ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

W.ヘルンドルフ作「チック」

2017-09-25 21:33:25 | 芝居
8月15日シアタートラムで、ヴォルフガング・ヘルンドルフ作「チック」を見た(上演台本:R.コアル、翻訳・演出:小山ゆうな)。

ドイツでベストセラーとなり26カ国で翻訳されているという小説「14歳、ぼくらの疾走」の舞台化。
初演は2011年。本邦初演。
14歳のマイク(篠山輝信)の両親は喧嘩ばかり。父(大鷹明良)は浮気し母(あめくみちこ)はアル中。学校でも友達はいない。
ロシアから変わった転校生(柄本時生)がやって来る。マイクは彼をチックと呼ぶことにする。マイクは同級生のタチアナ(土井ケイト)に恋し、
3ヶ月かけて彼女の好きなビヨンセの顔を描いて誕生日にプレゼントしようとするが、彼女は同学年の子のほとんどを誕生日パーティに招待したのに
彼は招待されなかった。
夏休み、母はアル中患者のための施設に入り、父は愛人と2週間の旅行に出かけ、マイクは家で一人過ごすことになった。そこにチックが車で(!)
やって来る。自分の祖父の家までドライブしようと誘われ、同行することになるが・・・。

映画で言えば典型的なロードムービー。実際、映画化されて、これも小説同様かなりヒットしているらしい。
ストーリーも面白いが、法と秩序を重んじるドイツの人々がこの内容をよくすんなり受け入れたなあ、と感じる面もある。
たとえば、人の車を盗む、人の車のガソリンを盗む、など。それがなければ話が先に進まないのだから仕方がないのか。
それともドイツ人の内面も少しずつ変化してきているのか(アメリカナイズ?)。

14歳という年齢が微妙で絶妙。
その少年少女をドイツ版と同じくあえて大人の俳優が演じるが、全く違和感ない。
マイク役の篠山輝信という人は初めて見たが、なかなかの好演。
チック役の柄本時生は不良少年の雰囲気はピッタリだが、発声、セリフ回し、イントネーションなどが課題か。
あめくみちこと大鷹明良のベテラン二人は何人もの役を兼ねて大活躍。
大鷹明良が三輪車を乗り回す男の子役で登場すると、会場は爆笑に包まれた。
何しろ普段は苦虫をかみつぶしたような顔で怖い役が似合う人なので。
ゴミの山に住んでいる若い女イザ役などの土井ケイトも初めて見たが、魅力的だった。

映画は現在日本でも公開されているらしい。舞台とはまた違った魅力があるに違いない。
演出家はハンブルク出身の由。今後もいろいろ期待できそうだ。
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アイラ・レヴィン作「デストラップ」

2017-09-13 16:36:09 | 芝居
7月18日東京芸術劇場プレイハウスで、アイラ・レヴィン作「デストラップ」をみた(翻訳・演出:福田雄一)。

舞台はブロードウェイの劇作家シドニー・ブリュール(片岡愛之助)の自宅。彼はかつてミステリー劇を大ヒットさせていたが、今や4作連続の
失敗。妻マイラ(高岡早紀)の慰めにもすっかり気落ちしていた。そんな彼のもとにクリフォード・アンダーソン(橋本良亮)という教え子から
処女作「デストラップ」という脚本が届いた。その作品の質の高さにシドニーはクリフォードを殺害して作品を奪う決意をするのだが、そこに
謎めいた予言をする霊媒師ヘルガ(佐藤仁美)、一癖ある弁護士ポーター(坂田聡)も加わり、事態は思わぬ方向に・・・。どんでん返しに次ぐ
どんでん返し、巧みな伏線と見事な構成。そして物語は衝撃的なクライマックスを迎える(チラシより)。

1978年に発表されブロードウェイでロングラン上演、かつ映画化されてそれも大ヒットだというので期待して出かけたが・・・。

終始、間延びした芝居。演出がいけない。
戯曲自体は、風変わりな登場人物や謎解きの面白さで興味をつないでゆくが。
一番いけないのは、ストーリーと何の関係もないアドリブがやたら長く続き、しかも全然おかしくないこと!
実に腹立たしい。
おそらく演出が違えばもっと面白いものになるのだろう。
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井上ひさし作「イヌの仇討」

2017-09-02 23:14:03 | 芝居
7月17日紀伊国屋サザンシアターで、井上ひさし作「イヌの仇討」をみた(演出:東憲司)。
大石内蔵助以下赤穂の家来衆が吉良上野介を討つべく吉良邸に討ち入ったという例の忠臣蔵の話を、吉良邸内部から見たらどうなるか。
作者は想像力を駆使し、重層的でスリリングな芝居を作り上げた。
「初演以来29年ぶりの再演」ということは、あまり面白くないということか、と期待せずに行ったが、予想はいい意味で裏切られた。

上野介は家来たちに案内されて炭焼き小屋に避難して来る。主君をお守りする侍3名の他に、愛妾お吟、女中頭?お三、それに狆のような
子犬(何でもこれは将軍様から賜ったお犬様だという)、そしてこのお犬様の付き添いの侍女2名も一緒だ。
外からは赤穂の浪士たちのたてる斬り合いの音や叫び声が聞こえてくる。その部屋に、たまたま忍び込んでいた盗人がいたり、とてんやわんやの中、
上野介は松の廊下での事件を振り返り、あれは結局何だったのか、と自問自答する・・・。

演出がいい。
お三役の三田和代が素晴らしい。彼女は今まで何度も見たが、今回一番唸らされた。その存在感と緩急わきまえた演技は、他の女優には
到底真似できまい。
お吟役の彩吹真央はたぶん初めて見たが、声もよくセリフ回しもよく好演。
盗人役の木村靖司もうまい。
吉良上野介役の大谷亮介は、もちろん期待にたがわず好演。

吉良が炭焼き小屋に隠れていたことは大河ドラマで何度も見たので知っていたが、いつも彼は一人で隠れていた。お犬様と一緒に、しかも
何人もの家来や召使たちと一緒に潜んでいたとは知らなかった。あれが史実なのだろうか。
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