ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「タンホイザー」

2013-02-23 10:54:41 | オペラ
2月5日新国立劇場オペラパレスで、ワーグナー作曲のオペラ「タンホイザー」をみた(演出:ハンス=ペーター・レーマン)。

今年はワーグナー生誕200周年。その幕開けにこの中期の傑作を初台で5年ぶりに上演する由。

序曲の後にバレーとバレー用の音楽がついたパリ版。

中世ドイツ。騎士タンホイザーは愛欲の女神ヴェーヌスの虜となるが、やがてこの歓楽の日々に飽きて、彼を愛する清らかな
乙女エリザベートが待つ人間世界に戻る。温かく迎えられたものの、城で開催された歌合戦に参加し、ヴェーヌスを讃えて
しまう。この大罪への赦しを得るためローマ法王のもとへ懺悔の旅に出るが叶わず、官能の愛で絶望を癒そうとする。
しかしエリーザベトは自らの命を犠牲に彼の罪を償い、救済されたタンホイザーも息絶える。

音楽に切れ目がないので、曲が終わった後に拍手できない!!これだからワーグナーは好きだ。
いつも歌手のアリアの後で繰り返される拍手に悩まされてきたので。

第3幕でヴェーヌス曰く「永遠に私のものになりなさい」「ああ、取り逃がしてしまった」。
つまりここではヴィーナスはちょうどファウストのメフィストフェレスのような存在とされている。
キリスト教の神とギリシャ神話の神(美の女神ヴィーナス)との対比。後者は地獄のイメージ。
精神と肉体との二元論は最も西洋的な世界観なので、私たち東洋人には分かりにくいが、それを除けば音楽は素晴らしいし、
聴かせどころのアリアも充実しているし、ストーリーはドラマチック、音楽がそれにぴったり合って・・たまらない。

片思いの相手エリーザベトにやさしく話しかけても返事ももらえぬヴォルフラム哀れ。
君もいつかきっといい人に巡り会えるよ、と慰めたくなってしまう。

エリーザベトが愛する人の犠牲となることが主人公の運命の分かれ道なのだが、実際に彼女が死ぬ場面がないので
少し説得力に欠ける。

ヴェーヌス役のエレナ・ツィトコーワ、エリーザベト役のミーガン・ミラー、領主役のクリスティン・ジグムンドソンらが好演。
衣裳には問題あり。
ヴェーヌスもエリーザベトも金髪に白い衣装でほとんど同じ姿形なのはいけない。
ここはやはりヴェーヌスを茶髪か黒髪の女にし、衣裳は真紅か何かにしてくっきりと対比させるべきだ。愛欲の象徴なのだから。

赦しを求めてローマに旅したタンホイザーは、法王に「巡礼の杖に葉が生え花が咲くことがないように、ヴェヌスベルクへ行った者に救いはない」
と見放される。しかしラスト、巡礼の杖に葉が生え、彼が赦されたことが示される。
今回、その葉の色は銀色だった。
なぜ緑したたる葉にしない?緑の葉こそが許しと希望の印として私たちの目に沁み入るのではないだろうか。
このように、今回の演出は色彩の点でいくつか違和感があった。

歌合戦のテーマが「愛の本質」! 
清らかな愛への憧れ。自分のために進んで犠牲となってくれる女性によって救われたいという願望。
まさに作者(台本も作曲者が書いた)の生涯を貫くテーマだ。

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オペラ「フィガロの結婚」

2013-02-12 18:11:58 | オペラ
1月15日武蔵野市民文化会館大ホールで、モーツアルト作曲のオペラ「フィガロの結婚」をみた(プラハ国立劇場、指揮:ヤン・
ハルペツキー、演出:ヨゼフ・プルーデク)。

伯爵家に仕えるフィガロとスザンナは結婚式を挙げる準備をしているが、好色な伯爵がスザンナに魔手を伸ばし、フィガロには
証文を手に結婚を迫る女性が現われるなど障害が降りかかる。果たして2人は無事に結婚できるのか・・。

うっかり忘れていたが、4年位前に同じプロダクションのを見ていた。但し歌手は別の人たち。
伯爵夫人の真紅の衣装などが同じなので、その時のことを思い出した。
ただ字幕が新しくなっているようだ。スザンナのセリフ「伯爵は援助交際がお望みのようなんです・・」など笑える。

ケルビーノ役のミハエラ・カプストヴァーは声がいい。
フィガロ役のミロッシュ・ホラークは堂々とした偉丈夫で、声量があり気持ちがいい。
スザンナ役のペトラ・ペルラ・ノトヴァーは可愛くて愛敬があり動きもきびきび。
今回の呼び物、伯爵夫人役のイザベル・レイは、声質が硬く、ほんの少しだが音程が低めで評者の好みではなかった。だが
コミカルな演技がうまく、客席を沸かせてくれた。ケルビーノが隠れているとばかり思っていた部屋からスザンナが出てきた
時には安堵のあまりバタッと倒れるが、その倒れっぷりがお見事。
伯爵役のイジー・ハーイエクは姿も美しく、立派な伯爵という感じで素敵だったが、その分いやらしいセクハラ中年男には全然
見えないのも少々困るところだ。もちろんこれはないものねだりです。
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「ハーベスト」

2013-02-01 22:52:39 | 芝居
12月24日世田谷パブリックシアターで、リチャード・ビーン作「ハーベスト」をみた(演出:森新太郎)。

養豚業に生涯こだわり続けた男の19歳から110歳までの激動の人生が、イギリスの農村を舞台に描かれる。戦争や政府の無策に
襲われながらも、ひたすら前向きに、日々の生活を謳歌しようとする人々のたくましさを、ユーモアと風刺の効いたセリフを交えつつ
現代までの約百年間にわたるドラマとして描き切った大作の由。

1914年、貧しい農家の長男ウィリアム(渡辺徹)は弟アルバート(平岳大)と、どちらが戦争に行くかでもめている。二人共
行きたいのだ。結局ウィリアムが行くことになるが、足をやられて戦後は車椅子生活となる。弟はモーディ(七瀬なつみ)と結婚する
が、跡取りの子供がなかなかできず苦しむ。彼は激しい性格が災いして早死にする。
やがて、捕虜となったドイツ兵ステファン(佐藤アツヒロ)がモーディの姪ローラ(小島聖)と恋仲になる。二人は5人の子供に恵ま
れるが、皆成人すると村を出て行ってしまう。
年老いたウィリアムとローラは養豚業を引き継いでくれる若者がいないので求人広告を出し、面接するが・・。

展開がユニークで、語り口がユーモラス。さすが2005年ロンドンで初演時、各賞を受賞し英国演劇界の話題をさらったというだけ
のことはある。
ただ翻訳物は聞き慣れない長い名前や地名が飛び交うのだから、いつもより少しゆっくり目にしゃべってほしい。確かに休憩を含めて
3時間は、それだけで十分長いけれど。

弟が兄に或る重大な「頼み」事をして外に出、弟の妻が戻って来ると、兄は彼女にやさしく語りかけ、彼女は「あの人まだその辺に
いるんじゃない?」と言いながらカーテンを閉めて彼に近づく!ええっ!?という展開だが、そこで暗転。次の場ではその後の消息
が語られない。あのあと2人の間には何があったのか・・知りたい・・。
が、とにかく跡継ぎとなる子供が生まれなかったことだけは確かなようだ。

リチャード・ビーンという劇作家のユニークな世界を楽しませてもらった。

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