ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上ひさし「雪やこんこん」

2012-03-18 20:53:57 | 芝居
3月5日紀伊国屋サザンシアターで、井上ひさし作「雪やこんこん」をみた(演出:鵜山仁)。

大衆劇団「中村梅子一座」が北関東の雪深い旅館に併設された芝居小屋にやってくる。総勢18名のはずが、途中、給金代わりに
かつらと衣装を持ってドロンする者が続出し、着いた時にはたったの6名。
旅館の女将は大衆演劇の元スターで、尊敬する梅子とその一座を迎え、何かと世話を焼く。
正月興行まで何とか持ちこたえねば・・女座長・中村梅子起死回生の大芝居が始まる!

散りばめられた名セリフの数々が耳に快い。だが残念ながら全体を通して死語が多く、しかも読むのでなく耳から入ってくる
だけなので、とっさに意味が把握できないことが多い。たとえば「ビカチョウ」と聞いて「鼻下長」だなんて想像つかないし、
ましてその意味なんて到底分かりっこない。

どんでん返しが二回あるようだが(そこまでは分かる)、話の筋にイマイチついて行けない。話の流れが早い所と遅い所が
あって・・。
或る意味、一人よがりと言えるのでは?お客を置き去りにとっとと先へ進んでしまうのだから。こちらもアレ?と思いながらも
劇中劇や名セリフが楽しいので、マッイイカと流して(忘れて)しまうのだから、それでいいのかも知れないが。
芝居がはねた後で思い出してみると、やっぱり引っかかってしまう。

座長役の高畑淳子はもちろん達者なもの。女将役のキムラ緑子が、言葉使いも動きも実に滑らかで美しい。
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オペラ「沈黙」

2012-03-06 21:13:30 | オペラ
2月16日新国立劇場中劇場で、松村禎三作曲のオペラ「沈黙」をみた(原作:遠藤周作、オケ:東京交響楽団、演出:
宮田慶子)。

キリシタンへの弾圧が過酷を極めていた17世紀初頭の長崎にひそかに渡った若き宣教師ロドリゴ。目の前で
村の貧しい信者たちが次々と捕えられ、凄惨な拷問を経て死んでゆくが、それを助けることもできず、神からの
救いの手が差し伸べられることもない。やがて自らも捕えられ、信者を救うためにはまず彼自身が棄教すべきだ、と
恩師フェレイラに迫られる。ロドリゴは必死に神に祈るが、神の沈黙は破られず、絶望の淵で踏み絵と向かい合う・・。

日本語上演で、かつ日本語字幕つき。というのもパードレ(神父)、ハライソ(天国)、オラショ(祈り)、
コンヒサン(告解)等々、耳慣れぬキリシタン用語とラテン語そして長崎弁がたくさん出てくるからで、この
字幕は大いに役に立った。

マカオでの神父二人の会話など、レシタティーヴォ風というのか、音の変化が少なく退屈だったが、合唱は
冒頭から迫力があり美しい。
1幕終盤、早くも涙涙・・、と思ったが、実際はここが山場だった・・。

歌手はオハル役の石橋栄実が素晴らしい。声量、表現力共に完璧。ロドリゴ役の小原啓楼もよかった。

「びるぜん(童貞女)マリアさま」という表現が字幕に出てきて驚いた。たぶんバージン(virgin)から来た語だろう。

冒頭のシーンがよく分からない。キチジローがなぜマカオに渡ったのか、それを説明してほしい(昔原作を読んだこと
があるが、忘れた)。
2幕、ロドリゴ市中引き廻しのシーンの後がもたつくのが残念。他のシーンでも、場の転換のたびに音がいったん途切れる
のが残念(これは作曲家に責任がある)。
キチジローの出番がちょっと多過ぎる。まるで彼が主役のようだ。

台本も作曲家が書いているが、ロドリゴが処刑前夜、牢で「イエスよ、あなたも処刑の前夜、牢で・・」と言うのは
おかしい。イエスは明け方逮捕され、午前10時頃に処刑されたのだから、牢で一夜を過ごしたことはない。

もう一つ、ピラトをヘロデと同じ「太って悪い男」とか何とか言うのはおかしい。百歩譲ってもしかしたら太って
いたかも知れないが、彼はイエスを処刑するのに反対したし、興奮した民衆をなだめようと骨折った人なのだから。

村松という人はこの台本を書く前に聖書、特に福音書をもっとていねいに読んでおくべきだった。
せっかくの純国産オペラなのに、そしてこんなにいい素材があるのに、これでは恥ずかしい。


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