会計スキル・USCPA

会計はビジネスの共通語。一緒に勉強しましょ。

チャールスリバーラボラトリー 中国企業買収を断念

2010-08-01 23:42:17 | ハイテク


中国企業に買われたり、買ったりするニュースが最近多いんですが、4月にチャールスリバーラボラトリー社が中国のライバル企業を買収する、と発表していたんですね。




コストの安い中国にR&Dをアウトソースする。

日本法人からも発表されてます。

チャールス・リバー・ラボラトリーズのWuXi AppTec社買収について


ところが、取りやめになった、そうなんで。

Lessons from End of the Charles River Deal

In the face of insurmountable shareholder opposition, Charles River Laboratories International has agreed to terminate its $1.6 billion proposed takeover of WuXi PharmaTech, a Chinese drug research and development outsourcing company.

16憶ドルの買収案件だったんですが、株主の反対で中止することになった。

それにしてもこの買収は金額がでかいですね。売上が12憶ドル程度しかないんで。

チャールスリバーPL


Charles River will pay WuXi a $30 million breakup for the privilege, $5 million more than was called for under the merger agreement if the American company’s shareholders voted down the transaction. Still, this expense is probably worth it, avoiding what would have been an uncomfortable shareholder meeting.

3千万ドルを違約金として支払う。それでも不愉快な株主総会を避けられるのだから払う価値かある。


Charles River also has had a poor history of executing deals. In 2004, it acquired the Inveresk Research Group for about $1.4 billion. This deal did not perform well, with Charles River writing off $700 million of the purchase price in 2008.

チャールスリバーは過去にも買収でひどい実績があって、04年に14憶ドルで買収したことがあるがうまくゆかず08年に7憶ドルを償却した。

さっきのPLにNon Recurringコストとして700上がってますな。おかげでretained earningsがマイナスに落ちてます。

BS

Charles River left itself little room for error. One can slice and dice numbers any which way, but the company would have paid 16 times WuXi’s projected earnings before interest, tax, depreciation and amortization for 2011, a forecast already criticized as rosy. As the hedge fund Jana Partners pointed out in a letter to Charles River’s chief executive, the projections that the company used were below WuXi’s own 2010 projections. Jana also pointed out that Charles River was trading at eight times its own projected Ebitda on the day before its announcement.


株主のヘッジファンドに買収金額も高すぎる、と指摘されてます。買収する会社の収益見積もりが高すぎて買収金額が高くなってしまっている(この記事は逆になってるみたいですな)。

中国の会社は業績がダウンしてきていて・・・とリンク先のレターには出てますな。

こうしたレターまで公開されてて、開示の徹底ぶりはスゴイです。

景気がよかった時代なら、なんでも通しだったかもしれませんが、今は厳しいんで、てハナシです。

今だから言える日本政治のタブー 田原総一郎

2010-08-01 11:03:45 | 政治

日曜日10時からやってたテレ朝のサンデープロジェクトが終わったんですが、なんと21年も続いていたんだそうで。まあ、お化け番組だったわけですな。本書によれば、始まったころはワイドショーの位置づけで、田原さんはその中の一部、ワンコーナーを受け持っていただけ。その後、湾岸戦争をきっかけに、政治討論番組に方向性が変わって行ったんだそうで。最初から田原さんの個人番組、みたいな感じではなかった。


今だから言える日本政治の「タブー」
田原 総一朗
扶桑社


本書は、この21年間の番組製作や、出演者との裏話なんかを番組の歴史を追いながら説明して行ってるんですが、出演者が首相だろうが、誰だろうが、痛いところをズバッと切り込んで聞くやり方、当事者をタイムリーに両サイド呼びつけるやり方、と言うのはこの番組の功績だ主張しています。だから、当事者が厳しい局面にあってもこの番組にだけは、キーバーソンが出演してくれた。

だんだん、政界の有力者にインタビューを重ねてゆくうちに、『権力はたたけばたたくほど新しい発想、政策が出てくるものだと考えていたのだが、新しい発想、政策を作りだす力量、能力が欠如していることが分かってきた』そうで、実は権力が確たる政策を持っていないのだと気付いたそうなんでして。

これはゆゆしき問題ですな。

竹中平蔵さんも指摘してますが、政策談義のレベルが低すぎて、各省の利益優先で理屈はとってつけを後からやっているって感じでってことでしたね。

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌
竹中 平蔵
日本経済新聞社



すこし驚いたのは、この本で政策上の議論になったことがいくつも紹介されていますが、どうにもシンプルで、ええっ、というような基本的なことにが大問題にされていること。成長率より金利の方が高い、ということを前提に成長率を低く見積もって増税論を展開しようとする財務省官僚サイドと、そんな前提は事実に反すると増税論に慎重な竹中さん。政策の専門家の間で、こんなことさえ議論が尽くされていない中でテキトーな前提を置いて、増税だ、減税だ、とやられているわけですな。役所が縦割りで、自分の立場に都合の良い理屈だけを取って来てテキトーな議論をでっちあげるのだ、とまでは竹中さんはおっしゃっておられませんが、そう読めます。議論の公正さを確保するためにも、特定の行政的立場でないトータルな国民の利益,という観点で政策は議論していただきたいものです。




で、なぜ番組が突然終わったのか、についてはよくわからない、としています。テレ朝の社長から食事に誘われて、来年で終わりだと告げられたが理由は教えてくれなかった。

ただ、コンプライアンスが最近うるさく言われるようになったが、無難にことを運ぶことと受け取られて、サンプロも面倒視されるようになったのかも知れない、と田原さんは推測しています。

まあ、テレビ局も予算の縮小が必要だったり、いろんな事情があるに違いないですがね。スポンサーもいつの間にかパチンコメーカーに代わってます。

さて、本書の本筋とは違うハナシですが、前半で、日本の右傾化についての説明があって、この右傾化が始まったのが、94年の北朝鮮の核疑惑で、96年台湾李登輝総統選出で米中対立したあたりにかけて日本の世論が大きく変わったと書かれています。


これ、丁度、米国の日本に対する政策転換が行われた時期に重なるんで。

普天間は韓国へ? ジョセフ・ナイ


私が1995年になんたら委員会かなんかのチェアマンだった時に、中国の勃興にどう対処するか考えた。中国は閉じ込めるんでも、やっつけるんでもなく、連れ出して世界に組み込んでいかないといけない。でも、どうなるかわからない。で、そのヘッジとして日本との関係強化を打ち出した。中国は日米同盟を前提に世界とお付き合いをしないといけないという環境を作るべきだと。

東アジアは、日本、米国、中国の3つのパワー、3極体制が望ましい。1極より、2極より、3極が良いのだ。

戦術的には、中国が非協力的なら米国も非協力的に対応することで構わない。台湾に武器を売ったりしたのも、戦術的に正しいことだった。中国が協力的に出てくれば、こっちも協力的に出ていって長期の戦略的には中国を世界の中に組み込まなければならない。

孫崎さんがインタビューの最初の方で、『細川政権ができた頃に、これからの日本外交は世界の世論を第一の基礎にして、第二を日米安保だ』、という文書を誰かが出そうとしたら、それがつぶされてしまって、そのうちに、危機感を強めた米国が、ナイ教授のなんとか文書が出てきた。それ以降、日本は米国の言いなりで、独自外交が一切できなくなった、みたいなコトをおっしゃってますが、そのナイ教授のなんとかというのが、ナイ先生ご自身が1995年にやったなんとか委員会かなんかのことなんでしょうな。孫崎さんは触れてませんが、米国が日本との関係強化(あるいは統制強化か)に動いたのは中国が背景にあったってことで。



これを米国の日本の世論誘導があったからだ、とみるインボー説の見方もあるでしょうし、素直に東アジアの不穏な動きに素直に反映したものだとみることもできるでしょうな。