11月27日紀伊国屋サザンシアターで、三島由紀夫原作「豊饒の海」を見た(脚本:長田育恵、演出:マックス・ウェブスター)。
三島由紀夫畢生の大作「豊饒の海」初の舞台化。
松枝(まつがえ)清顕は貴族の生まれ。綾倉聡子は彼の幼馴染。二人は姉弟のように育てられた特別な存在であった。聡子はいつからか清顕を
恋い慕うようになっていたが、洞院宮治典王殿下と婚約する。それによって聡子への恋情に気づいた清顕は勅許が発せられた後にも関わらず
親友本多繁邦の協力の元、聡子との逢瀬を重ね、やがて聡子は妊娠してしまう。清顕と聡子の関係が両家に知れ、聡子は清顕の子を堕胎する。
聡子は失意の中、門跡寺院「月修寺」で自ら髪を下ろし出家する。清顕は聡子に一目会おうと雪の降る中、月修寺に行くが門前払いされてしまう。
雪の中、肺炎をこじらせ、20歳の若さで亡くなる直前に、清顕は親友・本多繁邦に「又会ふぜ。きつと会ふ。滝の下で」と言い、転生しての
再会を約束する。ともに過ごした青春の、輝かしい煌めきの記憶を追い続ける本多の人生に松枝清顕の生まれ変わりとして登場する三つの黒子の
人々、飯沼勲、ジン・ジャン、安永透・・・。夢と転生・・・。「清顕」を追い求めた本多にとって、彼の存在は一体なんだったのか。そして
なぜそこまで清顕に執着したのか・・・。
存在とは、世界とは、そして「わたし」とは・・・。生きて、死ぬ。そして生まれる。(チラシより)
親友・松枝(東出昌大)に死なれた本多(大鶴佐助)は、その後の人生を、松枝の幻を追い求めるようにして生きる。
老年に達した本多(笈田ヨシ)は灯台で働く18歳の青年、安永透(宮沢氷魚)と出会い、松枝と同じく左脇腹に3つ並んだほくろを見て
衝撃を受ける。この若者は松枝の生まれ変わりだと確信した彼は、天涯孤独な彼を養子にして高校に通わせるが・・・。
中年の本多(首藤康之)は剣道をやる憂国の青年、飯沼勲(上杉柊平)と出会い、例のほくろを見て、何とかして彼の命を助けたいと画策
するが・・・。
その後、彼はタイの王女、ジン・ジャン(田中美甫)の体にも同じほくろを発見して驚愕し・・・。
夢と現実が交錯し、時間も激しく前後するが、演出が巧みなのでさほど戸惑うことなく、原作を読んでいない評者も何とかついて行けた。
舞台も俳優たちの所作も美しい(美術:松井るみ)。
松枝清顕役の東出昌大と飯沼勲役の上杉柊平は声がいい。
老年の本多の妻役の神野三鈴が輝いている。これまでこの人を何度か見た中で、一番よかった。甘い張りのある声も魅力的(鈴木京香に
似ている)。
聡子付きの女中・蓼科役の大西多摩恵も好演。
男女の仲というのは難しい。松枝清顕と聡子の場合も、微妙なすれ違い、間の悪さ、誤解のために、運の悪いことになってしまった。悲運。
だが二人には妙な厚かましさ、ふてぶてしさがあるのも確かだ。
いやしかし、こんなことを考えるのはたぶん無意味だ。
三島はただ、死に向かう愛と性を描きたくて、この設定とストーリーを作り上げたのだろうから。
これが三島の絶筆だという。
美しく死ぬことへの渇望・・・。
三島の死は多くの人に衝撃を与えた。それまで書き溜めていた詩や小説を焼き捨てて、神学研究の道に方向転換した人もいるし、
作家の浅田次郎に至っては、あの事件がきっかけで自衛隊に入隊したというから驚く。
スタイリッシュな演出がいい。
音楽(音響)もいい。
久々にずっしりとした手応えのある芝居に出会えた。
三島由紀夫畢生の大作「豊饒の海」初の舞台化。
松枝(まつがえ)清顕は貴族の生まれ。綾倉聡子は彼の幼馴染。二人は姉弟のように育てられた特別な存在であった。聡子はいつからか清顕を
恋い慕うようになっていたが、洞院宮治典王殿下と婚約する。それによって聡子への恋情に気づいた清顕は勅許が発せられた後にも関わらず
親友本多繁邦の協力の元、聡子との逢瀬を重ね、やがて聡子は妊娠してしまう。清顕と聡子の関係が両家に知れ、聡子は清顕の子を堕胎する。
聡子は失意の中、門跡寺院「月修寺」で自ら髪を下ろし出家する。清顕は聡子に一目会おうと雪の降る中、月修寺に行くが門前払いされてしまう。
雪の中、肺炎をこじらせ、20歳の若さで亡くなる直前に、清顕は親友・本多繁邦に「又会ふぜ。きつと会ふ。滝の下で」と言い、転生しての
再会を約束する。ともに過ごした青春の、輝かしい煌めきの記憶を追い続ける本多の人生に松枝清顕の生まれ変わりとして登場する三つの黒子の
人々、飯沼勲、ジン・ジャン、安永透・・・。夢と転生・・・。「清顕」を追い求めた本多にとって、彼の存在は一体なんだったのか。そして
なぜそこまで清顕に執着したのか・・・。
存在とは、世界とは、そして「わたし」とは・・・。生きて、死ぬ。そして生まれる。(チラシより)
親友・松枝(東出昌大)に死なれた本多(大鶴佐助)は、その後の人生を、松枝の幻を追い求めるようにして生きる。
老年に達した本多(笈田ヨシ)は灯台で働く18歳の青年、安永透(宮沢氷魚)と出会い、松枝と同じく左脇腹に3つ並んだほくろを見て
衝撃を受ける。この若者は松枝の生まれ変わりだと確信した彼は、天涯孤独な彼を養子にして高校に通わせるが・・・。
中年の本多(首藤康之)は剣道をやる憂国の青年、飯沼勲(上杉柊平)と出会い、例のほくろを見て、何とかして彼の命を助けたいと画策
するが・・・。
その後、彼はタイの王女、ジン・ジャン(田中美甫)の体にも同じほくろを発見して驚愕し・・・。
夢と現実が交錯し、時間も激しく前後するが、演出が巧みなのでさほど戸惑うことなく、原作を読んでいない評者も何とかついて行けた。
舞台も俳優たちの所作も美しい(美術:松井るみ)。
松枝清顕役の東出昌大と飯沼勲役の上杉柊平は声がいい。
老年の本多の妻役の神野三鈴が輝いている。これまでこの人を何度か見た中で、一番よかった。甘い張りのある声も魅力的(鈴木京香に
似ている)。
聡子付きの女中・蓼科役の大西多摩恵も好演。
男女の仲というのは難しい。松枝清顕と聡子の場合も、微妙なすれ違い、間の悪さ、誤解のために、運の悪いことになってしまった。悲運。
だが二人には妙な厚かましさ、ふてぶてしさがあるのも確かだ。
いやしかし、こんなことを考えるのはたぶん無意味だ。
三島はただ、死に向かう愛と性を描きたくて、この設定とストーリーを作り上げたのだろうから。
これが三島の絶筆だという。
美しく死ぬことへの渇望・・・。
三島の死は多くの人に衝撃を与えた。それまで書き溜めていた詩や小説を焼き捨てて、神学研究の道に方向転換した人もいるし、
作家の浅田次郎に至っては、あの事件がきっかけで自衛隊に入隊したというから驚く。
スタイリッシュな演出がいい。
音楽(音響)もいい。
久々にずっしりとした手応えのある芝居に出会えた。