよう。
しかしながら、それは後から申す戯れ言に過ぎぬ。
35本ものシュートを放ち、札幌のシュートを1本に抑え込んだ鹿島が攻撃力で優り、逆転勝利を得た。
これだけが真実であり、歴史に残るのである。
不満に思うであろう札幌のためにも、鹿島がナビスコ杯を連覇し、勝者に値したということを証明すべきと感じる。
カップ・ウイナーの称号を今季も戴こうではないか。