ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「エトワール」

2019-10-24 16:48:30 | オペラ
9月14日新国立劇場中劇場で、E.シャブリエ作曲のオペラ「エトワール」を見た(演出:八木清市、指揮:飯坂純、オケ:東京オペラフィル)。

フランスの作曲家による1877年の作品。歌はフランス語、セリフは日本語の上演。字幕付き。
休憩2回を含めて3時間以上かかった。

1幕
国王ウーフⅠ世は自分の誕生日に行う恒例行事「串刺し刑」にする罪人を探しに街へ。国民はよく知っているので、罪を犯さぬよう口をそろえて
王を褒め讃える。困った王は占星術師に相談するため広場を去る。そこへ商人に変装した隣国の大使が、王女ラウラ、大使の妻、秘書官を伴って
宿に入る。一方、行商の若者ラズリは、一目ぼれした美女を追ってきたが見失う。王女たちは寝ている可愛いラズリを見つけ、くすぐって
起こす。目覚めたラズリは探していた美女(これがラウラ姫)が目の前にいて大喜び。名前を尋ね、愛の告白をしているところを大使に見つかり、
大使は、私の妻に話しかけるな、と彼女らを連れ去る。意気消沈するラズリの前に、王が再び変装して現れ、しつこく国王の評判を問うので
自暴自棄になったラズリは王に平手打ちをしてしまう。王は罪人が見つかったと大喜び。早速処刑の準備が整えられるが、占星術師シロコが、
その若者と王とは同じ天命で、彼を殺せば王も後を追うことになると告げる。驚いた王は急きょ刑を取りやめ、ラズリを王宮に招くが・・・。

オペラにはありがちだが、この作品のストーリーも荒唐無稽でツッコミどころ多し。
率直に言って、話の流れがたるんでいてかったるい。退屈。もっと緊密にできないものか。単純な話なので先が読めてしまうし。
王女ら一行4人の合唱があまりそろっておらず美しくない。
ラズリ役の人は歌がいいが、高音が少し低め。

セリフ部分では時事ネタを交えて楽しませてくれる。「事務所を通さず闇営業なんてしない」とか「あおり運転の馬車にひかれて」とか、
「ブランドショップのカリスマ店員」とか・・。
2幕
危うく特殊な椅子で串刺し刑にされるところを占星術師シロコの占いによって助かったラズリは、宮廷で美女に囲まれ酒池肉林。
喜びながらも一目ぼれしたラウラに会いたいので城を出ようとすると、王と占い師に止められ外出禁止を言い渡される。驚いたラズリは
ベランダから飛び降りるぞ、と脅し、ようやく外出許可を得る。ただし、これからは「健康第一。低脂肪高たんぱく、青汁ニンニク・・」と
今流行の健康食品を列挙するシロコ。
ラズリが「好きな人に会いたい」と言うと、王は「まだ恋をしたことがない」と言う。すかさずラズリ「ボーっと生きてんじゃねーよ」。
そして恋のアリア「その人は人妻なんです」。
そこに隣のマカタン国の王女と大使夫妻が来るという。ラズリは大使を見て「あれが私の好きな人の夫なんです」。
すると王は「あの男には暗いところに入ってもらおう」。警官たちがやって来て「騒乱罪、つまり陛下のお心を乱した罪で逮捕する。
騒乱罪は銃殺刑だぞ」とはしゃいで彼を連れ去る。

王女と大使の妻アロエスが寝ているところにラズリが来て王女にキスし、二人は愛を語る。秘書タピオカを見たアロエスは(二人は幼なじみ)
なぜか急に彼といい感じになり、王女たちに負けじとキス(タピオカも前から彼女に気があった)って、オイ・・・。
そこに王が入って来る。ラウラはラズリに、自分は本当はマカタン国の王女だと明かすが、王には内緒に、と言う。ラズリは王にラウラを紹介する。
王は二人に通行許可証と財布を渡す。二人は手に手を取って出て行く。

王は大使夫人アロエスを王女ラウラだと思い込んでいるため、結婚式を挙げようとする。そこに大使がやって来て「こいつは私の妻です」「王女が
男に誘拐された、という噂ですが」と言うと、王はようやく間違いに気づく。「誘拐させたのは私だ」
大使は誘拐犯を見つけたら射殺する(大砲で打つ)ように部下に命令した、と言う。
その時大砲の音。皆びっくりし、特に王とシロコは青くなる。(シロコは王の遺言で、王の死の15分後に死ぬことを命じられている)。
そこにラウラが入って来て、涙ながらに語る。ラズリと二人舟に乗っている時、大砲が舟に当たり、彼の姿が消えた。探したのにどこにもいない、と。

第3幕
舞台上方に大きなデジタル時計が掛かっている。たまに文字盤部分が人の顔になったりする。
ラズリの死の24時間後に死ぬと予言されている王は、シロコと共にやぐらに上り、嘆き、時計を1時間遅らせる。シロコは止めるがきかない。
王女と大使夫人の会話。王は急いで結婚式を挙げようとする。「まだあと1時間半ある。私には後継ぎがいない。私の子を産んでくれ」と
王女に迫り、嫌がる王女と式を挙げようとする時、シロコが言う「あと30分しかありませんぞ。陛下は時計を1時間遅らせたでしょう?!」
がっくりする王。こうして式は取りやめとなる。

一方ラズリは体に絡みついた海藻や魚を振り払う。無事に生き延びたのだ。
ラズリを思い続けるラウラ姫と大使夫人の会話。ラズリは陰で二人の会話を聞いて姫の心が変わっていないことを知って喜ぶ。
出てきて王女と再会を喜び合う。
彼を見た王とシロコも、もちろん大喜び。めでたしめでたし。

シロコ役の峰茂樹は演技がうまく、大いに楽しませてくれた。

幕ごとに序曲が演奏され、道化師がパントマイムで次の筋を表現するのが珍しく、面白い。
まるで「ハムレット」の劇中劇の前にある黙劇のようだ。
道化師の衣装も素敵。

ただ、ラズリ役がなぜ女性なのかがよく分からない。
たぶんシャブリエは女性の声が好きだったのだろう。リヒャルト・シュトラウスだってそうだった(オペラ「薔薇の騎士」を見よ)。
だが、お城で酒池肉林というシーンなど、女ばかりでは何のことやらさっぱり、だ。
まあ、ストーリーにはあんまり関係ないからいいか。







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「リハーサルのあとで」

2019-10-12 10:31:02 | 芝居
9月10日新国立劇場小劇場で、イングマール・ベルイマン作「リハーサルのあとで」を見た(演出:栗山民也)。

舞台にはソファ、机と椅子、長椅子など多くの家具が雑然と置かれている。モーツァルトのヴァイオリンソナタが流れる。
ヘンリク(榎木孝明)が一人いるところに、若い女アンナ(森川由樹)がブレスレットを落としたらしい、とやって来る。それは口実だった。
二人は次の芝居(ストリンドベリの何か)で共演する間柄で、今はその稽古中。二人はアンナの亡き母ラケルのことを語り合う。
ラケルは女優で5年前に死んだ。アンナは母を憎んでいる。ヘンリクはラケルを愛していた。

アンナが背後に退くと、ラケル(一路真輝)登場。
どうも精神を病んでいるようだ。赤ワイン2杯飲んだだけ、酔っぱらってはいない、と男をしきりに誘うが・・・。

ラケルが去ると、再びアンナが前に進み出る。演出助手のペーターと同居中で、妊娠したが、ペーターに説得されて中絶したとか。


モーツァルトの同じヴァイオリンソナタが何度も流れるが、叙情的過ぎて、この芝居には合わない。
アンナのシーンが終わった後、彼女がなぜ退場せずにずっと舞台後方にいるのか、その意図が分からない。

作品自体は特に面白くもなかったが、役者たちは好演。
特に一路真輝は声がいい。2017年にジロドゥー作「トロイ戦争は終わらない」でエレーヌ(ヘレナ)をやった時、その神々しいほどの存在感に
打たれたが、あの時は大ホール(新国立劇場中劇場)で遠方だった。
今回初めて至近距離で見られた。

ベルイマンの芝居は、2008年に「ある結婚の風景」を見たことがある。この作品より登場人物も多く、複雑かつ面白かったような記憶しかない
のが残念。まだこのブログを始める前だったので。
それから彼の映画は、大作「ファニーとアレクサンデル」をロンドンの家でテレビで見た。
何しろスウェーデン語放送で英語の字幕付きなので、素晴らしかったが、よく分からない箇所もあった。
長年気になっている、もう一度見たい作品だ。
映画が始まるや否や、少年アレクサンデルがシェイクスピアの「十二夜」冒頭の公爵のセリフを暗唱する(役者一家の子なので)。
「音楽が恋の糧なら、続けてくれ・・・」
これでもう心を鷲掴みされたのはお分かりでしょう。
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