1月15日東京グローブ座で、ジェームズ・ゴールドマン作「冬のライオン」を観た(高瀬久男演出)。
知らない作者の知らない作品だったが、麻実れい見たさに出かけて行って驚いた。
「1968年アカデミー賞3部門受賞、ブロードウェイでも繰り返し上演されてきた歴史ドラマの名作」というチラシの文句の通り、ストーリーの面白さ、
構成の緻密さ、人間性の捉え方の深さ等々に圧倒された。
ヘンリーは元フランス王妃だったエレノアとの結婚によって広大な領地を手に入れ、イングランド国王ヘンリー二世となったが、三人の息子をもうけた後、彼の愛は別の女たちに移り、エレノアは幽閉されてしまう。今彼の寵愛を受けているのはフランス皇女アレーだ。
三兄弟はそれぞれ親の愛を求めている。母に愛される長男は父の愛を欲しがり、父に愛される三男は母の愛を求め、どちらからも愛されてこなかった次男は時にひがんで見せながらもまだ両親の愛をすっかり諦めてはいない。
何よりもまず平幹二朗と麻実れいのセリフ回しと声が素晴しい。
権謀術数の数々、陰謀、腹の探り合い。7人の登場人物がそれぞれ手を組んだかと思うと離れ、いやもう目まぐるしい。愛憎を巡る重苦しい話なのに、コミカルな場面も多い。作者はサービス精神も旺盛のようだ。
王妃エレノアの部屋のシーンでは、正面の壁にフランス、バイユーの有名なタペストリーが掛かっている。元フランス王妃だった彼女の部屋にふさわしいが、つい4ヶ月ほど前、実物を見て来たばかりなので驚いた。うんと拡大してあるが、その柄といい地の色といい実に美しい(美術:堀尾幸男)。
音楽(永田平八)はシンプルだがセンスがいい。12世紀の物語にふさわしく、大太鼓の刻むリズムにフルートの旋律を乗せるなど、素朴な感じが出ていた。
皇女アレーは一途だが、ただの一途なだけの女ではなく、賢い。アレー役の高橋礼恵は声もよく可憐な姫を好演。この人を以前観たのは何しろ三島の「サド侯爵夫人」のルネ役だったので、今回ちょっと目を見張らされた。役者ってすごいと改めて感心。
若きフランス王フィリップ二世役の城全能成は、いつもながらの美声と明快な演技を見せる。
三男ジョン役の小林十市は、元バレーダンサーらしく軽快な身のこなしで、少々思慮の足りない末っ子を演じた。このジョンが、のちのヘンリー六世やリチャード三世たちの先祖となるのかと思うと感慨深い。
小田島雄志の訳は流麗で美しい。しかもそれを麻実れいの声で聴ける喜び!その声と美貌と存在感には相変わらずしびれてしまう。
昨年1月にはリチャード三世(15世紀)を観、秋にはヘンリー六世(同)を、そして今回ヘンリー二世(12世紀)とだんだん時代がさかのぼってきた。それにしても英語圏にはいい戯曲が多いと改めて思った。
知らない作者の知らない作品だったが、麻実れい見たさに出かけて行って驚いた。
「1968年アカデミー賞3部門受賞、ブロードウェイでも繰り返し上演されてきた歴史ドラマの名作」というチラシの文句の通り、ストーリーの面白さ、
構成の緻密さ、人間性の捉え方の深さ等々に圧倒された。
ヘンリーは元フランス王妃だったエレノアとの結婚によって広大な領地を手に入れ、イングランド国王ヘンリー二世となったが、三人の息子をもうけた後、彼の愛は別の女たちに移り、エレノアは幽閉されてしまう。今彼の寵愛を受けているのはフランス皇女アレーだ。
三兄弟はそれぞれ親の愛を求めている。母に愛される長男は父の愛を欲しがり、父に愛される三男は母の愛を求め、どちらからも愛されてこなかった次男は時にひがんで見せながらもまだ両親の愛をすっかり諦めてはいない。
何よりもまず平幹二朗と麻実れいのセリフ回しと声が素晴しい。
権謀術数の数々、陰謀、腹の探り合い。7人の登場人物がそれぞれ手を組んだかと思うと離れ、いやもう目まぐるしい。愛憎を巡る重苦しい話なのに、コミカルな場面も多い。作者はサービス精神も旺盛のようだ。
王妃エレノアの部屋のシーンでは、正面の壁にフランス、バイユーの有名なタペストリーが掛かっている。元フランス王妃だった彼女の部屋にふさわしいが、つい4ヶ月ほど前、実物を見て来たばかりなので驚いた。うんと拡大してあるが、その柄といい地の色といい実に美しい(美術:堀尾幸男)。
音楽(永田平八)はシンプルだがセンスがいい。12世紀の物語にふさわしく、大太鼓の刻むリズムにフルートの旋律を乗せるなど、素朴な感じが出ていた。
皇女アレーは一途だが、ただの一途なだけの女ではなく、賢い。アレー役の高橋礼恵は声もよく可憐な姫を好演。この人を以前観たのは何しろ三島の「サド侯爵夫人」のルネ役だったので、今回ちょっと目を見張らされた。役者ってすごいと改めて感心。
若きフランス王フィリップ二世役の城全能成は、いつもながらの美声と明快な演技を見せる。
三男ジョン役の小林十市は、元バレーダンサーらしく軽快な身のこなしで、少々思慮の足りない末っ子を演じた。このジョンが、のちのヘンリー六世やリチャード三世たちの先祖となるのかと思うと感慨深い。
小田島雄志の訳は流麗で美しい。しかもそれを麻実れいの声で聴ける喜び!その声と美貌と存在感には相変わらずしびれてしまう。
昨年1月にはリチャード三世(15世紀)を観、秋にはヘンリー六世(同)を、そして今回ヘンリー二世(12世紀)とだんだん時代がさかのぼってきた。それにしても英語圏にはいい戯曲が多いと改めて思った。