久木留 毅/講談社ブルーバックス
この本も大変面白かった。盛りだくさんで、どこからコメントしてよいか分からないくらい、イイことが沢山書いてあるのであるが、一番グッと来たことを書くとすると、「アスリートの減量を真似してはいけない」ということだな。
私は計量のあるスポーツをやったことがないが、計量のあるスポーツのための減量は短期的減量であり、主として水分量を制限する方法で行われるため、一般の人が安易にやると脱水になってしまうのだ。
考えさせられたのは、オリンピックや世界選手権で勝ち続けた吉田沙保里選手や伊調馨選手が、ほとんど減量不要であったこと。減量に苦しむことが、競技に対する本来の練習効率を下げている可能性があるよね。特にいままであった階級が無くなることによって減量を強いられるようになった選手は不運という他はない。
私は知らなかったのだが、スキーのジャンプ競技でも計量があるという。こっちは逆に軽すぎると短いスキー板を履かねばならなくなるため、スキー板が長い方が飛距離が出るジャンプ競技においては、減量は必ずしも是ではないのだな。つまり過度な減量を防止するためのルールなのだ。
最終章のコーチングの話は、スポーツに限らず、ビジネスや音楽にも応用できる話だなと思って読んだ。日本のチームはとかくミスを恐れるが、オランダのトップコーチは、ミスや失敗を恐れずそこから学ぶように指導したとのこと。ミスをしたら拍手をし、それを経てできなかったことが出来るようになったらさらに拍手をするという風に。以前「奇跡のレッスン」で見たハピエル・フェルナンデスさんの指導にもそんなところがあったな。
尚、最近スケートボートでは世界トップ10に4名の10代女子の日本人アスリートがいるそうだが、彼女たちの多くはコーチがいないそうだ。自分のパフォーマンスをスマホで録り、振り返りを行って技術向上に努めているとか。こういう自分で考え、より質の高い行動ができる知性と品格を兼ね備えたアスリート「インテリジェント・アスリート」を育成することも課題になっているようだ。
う~ん、私もレッスンを録画・録音するということをやっているが、その録画・録音を視聴するのにもそれなりの時間がかかるのであって、なかなか自分一人で振り返るのは難しいぞ。自分でできるのは「気づき」までで、・・その「気づき」が大事であることは言うまでもないが・・・解決策となると、やはり師匠の指導がないと、私自身はやっていけないなぁ。悩んでいたことが師匠の一言で解決することもあるし。ま、一流アスリートと私じゃ比較の対象にならないけど。
他、体操競技では、昔、ウルトラCなんて言ってたけど、今はI(女子はJ)まで難度があるんだね。
ウルトラJ・・なんかしまりがないけど。
ちなみに演技の出来栄えを競い合う採点系競技である体操にも、自動採点システムが開発され、2019世界選手権で補助的に活用し、延期になってしまった2020年東京オリンピックから一部導入する予定だったそうだ。ま、採点するのはアクロバット系の運動が中心のようだけど、時代は進んでいるねぇ。