1月16日東京芸術劇場シアターウエストで、永井愛作・演出「パートタイマー・秋子」を見た(二兎社公演)。
夫が失業し、スーパー「フレッシュかねだ」でパートを始めたセレブな主婦・秋子。
しかし、そこは想像を超えたディストピアだった・・・(チラシより)。
2003年に書かれた作品を、作者自身が初演出。
ネタバレあります注意!
秋子(沢口靖子)は会社部長の妻で、ずっと専業主婦だったが、夫の会社が倒産したため、働かざるを得ず、スーパーのレジ係に採用される。
だが他の店員たちは驚く。新店長(亀田佳明)は、人が多いので、むしろ減らそうと言っていたらしい、しかも特にレジ係を。
品出し担当の貫井(生瀬勝久)は大手住宅メーカーの部長だったが、リストラに合い、ここに来た。
秋子は成城からわざわざ1時間半かけて通勤。近所の人には友人のアンティークの店を手伝っている、と言って。
貫井は田園調布に住む。秋子の家は、貫井の会社が設計したものだった。
二人は似た境遇のため急速に親しくなる。
貫井は品出しなので、店員たちが店の品をレジを通さずにくすねているのを知っている。
秋子が驚いて店長に告げようと言うが、貫井は、今店長に言ってもどうにもならない、と止める。
店長は、今月を万引き防止強化月間とする。
そんな時、万引きした男(石井愃一)が連れて来られてひと騒動・・・。
精肉担当の若い男(田中亨)が辞め、店長は秋子に、代わりに精肉担当になってくれと言う。
この店では肉を「リパック」、つまり賞味期限を書いたシールを貼り換えることを常習的に行っていた。
それが精肉担当の仕事だと聞いて秋子は驚くが、店長に説得される・・。
<2幕>
幕が開くと、いきなり店長、貫井、秋子、惣菜担当の窪寺(稲村梓)が他の店員たちの前で歌い出す。
「赤っ恥セール」のテーマソングだ。
それぞれ頭にニワトリ、牛、豚などの小さなかぶりものをつけ、赤い法被を着ている。
これは貫井のアイディアを店長が採用したものだった。
春日(土井ケイト)ら他の店員たちは呆れ、こんなの絶対嫌だ、協力しない、と出ていく。
次の場面で春日は、本社に出す直訴状を仲間たちに読んで聞かせる。
「セールは失敗に終わった・・・」という文面だが、実はこの日は、まだ初日だった。
これがおかしい。
夏の盛りの炎天下、店長と貫井はビラ配り。
途中で貫井がいなくなる。
店長が店に戻ると、店員たちが来て、かぶりものをゴミ箱に捨て、赤い法被も置いて出ていく。
がっくりきた店長は、副店長に「特別な提案」がある、と持ち掛けるが・・・。
こうして書いていくとキリがないが、結局、ここを去ることになる人、居残る人、とそれぞれの人生が交錯する。
始めは純真だった秋子も、この環境で日々過ごすうちに、次第に悪に染まってゆく。
貫井が去る時、彼女は自分のロッカーから、肉のパックをいくつも入れたレジ袋を取り出して、渡そうとする。
不審に思った貫井は「レシートある?」と尋ねる。
すると彼女はいろいろ言ってごまかすが、しばらくたってから詰問するような強い口調で「どうして『レシートある?』って聞いたの?」と尋ねる。
こんな場合、彼女はどうしてそんな強い態度に出ることができるだろうか。
そこはもっとうまく演じてくれないと困る。
危うく「この人シロか」と思ってしまった。
演出家も、ここは大事なところなのだから、しっかり演技指導してほしい。
店長役の亀田佳明と貫井役の生瀬勝久が脇をガッチリ固めているので、骨格がしっかりしている。
生瀬勝久のヨーデルが思いがけずうまくて楽しい。
主演の沢口靖子は、作者が「お嬢さんのまま奥様になって、でも真面目で」と言う通り、この役にピッタリ。
ただ、先ほど書いたラストの違和感の他にも、常に同じ力の入れ具合でセリフを口にするのは考えもの。
もっとサラッと言うべき箇所もあるということ。
メリハリが肝心です。
夫が失業し、スーパー「フレッシュかねだ」でパートを始めたセレブな主婦・秋子。
しかし、そこは想像を超えたディストピアだった・・・(チラシより)。
2003年に書かれた作品を、作者自身が初演出。
ネタバレあります注意!
秋子(沢口靖子)は会社部長の妻で、ずっと専業主婦だったが、夫の会社が倒産したため、働かざるを得ず、スーパーのレジ係に採用される。
だが他の店員たちは驚く。新店長(亀田佳明)は、人が多いので、むしろ減らそうと言っていたらしい、しかも特にレジ係を。
品出し担当の貫井(生瀬勝久)は大手住宅メーカーの部長だったが、リストラに合い、ここに来た。
秋子は成城からわざわざ1時間半かけて通勤。近所の人には友人のアンティークの店を手伝っている、と言って。
貫井は田園調布に住む。秋子の家は、貫井の会社が設計したものだった。
二人は似た境遇のため急速に親しくなる。
貫井は品出しなので、店員たちが店の品をレジを通さずにくすねているのを知っている。
秋子が驚いて店長に告げようと言うが、貫井は、今店長に言ってもどうにもならない、と止める。
店長は、今月を万引き防止強化月間とする。
そんな時、万引きした男(石井愃一)が連れて来られてひと騒動・・・。
精肉担当の若い男(田中亨)が辞め、店長は秋子に、代わりに精肉担当になってくれと言う。
この店では肉を「リパック」、つまり賞味期限を書いたシールを貼り換えることを常習的に行っていた。
それが精肉担当の仕事だと聞いて秋子は驚くが、店長に説得される・・。
<2幕>
幕が開くと、いきなり店長、貫井、秋子、惣菜担当の窪寺(稲村梓)が他の店員たちの前で歌い出す。
「赤っ恥セール」のテーマソングだ。
それぞれ頭にニワトリ、牛、豚などの小さなかぶりものをつけ、赤い法被を着ている。
これは貫井のアイディアを店長が採用したものだった。
春日(土井ケイト)ら他の店員たちは呆れ、こんなの絶対嫌だ、協力しない、と出ていく。
次の場面で春日は、本社に出す直訴状を仲間たちに読んで聞かせる。
「セールは失敗に終わった・・・」という文面だが、実はこの日は、まだ初日だった。
これがおかしい。
夏の盛りの炎天下、店長と貫井はビラ配り。
途中で貫井がいなくなる。
店長が店に戻ると、店員たちが来て、かぶりものをゴミ箱に捨て、赤い法被も置いて出ていく。
がっくりきた店長は、副店長に「特別な提案」がある、と持ち掛けるが・・・。
こうして書いていくとキリがないが、結局、ここを去ることになる人、居残る人、とそれぞれの人生が交錯する。
始めは純真だった秋子も、この環境で日々過ごすうちに、次第に悪に染まってゆく。
貫井が去る時、彼女は自分のロッカーから、肉のパックをいくつも入れたレジ袋を取り出して、渡そうとする。
不審に思った貫井は「レシートある?」と尋ねる。
すると彼女はいろいろ言ってごまかすが、しばらくたってから詰問するような強い口調で「どうして『レシートある?』って聞いたの?」と尋ねる。
こんな場合、彼女はどうしてそんな強い態度に出ることができるだろうか。
そこはもっとうまく演じてくれないと困る。
危うく「この人シロか」と思ってしまった。
演出家も、ここは大事なところなのだから、しっかり演技指導してほしい。
店長役の亀田佳明と貫井役の生瀬勝久が脇をガッチリ固めているので、骨格がしっかりしている。
生瀬勝久のヨーデルが思いがけずうまくて楽しい。
主演の沢口靖子は、作者が「お嬢さんのまま奥様になって、でも真面目で」と言う通り、この役にピッタリ。
ただ、先ほど書いたラストの違和感の他にも、常に同じ力の入れ具合でセリフを口にするのは考えもの。
もっとサラッと言うべき箇所もあるということ。
メリハリが肝心です。