7月21日紀伊國屋サザンシアターで、三谷幸喜作「その場しのぎの男たち」を見た(演出:鵜山仁)。
東京ヴォードヴィルショー創立50周年記念公演。
その初日を見た。
なおこの芝居は10年前の2013年に、山田和也演出で見たことがある(劇団創立40周年記念公演)。
1891年(明治24年)滋賀県大津市で、来日中のロシア皇太子が切りつけられるという大変な事件が起こった。
犯人は警察官・津田三蔵で、彼はロシアに日本侵略の意図があり、その準備として皇太子が偵察に来た、と考え、愛国心に駆られて犯行に及んだのだった。
当時日本はまだ近代国家としての形をとり始めたばかり。
大国ロシアからの賓客を、国を挙げて歓迎している最中だった。
事件の報復にロシアが日本に攻めて来る、と日本中に激震が走った。
時の内閣総理大臣は松方正義(佐渡稔)。
だが彼をはじめ閣僚たちは元老・伊藤博文伯爵(伊東四朗)によってその地位を与えられた面々で、判断力にも決断力にも欠けており、
何より伊藤博文の意向を常に気にしていた。
ただ一人、大臣・陸奥宗光(佐藤B作)は根っからの策士で、総理は彼に全面的に頼るが・・。
ネタバレあります注意!
冒頭、日本とロシアの国旗が掲げられる下で、着物姿の人々がロシア民謡風の歌を歌う。
突然不吉な音がして、2つの国旗が傾き、歌が止み、舞台を暗い赤色が覆う。
この導入がいい。
舞台は終始同じ一つの部屋。
負傷したロシア皇太子・ニコライ二世が滞在する常盤ホテルの一室。
部屋の様子は前回のとほとんど同じ。
驚いたのは、いきなり主役の一人がセリフに詰まり、芝居に間が空いたこと!
それは、カーテンコールでB作さんも言ったように、「始まって5分で」起こったのだった。
だがこの日の客席は寛容だった。
かえって役者の失敗を笑ってくれたのだった。
何とありがたいお客様たち!
でも空白を作って芝居を中断させるなんてけしからんでしょう。
大臣たちはニコライ二世と同じホテルに滞在し、彼の部屋に見舞いに行こうとするが、窓口となったシューヴィチという駐日ロシア公使が頑として拒絶。
なぜ彼は、かたくなに面会を拒否するのか。
ひょっとしたらニコライはもう生きていないんじゃないか。
今後の出方を考えるために時間稼ぎをして、本国と連絡を取っているんじゃないか。
賠償金請求・・いや領土割譲・・ロシアは代償としてこれから何を言い出すだろうか。
彼らの想像はどんどん悪い方へ広がってゆく。
ようやくニコライが死んでいないことがわかり、ほっとしたのも束の間、今度は、殺人でなく傷害事件だから、法律によれば犯人を死刑にできないことが問題となる。
ロシア側は当然死刑を要求するに決まっている。
すると、いっそニコライを殺してしまおう、と、とんでもないことを言い出す奴が出てくる。
その企みが(幸い)失敗すると、今度は逆に、犯人の津田を密かに殺してしまおう、と画策する・・。
タイトル通り、次々に起こる難局に「その場しのぎ」で対処しようと右往左往する大臣たち。
何度見てもおかしい。
伊東四朗がやはり絶品。
彼とB作さんとの腹の探り合いがたまりません。
もちろん途中、スラプスティックなドタバタ劇で、さほど面白くない箇所や下品で時流にあわない所もあったりするけれど。
犯人・津田の妻(あめくみちこ)、元「くノ一」亀山乙女(山本ふじこ)が登場したり、と変化もあって楽しい。
筆者は乙女の「御意!」というセリフが待ち遠しかった。
当時、実際に、ニコライの訪日が軍事視察であるという噂があったらしい。
この事件と日本政府による処理は、それによって日本が法治国家として国際的に認められたという点で、歴史上、大きな意味があったという。
初日とて、カーテンコールで役者たちが出てくると万雷の拍手。
B作さん曰く、「今日の出来でこんなに拍手がいただけるとは・・」
そしてしみじみと「心の広い皆様で本当によかった」(笑)
だがいくら初日でも、ちょっとどうかと筆者は思った。
やはりここでも高齢化の影響が・・。
ほぼ同じメンバーが演じた10年前は、たとえ初日でもこんなことはなかったと思う。
だがB作さんも言うように、とにかく「ホンがいい」から、客席はそんな出来でも満足できたし、
十分笑って日頃の憂さを晴らせたようだった。
でも・・それに甘えないでくださいね。
東京ヴォードヴィルショー創立50周年記念公演。
その初日を見た。
なおこの芝居は10年前の2013年に、山田和也演出で見たことがある(劇団創立40周年記念公演)。
1891年(明治24年)滋賀県大津市で、来日中のロシア皇太子が切りつけられるという大変な事件が起こった。
犯人は警察官・津田三蔵で、彼はロシアに日本侵略の意図があり、その準備として皇太子が偵察に来た、と考え、愛国心に駆られて犯行に及んだのだった。
当時日本はまだ近代国家としての形をとり始めたばかり。
大国ロシアからの賓客を、国を挙げて歓迎している最中だった。
事件の報復にロシアが日本に攻めて来る、と日本中に激震が走った。
時の内閣総理大臣は松方正義(佐渡稔)。
だが彼をはじめ閣僚たちは元老・伊藤博文伯爵(伊東四朗)によってその地位を与えられた面々で、判断力にも決断力にも欠けており、
何より伊藤博文の意向を常に気にしていた。
ただ一人、大臣・陸奥宗光(佐藤B作)は根っからの策士で、総理は彼に全面的に頼るが・・。
ネタバレあります注意!
冒頭、日本とロシアの国旗が掲げられる下で、着物姿の人々がロシア民謡風の歌を歌う。
突然不吉な音がして、2つの国旗が傾き、歌が止み、舞台を暗い赤色が覆う。
この導入がいい。
舞台は終始同じ一つの部屋。
負傷したロシア皇太子・ニコライ二世が滞在する常盤ホテルの一室。
部屋の様子は前回のとほとんど同じ。
驚いたのは、いきなり主役の一人がセリフに詰まり、芝居に間が空いたこと!
それは、カーテンコールでB作さんも言ったように、「始まって5分で」起こったのだった。
だがこの日の客席は寛容だった。
かえって役者の失敗を笑ってくれたのだった。
何とありがたいお客様たち!
でも空白を作って芝居を中断させるなんてけしからんでしょう。
大臣たちはニコライ二世と同じホテルに滞在し、彼の部屋に見舞いに行こうとするが、窓口となったシューヴィチという駐日ロシア公使が頑として拒絶。
なぜ彼は、かたくなに面会を拒否するのか。
ひょっとしたらニコライはもう生きていないんじゃないか。
今後の出方を考えるために時間稼ぎをして、本国と連絡を取っているんじゃないか。
賠償金請求・・いや領土割譲・・ロシアは代償としてこれから何を言い出すだろうか。
彼らの想像はどんどん悪い方へ広がってゆく。
ようやくニコライが死んでいないことがわかり、ほっとしたのも束の間、今度は、殺人でなく傷害事件だから、法律によれば犯人を死刑にできないことが問題となる。
ロシア側は当然死刑を要求するに決まっている。
すると、いっそニコライを殺してしまおう、と、とんでもないことを言い出す奴が出てくる。
その企みが(幸い)失敗すると、今度は逆に、犯人の津田を密かに殺してしまおう、と画策する・・。
タイトル通り、次々に起こる難局に「その場しのぎ」で対処しようと右往左往する大臣たち。
何度見てもおかしい。
伊東四朗がやはり絶品。
彼とB作さんとの腹の探り合いがたまりません。
もちろん途中、スラプスティックなドタバタ劇で、さほど面白くない箇所や下品で時流にあわない所もあったりするけれど。
犯人・津田の妻(あめくみちこ)、元「くノ一」亀山乙女(山本ふじこ)が登場したり、と変化もあって楽しい。
筆者は乙女の「御意!」というセリフが待ち遠しかった。
当時、実際に、ニコライの訪日が軍事視察であるという噂があったらしい。
この事件と日本政府による処理は、それによって日本が法治国家として国際的に認められたという点で、歴史上、大きな意味があったという。
初日とて、カーテンコールで役者たちが出てくると万雷の拍手。
B作さん曰く、「今日の出来でこんなに拍手がいただけるとは・・」
そしてしみじみと「心の広い皆様で本当によかった」(笑)
だがいくら初日でも、ちょっとどうかと筆者は思った。
やはりここでも高齢化の影響が・・。
ほぼ同じメンバーが演じた10年前は、たとえ初日でもこんなことはなかったと思う。
だがB作さんも言うように、とにかく「ホンがいい」から、客席はそんな出来でも満足できたし、
十分笑って日頃の憂さを晴らせたようだった。
でも・・それに甘えないでくださいね。