ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「ルイーズ」

2018-10-23 17:07:28 | オペラ
9月22日新国立劇場中劇場で、G. シャルパンティエ作曲のオペラ「ルイーズ」を見た(指揮:飯坂純、演出:馬場紀雄、オケ:東京オペラ
フィルハーモニック管弦楽団)。

台本も作曲家自身のもの。仏語上演。
1900年パリで初演。いわゆるヴェリズモ(現実主義)オペラ。
2007年日本初演の際、絶賛を博したとのことだが??

お針子娘のルイーズは、パリの労働者街で両親と暮らしている。隣に住むジュリアンは彼女と恋仲。しかし彼女の母親は、定職のない彼
との交際に反対する。両親の想いは届かず、二人はモンマルトルの丘で生活を始める。ジュリアンはルイーズの父親のような実直な行き方
ではなく自由な生き方を主張。彼女は父親をけなされ不快感を覚えるが、若さゆえ恋愛に陶酔してしまう。
ルイーズの母が、父の病気を理由に娘を連れ戻しに来る。娘を家に留まらせようとする父に対し、ルイーズはあくまでも恋愛の自由を
訴える。嘆きのあまり父はついに逆上、ルイーズに「出て行け」と怒鳴ってしまい、ルイーズは家の外へ飛び出す。
しばらくして冷静になった父は娘を探すが、時すでに遅く、見つからない・・・(チラシより)。

このあらすじを読んだ限りでは、何ともつまらない話のようだ。こんな内容でオペラになるのか。
そのくせ約3時間30分もかかるというので、見る(聴く)側にもそれなりの覚悟がいる。

第1幕を見終わって驚いた。台本が退屈で盛り上がりがまるでないばかりか、音楽もさっぱり面白くない。
家族3人の夕食風景が延々と続くのも芸がない。
歌手の声も演技も特にどうってことない。

ガミガミ怒鳴るばかりの母親と違って、父は愛情深く、娘との関係が非常にいい。
父はジュリアンからの手紙を読んで、真面目な若者らしいから一度うちに招待しよう、と言い出す。だが母親はきっぱり反対する。
父は彼女の激しい拒絶に会い、彼女を説得することもできず、すぐに提案を引っ込め、娘に諦めるよう諭すのだった。
この夫婦の力関係が少しいびつ。
母親は娘にどんな良縁が舞い込むと夢見ているのだろうか。

第2幕
ルイーズは、ジュリアンと駆け落ちして同棲している。
1幕のおどおどした小娘から打って変わって、堂々と落ち着いた佇まい。白い大人っぽいドレスもいい。
「その日から」のアリアで、親の束縛から逃れ、恋人と愛し愛される自由な日々の喜びを高らかに歌い上げる。
ルイーズ役の菊地美奈が、1幕とは別人のように魅力的。

第3幕
パリ、パリと皆が口々に言う割にはパリらしさがまるで伝わって来ない。

1幕では母親が厳し過ぎると思ったが、3幕で明らかになるのは父親の異常な愛。
この男、恋人から引き離した娘をしかと抱き締めて離さず、「昔のようにこのままお休み」などと無茶なことを言い出す。
娘の恋人が定職についていないのが問題ならば、普通だったら二人に対して、これからどうやって生活を立ててゆくつもりなのか、
と問いただし、二人の考えや計画を聞き、その上で判断するだろうに。
こんな親ではルイーズが可哀想だし、家出するのも当然だろう。

ただラストで父親が娘たちを罵倒し、娘が恋人との愛に生きると決めて喜びを歌う間、母親は何も言わず、娘の気持ちへの共感を
表情や仕草に表していたのが印象的だった。

この変なオペラがフランスでよく上演されるというのは本当だろうか。
にわかには信じ難い。
あるいは、言いにくいが、ひょっとしたら演出に問題があるのかも知れない。







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オペラ「犬の仇討」

2018-10-05 22:26:27 | オペラ
9月20日吉祥寺シアターで、オペラ「犬の仇討」を見た(こんにゃく座公演、原作:井上ひさし、台本・作曲:林光、演出:上村聡史)。

時は元禄15年(1702年)12月15日未明、吉良上野介の屋敷。赤穂浪士による討ち入りの最中、辛うじて隠し部屋に逃れた上野介と
清水一学ら家来たち。
そこに隠れていた盗っ人の砥石小僧新助によって上野介は「浅野は気の毒、上野介憎し」という世間の評判を耳にする。話を重ねるうち、
吉良たち一同は浅野方大石内蔵助たちのこの討ち入りの真意が仇討でなく「お上」への弓引きであることを悟る。そして・・・。(チラシより)

井上ひさしの芝居を林光がオペラにした唯一の作品。
数ある井上戯曲の中から作曲家がこれを選んだというのも興味深い。
初演は2002年の由。
台本も作曲家が書いているので、原作と所々違っていて面白い。
一番違うのは、ロマンスの要素の挿入!
お犬様係の2人の女中と侍2人がそれぞれ想い合っているという設定になっていてびっくり。
殺伐としたストーリーに、思いがけずほんわかした温かいものが入ってきて話がふくらんだ。
林先生お見事。井上ひさしも「やられたっ」と感心したり悔しがったりしたのではないだろうか。

ただし少々長過ぎるようにも思う。
なぜ大勢の侍たちに命を狙われて、自分の屋敷内でこそこそ隠れていなければならないのか、どうしてこんなことになったのか、と謎解きに
頭を絞る「ご隠居」(吉良様)に合わせて、すべてが動きを止める。それが何度か起こる。
劇の進行上必要なのは分かるが、何とかならないだろうか。
その他、あちこち刈り込めばもっと短くできるはずだ。

歌手では、盗人・砥石小僧新助役の佐藤敏之がうまい。しかもこの人は芝居もうまい。
他の皆さんの演技もなかなか立派。
楽器はヴァイオリンとピアノの2人。

久しぶりに「こんにゃく座」の公演を見て、かつて見た「ハムレット」や「吾輩は猫である」を思い出した。
ポローニアスが、留学する息子レアティーズに向かっていろいろ忠告(お説教)して聴かせるシーンの歌がとても面白くて、直後に拍手が起こった
のだった。懐かしい。
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