ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「ピグマリオン」

2014-01-27 00:02:00 | 芝居
11月26日新国立劇場中劇場で、バーナード・ショウ作「ピグマリオン」をみた(演出:宮田慶子)。

ミュージカル映画「マイフェアレディ」の原作。

ロンドンの下町に住む花売り娘イライザは、ひょんなことから言語学者ヒギンズ教授と出会う。彼は音声学の権威で、発音を聞い
ただけでその人がどこの出身かすぐに分かってしまうのだった。彼はイライザのひどいなまりや粗暴な態度にあきれ、このままでは
一生底辺の生活から這い上がれないが、私にかかれば上流階級のレディのように仕立ててみせると豪語する。
翌朝イライザは教授を訪問し、話し方を教えてくれと頼む。面白い実験材料が来たと思った教授と友人のピカリング大佐は、彼女を
舞踏会デビューさせ、出身をうまくごまかせるかどうか賭けをし、家に住まわせて面倒をみるのだが…。

ピカリング大佐を綱島郷太郎という若く美しい男性が演じていて驚いた。映画では初老の紳士だったので。
家政婦ピアス夫人、ヘンリーの母ヒギンズ夫人、イライザの父、いずれも個性がしっかり描かれ、面白い。みなヒギンズよりずっと
常識があり「まとも」だ。
「上流階級の言葉使いや礼儀作法を身につけても、上流階級の暮らしをするのに妨げにはなっても、そういう暮らしができるわけ
じゃないのよ」(ヒギンズ夫人)

ヘプバーン主演の映画は何度も見ているが、原作は知らなかったので、今回、両者の違いがいろいろ分かって面白かった。
結末が大きく違うことだけは知っていた。

イライザ役の石原さとみが素晴らしい。
主演の二人は厖大なセリフを完璧にこなしていて見事。とりわけ石原さとみのイライザは絶品。声の調子の変化、絶妙な間の取り方で、
ヒロインの揺れ動く心情を巧みに表現した。この人はまた見たい!

この芝居は要するに、上流階級の変わり者の男が、神話のピグマリオンよろしく下層階級の女をレディに仕立て上げることに成功
するが、しかしその時、女は神話と違って彼の予想を超えた行動に出る力を蓄えていた、という、ほろにがいシニカルな味わいの
お話なのだった。


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マメット作「クリプトグラム」

2014-01-11 17:25:55 | 芝居
11月20日シアタートラムで、デイヴィッド・マメット作「クリプトグラム」をみた(翻訳・演出:小川絵梨子)。

マメットは現代アメリカを代表する劇作家の一人で、ピューリツァー賞受賞作「グレンギャリー・グレン・ロス」(映画の邦題
「摩天楼を夢みて」)が有名。

題名は英語で「暗号」という意味の由。
自身の幼少期をもとにした自伝的な戯曲で、1時間15分の短さだが、これがなかなかの難物。

デル(谷原章介)という男が居間にいる。階段の上からジョンという少年が降りてくる。キッチンからはジョンの母ドニー(安田成美)
の声がする。一見親子3人のようだが、少年は父の帰りを待っているという。ではデルとは何者?一応ドニー夫妻の友人ということ
だが…。

この芝居をやろうとするのは勇気がいる。普通に笑えたり泣けたりするわけでなく、謎解きはあるが、しょっちゅうはぐらかされるので、
観客には集中力が要求されるし。

だが、この日驚いたのは安田成美の演技力。彼女のことはよく知らず、ただの美人女優だと思っていたが大間違いだった。
良い意味で予想を裏切ってくれた。
こういうことがあるから芝居は面白い。
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