9月24日世田谷パブリックシアターで、バーナード・ショウ作「ジャンヌ」をみた(演出:鵜山仁)。
15世紀、フランスの片田舎に生まれたジャンヌ(笹本玲奈)は、ある時突然「神の声」を聞く。その声に導かれるまま、彼女はフランス
軍の先頭に立ってイギリス軍を破った。だが「神」と直接話す力を持つジャンヌに、人々は恐れを抱き始める。やがて異端とみなされ
宗教裁判にかけられることに・・。
彼女の周りでは次々に奇跡が起こる。卵を産まなくなった鶏が突然たくさん産み始めたり、ある兵士の死を予言するとそれが現実と
なったり、臣下と服を取り替えていた王太子シャルル(浅野雅博)をすぐに見破ったり、オルレアンではフランス軍が待ち望んでいた
西風が吹いたり・・・。
オルレアンでイギリス軍相手に苦戦していた指揮官デュノア(伊礼彼方)は、この奇跡に驚き「これからはお前が指揮官だ」と言う。
するとジャンヌは膝を折り、彼にすがりついて泣き出す。この時初めて恐れを感じたらしい。実に人間的で胸に迫る場面だ。
彼女の出現は仏軍とフランスにとって救いだったが、宗教家たちにとっては微妙だった。神と直接対話すると公言し、奇跡を起こし、
常に大胆に自信満々に発言する彼女を前にして、自分たちの立場がなくなるのだから当然だろう。
一体この娘、自分たち高位の聖職者たちを差し置いて偉そうに命令するこの娘は、本当に神がフランスに遣わしたもうた救い主なのか、
それともただの狂信者に過ぎないのか?
確かに「マクベス」のように、魔女のような邪悪な存在が人間をそそのかして破滅に至らしめることは、当時の人々にとって大いに考え
られたし、そういうもののけが自分を聖者と思い込ませることもたやすいだろう、というわけだ。
驚くべきことに、結局彼女はイギリス軍に売られたのだった!
かくて裁判が始まる。ジャンヌを救おうとする人々は彼女に妥協するよう説得し、彼女も途中までは必死で助かろうとするが、最後には
驚くべき冷静さで火炙りの刑を選ぶ。それが神のみ心であり自分の取るべき道だと悟ったのだ。
エピローグが予想外にユーモラス。国王となったシャルルの寝室に、死んだジャンヌの霊が現れる。そこに他の死んだ人々の霊やらまだ
生きている人やらも現れ、みな彼女の功績を称えるが、彼女がそれならよみがえりましょうか?と尋ねると、皆うろたえ、それは困る・・
と尻込みしながら一人また一人と去ってゆくのだ。実におかしい。
ジャンヌ役の笹本玲奈(紅一点)は熱演だが、声が甲高くなることがある。
修道士マルタン役の大沢健が好演。
司教役の村井國夫はいつもながら素晴らしい美声を聞かせてくれた。
難解な論争シーンが果てしなく続くので、途中つい睡魔に襲われてしまい、もったいないことをした。またぜひ見てみたい。
次回は原作を読んでから行くつもり。
15世紀、フランスの片田舎に生まれたジャンヌ(笹本玲奈)は、ある時突然「神の声」を聞く。その声に導かれるまま、彼女はフランス
軍の先頭に立ってイギリス軍を破った。だが「神」と直接話す力を持つジャンヌに、人々は恐れを抱き始める。やがて異端とみなされ
宗教裁判にかけられることに・・。
彼女の周りでは次々に奇跡が起こる。卵を産まなくなった鶏が突然たくさん産み始めたり、ある兵士の死を予言するとそれが現実と
なったり、臣下と服を取り替えていた王太子シャルル(浅野雅博)をすぐに見破ったり、オルレアンではフランス軍が待ち望んでいた
西風が吹いたり・・・。
オルレアンでイギリス軍相手に苦戦していた指揮官デュノア(伊礼彼方)は、この奇跡に驚き「これからはお前が指揮官だ」と言う。
するとジャンヌは膝を折り、彼にすがりついて泣き出す。この時初めて恐れを感じたらしい。実に人間的で胸に迫る場面だ。
彼女の出現は仏軍とフランスにとって救いだったが、宗教家たちにとっては微妙だった。神と直接対話すると公言し、奇跡を起こし、
常に大胆に自信満々に発言する彼女を前にして、自分たちの立場がなくなるのだから当然だろう。
一体この娘、自分たち高位の聖職者たちを差し置いて偉そうに命令するこの娘は、本当に神がフランスに遣わしたもうた救い主なのか、
それともただの狂信者に過ぎないのか?
確かに「マクベス」のように、魔女のような邪悪な存在が人間をそそのかして破滅に至らしめることは、当時の人々にとって大いに考え
られたし、そういうもののけが自分を聖者と思い込ませることもたやすいだろう、というわけだ。
驚くべきことに、結局彼女はイギリス軍に売られたのだった!
かくて裁判が始まる。ジャンヌを救おうとする人々は彼女に妥協するよう説得し、彼女も途中までは必死で助かろうとするが、最後には
驚くべき冷静さで火炙りの刑を選ぶ。それが神のみ心であり自分の取るべき道だと悟ったのだ。
エピローグが予想外にユーモラス。国王となったシャルルの寝室に、死んだジャンヌの霊が現れる。そこに他の死んだ人々の霊やらまだ
生きている人やらも現れ、みな彼女の功績を称えるが、彼女がそれならよみがえりましょうか?と尋ねると、皆うろたえ、それは困る・・
と尻込みしながら一人また一人と去ってゆくのだ。実におかしい。
ジャンヌ役の笹本玲奈(紅一点)は熱演だが、声が甲高くなることがある。
修道士マルタン役の大沢健が好演。
司教役の村井國夫はいつもながら素晴らしい美声を聞かせてくれた。
難解な論争シーンが果てしなく続くので、途中つい睡魔に襲われてしまい、もったいないことをした。またぜひ見てみたい。
次回は原作を読んでから行くつもり。