ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「ドン・ジョヴァンニ」

2009-04-14 15:40:34 | オペラ
 4月8日、サントリーホールでオペラ「ドン・ジョヴァンニ」を観た(演出:ガブリエーレ・ラヴィア)。

 サントリーホールが「ホール・オペラ」と称して面白いことを始めた。オケピットがないのを逆手に取って、舞台上にオケを上げてしまい、その目の前で歌手たちに歌わせ、芝居をさせたのだ。

 まず目に飛び込んでくるのは宙に浮く真紅の緞帳。

 オケが客席に背を向けて座り、指揮のニコラ・ルイゾッティはこちらを向いている。お陰で彼の生き生きした指揮ぶりと、変化に富んだハイテンションな表情をつぶさに見ることができた。彼がフォルテピアノを弾き振りしたが、これがまたうまい。時々自由にアドリブを入れて遊んでみせる。突然モーツアルトのピアノ協奏曲第23番第2楽章冒頭を弾き始めたのには驚いた。すると騎士長の石像が大きな十字架と共に舞台下からゆっくりと上がってきたのだった。こんなことしてもいいのか!?と頭の固い私には衝撃だった。たぶんこの辺までがぎりぎりOKだろう。
 
 歌手たちはみな素晴らしい。特にレポレッロ役のマルコ・ヴィンコ、そしてドンナ・アンナ役のセレーナ・ファルノッキア。

 字幕の日本語が上質(字幕翻訳:田口道子)。ツェルリーナのセリフ「だんなさんと?」とかマゼットの「メンツ丸つぶれだよ」とか、実に的確で分かり易い。

 演出(ガブリエーレ・ラヴィア)が素晴らしい。躍動感溢れる舞台だ。

 照明(喜多村貴)もドラマチックで素晴らしい。まるで映画を見ているような、奥行きのある陰影に富んだ舞台がそこに醸成された。

 衣裳は変。村人たちは黒服に赤色などが入った格好で、とても村の結婚式に集まった人々には見えない。女たちは仮装パーティの客のようだし、男たちはまるでマフィアだ。ツェルリーナは白いドレスの下にしましまのソックス、しかも左右長さが違うのを履いているし、ドンナ・エルヴィーラは恋人を追って旅する貴婦人というより私立探偵のようだ。でもツッコミドコロ満載なのもそれはそれで楽しい。

 それにしても、アリアが終わるたびに拍手が起きるのは何とかならんもんかのう。その都度物語の流れが途切れるではないか。歌手もオケも指揮者もみんな我慢して、拍手が終わるのをじっと待っているのが分からんのか。
 どうしても感動を表わしたいのなら、カーテンコールで歌手が一人ずつ出てくるのだからその時好きなだけ拍手するなり叫ぶなりすればよろしい。

 2年前メトロポリタン歌劇場が来日してこの演目をやった時は、上野の客の質がなぜか最悪で(席も悪かったが)、あまり楽しめなかった。アンナ・ネトレプコは評判通りよかったが。
 しかしこの夜は、久々に至福の時を過ごせた。来年は同じくラヴィア演出ルイゾッティ指揮で「コジ・ファン・トゥッテ」をやるという。今から楽しみだ。

コメント (2)
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