【J1 注目選手スペシャルインタビュー】Vol.18:西大伍選手(鹿島)「ぜんぜん満足はしていない。そういう自分がいることに安心する」(11.11.22)
大きな期待を背に今季から鹿島へ移籍してきた西大伍。攻撃的サイドバックを両翼に置くことが特長のチームにとっては待望の人材と言えた。キャンプで負傷し出遅れたところはあったが、シーズンが進むにつれて監督の信頼を獲得。右サイドバックの定位置を得るとチームも上り調子に転じる。その活躍は、日本代表監督であるザッケローニの目にも止まり、目標としていたA代表に初選出されるなど、順調なシーズンを送るかと思えた。しかし、選手層の厚い鹿島においては、常に良いパフォーマンスを出し続けなければポジションは確約されない。リーグ戦半ばにはポジションを失い、苦悩の日々を送ることとなった。しかし、ここに来て再びチャンスを得るようになってきた。これまでの戦いぶりを振り返ると同時に、清水とのリーグ戦ホーム最終戦への意気込みを聞いた。
「今年はいろいろ考えさせられることが多かった」
Q:今季、ここまでをふり返ってどういう印象や感想をお持ちですか?
「Jリーグでもタイトルを獲るという目標を掲げて来たので、それについては良いとは言えないですが、悪いことばかりではなかったです。チームとしてはタイトルが獲れたし、今後のためになる1年だったと思います」
Q:今年は移籍1年目でしたがどうでしたか?
「すぐにフィットしたという印象はないですし、今年はいろいろ考えさせられることが多かったと思います。新潟のときは、自分が試合に出るようになって、うまい具合にチームも勝つようになっていった。そういうタイミングの良さがあったと思います。チームに慣れるには、そういうタイミングの良さも要素のひとつだと思うので、新潟は比較的すんなり行けたのかなと思います。ただ、今年はそうでなかった分、もっと良くなるためにはどうすれば良いのか、ポジショニングや守備だけでなく、いろいろなことについて考えることが多くなったと思います」
Q:鹿島に移籍してきて感じた良さとは?
「やっぱりレベルが高いですね。選手それぞれの技術が高いので、プレー自体は自分でもうまくなったと思います」
Q:残念ながら、控えにまわることも多い1年でしたね。
「最終的には、監督から信頼されてずっと出られるようになるかどうか、ですよね。そうなれば自分にも気持ちの余裕が生まれるし、そこに至るまでが難しいと思います。特に鹿島は良い選手がいっぱいいるチームですから」
Q:このチームは日々の練習時間もそこまで長くはないと思うので、チームのやり方にフィットしたり、アピールするのも大変だったと思いますが?
「オリヴェイラ監督はアピールが必要なタイプではないと思っています。それぞれの選手の力を理解していて、勝つために誰を使うのかが一番良いかを考えていく監督だと思います。僕の能力については、僕自身もすべてを把握しているわけではないし、監督もすべてわかっているわけではないと思う。ただ試合に出られないとしてもそこが問題ではないと思ってます」
Q:札幌に在籍していたときも、試合に出られない時間を過ごしていたと思います。そのときと比べるとどうですか?
「そのときは実績もなかったし、自分のプレーにも今ほどの自信もありませんでした。だから、『出られなくて当たり前だろ』くらいの気持ちだったかもしれません。いまは、試合に出られないことに関して、やることはわかっているというか、『なんとかなる』という気持ちでやっています」
Q:今は納得いくプレーを出せれば大丈夫、ということですか?
「そうですね。今年は自分の力を出せたとしても50%ぐらいだったと思います。もし、試合に出続けることができれば、新潟のときくらいのプレーはできたと思うけど、信頼を得るまでに至りませんでした。それに、(新潟では)チーム全体だったり、他の選手とのコンビネーションだったり、僕とマルシオの関係だったりがうまくいった部分もありました。もちろん鹿島でもそこを最低ラインとするくらいできるとは思っています」
「僕は40歳までやります!できるところまでやります!」
Q:個人としてうまくいかない部分があったとはいえ、目標にしていた日本代表にも選ばれました。
「ぜんぜん満足はしていません。そういう自分がいることが安心というか、これからも上に行けるモチベーションになっています。まだまだ成長できると思いますし。とりあえずは良かったと思いますが、でもまだまだですね」
Q:代表に呼ばれない時期が少し続いていることに関しては?
「いま呼ばれても自分のタイミングではないかなと思います。そこはあまり気にしていません。今後しっかり成長していけば呼ばれるだろうし、それは自分次第ですよね」
Q:サッカーは選手寿命が短い職業だと思うのですが、呼ばれないことに焦りは感じない?
「僕は40歳までやりますよ!できるところまでやります。体が動くまでやりたいし、やれると思っています。もともと身体能力ばかりが売りの選手ではないので。(その頃には)たぶん、サイドバックはやっていないと思いますが(笑)」
Q:今度のホーム最終戦は清水との対戦となります。前回は0-0の引き分けに終わっていますがどんな印象をお持ちですか?
「あの試合は点が取れなかったんですよね。そんなに悪くはなかった試合だったと思います。ただ、ゴールが入るかどうかは、運みたいなものもあるので、そのときはそういう流れだったんだと思います。もちろん練習をして精度は高めていかないといけないのですが、そういう流れのときがどうしてもあるんですよね」
Q:逆にその少しあとからチームは5連勝するようになります。そのときは真っ先に「ここから勝つよ」と仰っていたのが印象的でした。
「あのときは全員の気持ちがひとつになった手応えがありましたね。そういう雰囲気を感じました」
Q:シーズンとしても残りはわずかです。どんなプレーをしたいですか?
「やっぱり楽しんでプレーしたいですね。相手を抜くときも楽しいけれど、ボールをいっぱい触っているときがやっぱり楽しい。練習試合で、モトさん(本山雅志)とボール回しをやっているときはすごいおもしろいですね。ロングボールが多いこともあってか、鹿島に来てからボールを触る回数が少なくなっているのは事実だと思います。ボールをたくさん触ってリズムを掴めれば、最後の決定的な場面にも入っていけるので、ゲームをつくるところでも触れた方がやりやすいですね」
Q:残りわずかとなったシーズンへの抱負をお願いします。
「やっぱりACLに出たい、というのと、リーグ戦は最後の試合もしっかり勝って、あとからふり返って良いシーズンだったと言えるようにしたいですね。終わりよければ、という言葉もあるので、来シーズンのためにも気持ちよく終わりたいと思います」
★西大伍選手 Meets FOOTBALL ALLSTAR'S
Q:西選手はゲームはされますか?
「あんまりやらないですね。移動中とかもゲームはやりません。本を読むことが多いかな。あんまりフィクションとかは好きじゃないから、経済の本とか。意外ですか?(笑)」
Q:「FOOTBALL ALLSTAR'S」のご自身のカードを見て、感想をいただければと思います。
「まだまだ低いですよね。他の選手を見たらそうでもないかもしれないですけど、もっと高くしてもらえるようにがんばります!」
Q:それではオリジナルフォーメーションを作っていただきたいのですが。
「うわー、これは他の選手から文句が出そう(笑)。キーパーはソガさん。オレは中盤で出たいしな…。(岩政)大樹さん怪我してるし3バックにしようかな。でも、そうすると後ろが足りなくなっちゃうね。やっぱりオレがサイドバックをやるしかないかぁ、う~ん…。でも、これでいこう!」
Q:このフォーメーションの意図は?
「楽しそうでしょ。中盤は流動的にポジションを入れ替える感じですね。トップ下はモトさん。かなり攻撃的だけど、守備は後ろの3人にがんばってもらいましょう。でも、イバさん(新井場徹)はあがってくるから、そしたら2人にがんばってもらおう。で、イバさんが上がったときは、オレが中に入っていく、と。いやー、これは相手はボールを取れないんじゃない?(笑)」
なるべくボールを触りたいと話していた西選手らしく、かなり攻撃的な布陣が完成。オリジナルフォーメーションはまさかの3バックとなりました。普段はほとんどゲームをしないと言いながらも、選手のカードをチェックする目は真剣そのもの。「このカード、欲しいなぁ」と名残惜しそうに帰っていきました。
取材日:11月15日
インタビュアー:田中滋
[ J1 注目選手スペシャルインタビュー ]西大伍選手(鹿島)
鹿島アントラーズの西大伍選手に、26日に迎える今季ホーム最終戦である清水との一戦への意気込み、そして今季ここまでの戦いについてインタビューしました。
今季、鹿島に加入しいろいろと考えさせられたと語る西である。
右サイドバックのレギュラーになるべく移籍してきたが、安定して起用されたとは言いがたい。
それは、西本人が痛感しておる様子。
西は、まだ若きプレイヤーであり、完成された選手ではない。
鹿島で経験を積み、日本を代表する選手として脱皮するのだ。
40歳である不惑まで現役を続けられる偉大なるプレイヤーとなるのだ。
期待しておる。