先日アガサ・クリスティーの名作「アクロイド殺害事件」を読み終えたら、言いたいことがむくむくと湧き上がってきてしまった。
これもまた番外編みたいなものだが、どうしても書いておきたい。
ただこれはミステリーなので、まだ読んでない方で結末を知りたくない方のために途中で警告を出しますので、そういう方は、それ以降は絶対に読まないで下さいね。
あとがきを読んで驚いたのは、クリスティーが学校教育を受けたことがないということ!家で、母親に教えてもらっただけだそうだ。
これほど多くの名作を次々と生み出して世界中の人を喜ばせてきた人が公教育を受けていないとは・・・。教育についていろいろ考えさせられる。
そう言えば、最近日本でも「脱学校」という考え方が、ようやく普及してきたらしい。
作品中に描かれる、当時の英国の風習が、いちいち珍しく興味が尽きない。
一番意外だったのは麻雀が流行していたらしいこと。
ポンだのチーだのと言う声が、いやもっと難しい、リャンピンとかアンカンとかの中国語までが客間に響くのだから、何だかおかしい。
たぶん当時の英国人にとって、最もクールな遊びだったのだろう。
階級社会ということを改めて感じさせられた。人はみな、おのおの生まれながらに身分があり、それにふさわしい待遇を受け、もっぱら同じ階級の人と交際する。
戸籍という制度がないということ。これは現在もそうなのかどうか分からないが、そのため、少なくとも当時は、生まれた子供に適当に姓をつけてもよかったらしい!
それってまるで、通称とかハンドルみたいなものではないか。また結婚も、役所に届け出なくてもよかったらしい。実に不思議だ。
その辺のところを、もっと詳しく知りたいものだ。
★★★ 警告!ここからは、結末および犯人を知りたくない方は、決して、絶対に、読まないでください!★★★
読了後、いくつかの疑問が残った。それを以下に挙げます。
① シェパードがラルフを、少し離れた場所にある精神病院に車で連れて行って入院させたのは、事件の翌日(土曜)の早朝だった。金曜の夜9時半以降、ラルフは
宿に帰っていない。となると、ラルフはどこで夜を過ごしたのか?シェパードが自分の車の中に隠れさせておいたのだろうか?
② シェパードは「姉は真相を知ることはないだろう」と書いているが、そううまくいくだろうか。結局誰も逮捕されなければ、被害者の遺族や関係者たちは、
警察に、どういうことかと詰め寄るだろう。そうなると警察は真実を公表するしかあるまい。真相をうやむやにしたままで済むはずがない。彼女は殺人犯の
姉として、村に住んではいられなくなるかも知れない。何しろ小さな村だし、彼が書いているように「彼女には自尊心がある」のだから。
彼はポワロに向かって「私は、ほかになんと言われようと、少なくともばかではないつもりですよ」と言っているが、私に言わせれば、そこに気がつかないとは
相当トンマな極楽トンボだ。
③ 秘密の結婚の件。ラルフとアーシュラはどこかで誰か牧師に頼んで式を挙げたのだろうか。役所に届けなくてよかったとしても、正式な結婚の定義はどういう
ものだったのだろうか。今日のいわゆる「事実婚」と、あるいは「内縁関係」と、どう違うのだろうか。
④ 殺害の時、犯人は普通返り血を浴びるはずだが、そうならないように、よっぽどうまくやったのだろうか。
また、被害者は叫び声を挙げたはずだが、ドアの前で聞き耳を立てていた執事パーカーが、それを聞かなかったというのも不思議だ。
しかしまあ、それらは瑕疵に過ぎない。これほど素晴らしい作品なのだから、ツッコミどころの一つや二つあったって別にいいし、作者を責める気にはなれない。
⑤ 指輪の件。最後にアーシュラが、それを池に投げ捨てた時のことを話すとばかり思っていたので、そのことについて何も語られないのでちょっと驚いた。
私が作者なら、それと、ポワロが指輪をアーシュラに返すシーンを入れたと思う。いや、それではいささか陳腐か。
* これは疑問ではないが、衝撃を受けた点。当時英国では、医者は患者を「療養所」(精神病院)に勝手に自由に入れることができた!これも戸籍というものが
ないからユルイのかも知れないが、患者の家族にも内緒で、しかも偽名で、偽の診断書で、いつまでも入所させておけた!実に恐ろしい。
* シェパードは、若いラルフが自分を誰よりも信頼しているのをいいことに、彼に罪をなすりつけ、密かに新妻と引き離し、永久に(!)精神病院に閉じ込めておく
つもりだった。しかもそのことについて、彼への謝罪とか後悔とかを一言も書き残していない。人間らしい感情を持たない冷血漢ではないか。
一方で、自分を知的だとうぬぼれているが、大胆なようで小心者で、ポワロも姉カロラインも認めているように「性格が弱い」人間だとも言える。
ついでに言うと、医者は日本では金持ちのイメージなので、医者が金に困ってゆすりを働く・・という点が、彼我の違いを感じさせる。
* いつか原書を手に入れて読んでみたいという目標ができた。大久保康雄訳で読んだが、一部意味の分からない箇所があるので。「カラー箱」とか。
* この作品をドラマ化した三谷幸喜の「黒井戸殺し」を録画したまま、だいぶ経ってしまった。原作を読んでから見ようと思ったので。
しばらくして読後の余韻が冷めたら見ようと楽しみにしているところです。
これもまた番外編みたいなものだが、どうしても書いておきたい。
ただこれはミステリーなので、まだ読んでない方で結末を知りたくない方のために途中で警告を出しますので、そういう方は、それ以降は絶対に読まないで下さいね。
あとがきを読んで驚いたのは、クリスティーが学校教育を受けたことがないということ!家で、母親に教えてもらっただけだそうだ。
これほど多くの名作を次々と生み出して世界中の人を喜ばせてきた人が公教育を受けていないとは・・・。教育についていろいろ考えさせられる。
そう言えば、最近日本でも「脱学校」という考え方が、ようやく普及してきたらしい。
作品中に描かれる、当時の英国の風習が、いちいち珍しく興味が尽きない。
一番意外だったのは麻雀が流行していたらしいこと。
ポンだのチーだのと言う声が、いやもっと難しい、リャンピンとかアンカンとかの中国語までが客間に響くのだから、何だかおかしい。
たぶん当時の英国人にとって、最もクールな遊びだったのだろう。
階級社会ということを改めて感じさせられた。人はみな、おのおの生まれながらに身分があり、それにふさわしい待遇を受け、もっぱら同じ階級の人と交際する。
戸籍という制度がないということ。これは現在もそうなのかどうか分からないが、そのため、少なくとも当時は、生まれた子供に適当に姓をつけてもよかったらしい!
それってまるで、通称とかハンドルみたいなものではないか。また結婚も、役所に届け出なくてもよかったらしい。実に不思議だ。
その辺のところを、もっと詳しく知りたいものだ。
★★★ 警告!ここからは、結末および犯人を知りたくない方は、決して、絶対に、読まないでください!★★★
読了後、いくつかの疑問が残った。それを以下に挙げます。
① シェパードがラルフを、少し離れた場所にある精神病院に車で連れて行って入院させたのは、事件の翌日(土曜)の早朝だった。金曜の夜9時半以降、ラルフは
宿に帰っていない。となると、ラルフはどこで夜を過ごしたのか?シェパードが自分の車の中に隠れさせておいたのだろうか?
② シェパードは「姉は真相を知ることはないだろう」と書いているが、そううまくいくだろうか。結局誰も逮捕されなければ、被害者の遺族や関係者たちは、
警察に、どういうことかと詰め寄るだろう。そうなると警察は真実を公表するしかあるまい。真相をうやむやにしたままで済むはずがない。彼女は殺人犯の
姉として、村に住んではいられなくなるかも知れない。何しろ小さな村だし、彼が書いているように「彼女には自尊心がある」のだから。
彼はポワロに向かって「私は、ほかになんと言われようと、少なくともばかではないつもりですよ」と言っているが、私に言わせれば、そこに気がつかないとは
相当トンマな極楽トンボだ。
③ 秘密の結婚の件。ラルフとアーシュラはどこかで誰か牧師に頼んで式を挙げたのだろうか。役所に届けなくてよかったとしても、正式な結婚の定義はどういう
ものだったのだろうか。今日のいわゆる「事実婚」と、あるいは「内縁関係」と、どう違うのだろうか。
④ 殺害の時、犯人は普通返り血を浴びるはずだが、そうならないように、よっぽどうまくやったのだろうか。
また、被害者は叫び声を挙げたはずだが、ドアの前で聞き耳を立てていた執事パーカーが、それを聞かなかったというのも不思議だ。
しかしまあ、それらは瑕疵に過ぎない。これほど素晴らしい作品なのだから、ツッコミどころの一つや二つあったって別にいいし、作者を責める気にはなれない。
⑤ 指輪の件。最後にアーシュラが、それを池に投げ捨てた時のことを話すとばかり思っていたので、そのことについて何も語られないのでちょっと驚いた。
私が作者なら、それと、ポワロが指輪をアーシュラに返すシーンを入れたと思う。いや、それではいささか陳腐か。
* これは疑問ではないが、衝撃を受けた点。当時英国では、医者は患者を「療養所」(精神病院)に勝手に自由に入れることができた!これも戸籍というものが
ないからユルイのかも知れないが、患者の家族にも内緒で、しかも偽名で、偽の診断書で、いつまでも入所させておけた!実に恐ろしい。
* シェパードは、若いラルフが自分を誰よりも信頼しているのをいいことに、彼に罪をなすりつけ、密かに新妻と引き離し、永久に(!)精神病院に閉じ込めておく
つもりだった。しかもそのことについて、彼への謝罪とか後悔とかを一言も書き残していない。人間らしい感情を持たない冷血漢ではないか。
一方で、自分を知的だとうぬぼれているが、大胆なようで小心者で、ポワロも姉カロラインも認めているように「性格が弱い」人間だとも言える。
ついでに言うと、医者は日本では金持ちのイメージなので、医者が金に困ってゆすりを働く・・という点が、彼我の違いを感じさせる。
* いつか原書を手に入れて読んでみたいという目標ができた。大久保康雄訳で読んだが、一部意味の分からない箇所があるので。「カラー箱」とか。
* この作品をドラマ化した三谷幸喜の「黒井戸殺し」を録画したまま、だいぶ経ってしまった。原作を読んでから見ようと思ったので。
しばらくして読後の余韻が冷めたら見ようと楽しみにしているところです。