ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「根っこ」

2013-04-22 15:39:55 | 芝居
4月9日赤坂REDシアターで、アーノルド・ウェスカー作「根っこ」をみた(地人会公演、演出:鵜山仁)。

英国北東部に住む夫婦(渡辺えり・金内喜久夫)のもとへ、ロンドンでウェイトレスをしている末娘ビーティ(占部房子)が
久しぶりに帰ってくる。まずは姉ジェニー夫婦(七瀬なつみ・宮川浩)の家へ。そして両親の家へ。二週間後には恋人ロニー
もこの地へやって来るらしい・・・。

作者は英国を代表する劇作家の一人で、2012年が生誕80年の年にあたり、英国では様々な公演が行われた由。
2011年秋からのナショナルシアターでの「調理場」は、連日超満員だったとか。
この作品は、その「調理場」を含む三部作の一作だという。

本が一冊もない家庭で育ったビーティはロンドンでロニーという青年に一目ぼれするが、彼は教養があり、共産主義者で、
彼女に圧倒的な影響を与える。彼女は久しぶりに帰郷したというのに、家族の前で、彼の口調で演説し続ける。
二週間後、いよいよ婚約者ロニーが来るという日、両親の家に一族が続々と集まって来る。ご馳走を並べ、ドレスアップ
した母。ところが帰宅した父は臨時雇いに降格されたとがっくりしている。それでも気を取り直してスーツに
着替える父。ところが・・・。

ヒロイン・ビーティが、恋人の言葉の受け売りで、穏やかな義兄につっかかってゆくさまは、実に見苦しく聞き苦しい。
その恋人の方はと言えば、彼女との付き合いに困難を感じていたのだった。
育った環境があまりに違うと、恋愛関係はやはり難しい、と陳腐な感慨を抱くしかない。

姉ジェニー役の七瀬なつみの田舎っぽいしゃべり方が、ほのぼのしていて感じがいい。
母役の渡辺えりも安定感のある的確な演技。主役の占部房子も熱演。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

8月のラブソング

2013-04-12 21:45:10 | 芝居
3月22日下北沢・本多劇場で、アレクセイ・アルブーゾフ作「8月のラブソング」をみた(演出:鵜山仁)。

加藤健一と戸田恵子の二人芝居。

1968年夏。バルト海に面した港町リガのサナトリウム。医師(加藤健一)が中庭で新聞を読んでいると、派手な身なりの
女性(戸田恵子)が現われる。彼女は彼が今朝診察室に呼び出した患者だった。サナトリウムでの彼女の奇妙な行動を注意すると、
身勝手な理由をつけて耳を貸そうとしない。彼はその居丈高な態度にすっかり憤慨してしまう。なんて女だ!・・。価値観も性格も
全く違う二人は、共通の言葉で会話ができず、すぐ喧嘩になってしまう。理解し合うことなど到底無理だと思っていた二人だが、
やがて・・。

生真面目な医者と、サーカス団の芸人だったハチャメチャな患者という取り合わせ。

第2次大戦の傷跡が人々の心に生々しく残っている。戦争で女は一人息子を、男は妻を失った。だが男には娘がいるのに対し、
女は夫の心をも失っている・・。

二人の寂しさが切々と伝わってくる。そう、二人の共通点は寂しさ。それが磁石のように二人を近づける。

中間部には、まるで戸田恵子に当て書きしたかのような歌と踊りのシーンあり。
場面ごとに変わるヒロインの衣装も楽しい。
戸田さんの美貌、美声、二人の演技の味わい。どれも素晴らしい。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミュージカル「スリル・ミー」

2013-04-06 16:53:53 | ミュージカル
3月15日天王洲 銀河劇場で、ミュージカル「スリル・ミー」をみた(原作・脚本・音楽:ステファン・ドルギノフ、
演出:栗山民也)。

この日は小西遼生と良知真次の組み合わせ。

刑務所での囚人の仮釈放審議委員会。審議官に問われ、「私」(良知真治)は34年前に犯した罪を語り始める。「私」と
「彼」(小西遼生)はなぜ子供を殺したのか。二人に何が起きたのか・・。ニーチェを崇拝する「彼」は、犯罪によってしか
自分を満たせず、「私」はそんな「彼」を愛するがゆえに、求められるまま犯罪に手を貸してゆく。より深い束縛を求める
二人は、互いの要求すべてに応えるという契約書を作る。裏切りが許されない二人の犯罪は次第にエスカレートしていき・・。

1920年代に実際に起きた事件をもとにした「少年二人の究極の愛の物語」だというが。

愛は「私」の側にしかない。「彼」は友人の愛を利用して自分の欲望を満たそうと企むだけ。親の愛が弟にのみ注がれてきた
ため彼の心は憎しみで一杯なのだ。

ミュージカルとは言いながら、普通のセリフも多いし、特に歌である必然性も感じられない。それに二人とも特に歌が
うまいわけでもない。ただピアノ(朴勝哲)はうまかった。

最後に二人の関係が劇的に逆転するところが面白い。

遥か昔、少女マンガで一世を風靡したボーイズラブの世界を懐かしく思い出した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする