5月8日紀伊国屋サザンシアターで、井上ひさし作「たいこどんどん」を見た(こまつ座公演、演出:ラサール石井)。
花のお江戸の若旦那・清之助と太鼓持ちの桃八が、ひょんなことから江戸を離れ、北へ北へと流されて行き、行く先々で様々な災難に会いながらも
望郷の思い止まず、それを支えに何とか生き延びるという9年間の物語。
この作品は2011年に蜷川幸雄演出で見たことあり。鈴木京香の艶やかな美しさと色気、そして主役二人の目まぐるしい運命の転変、奇想天外な
話の展開が印象的だった。それと、Amazing grace がしつこく流れてうんざりしたことも忘れられない。
今回、若旦那役の窪塚俊介が急病のため降板し、代わって江端英久が急遽出演することになった。
前回見たのと演出が違うので、いろいろ面白い。
まず冒頭、桃八(柳家喬太郎)が落語家として登場。座布団に座って語り出す(ラストも同様。つまり枠構造)。
品川の女郎屋で薩摩の侍たちが飲み騒いでいるシーンは、簡単なふすまを動かしてうまく見せるのが楽しい。
音楽も違う。桃八が鉱山に売られた時はドラマチックに悲劇を盛り上げて感動的。
ただ、歌は古いまま。特に二人が「江戸に帰ろう」と歌う歌がつまらなくて聞いているだけでも恥ずかしい。
ラスト、桃八が落語家として話を終え、黒子が座布団を片づけ、顔の覆いを取ると、これが清之助。
だが面白くない。何かもっといい終わり方はないものか。
船長やら釜石の宿の主人やらを演じる木村靖司は、うまいし声に張りがあっていい。
女郎・袖ヶ浦やら宿の女将やらを演じるあめくみちこは、もちろん安定した演技。
この芝居は言わば18禁のセリフと歌詞だらけ。もろに露骨なセリフの数々に、改めて驚いた。ただ、東北弁のせいもあり、意味がよく分からない
から聞いている方はそうでもないが、練習する間、役者さん達はさぞ赤面したことだろうと想像するとおかしい。
それぞれの土地の方言が面白い。
それにしても、暗い話だ。
山賊たちとの謎解きごっこのシーンなど楽しいところも多いが、若旦那は性病にかかって苦しみ、太鼓持ちは片足を切られて乞食になり、病気の
旦那を養おうとし、やっと施してもらった金を乞食の元締めに取られそうになると、逆にそこにあった金入れを奪って逃げ、袋叩きに合う、など、
まさに落ちるところまで落ちた、どん底の人生。
芝居としてはあまりに暗い。
なかなか再演されないのはそのためだろう。
花のお江戸の若旦那・清之助と太鼓持ちの桃八が、ひょんなことから江戸を離れ、北へ北へと流されて行き、行く先々で様々な災難に会いながらも
望郷の思い止まず、それを支えに何とか生き延びるという9年間の物語。
この作品は2011年に蜷川幸雄演出で見たことあり。鈴木京香の艶やかな美しさと色気、そして主役二人の目まぐるしい運命の転変、奇想天外な
話の展開が印象的だった。それと、Amazing grace がしつこく流れてうんざりしたことも忘れられない。
今回、若旦那役の窪塚俊介が急病のため降板し、代わって江端英久が急遽出演することになった。
前回見たのと演出が違うので、いろいろ面白い。
まず冒頭、桃八(柳家喬太郎)が落語家として登場。座布団に座って語り出す(ラストも同様。つまり枠構造)。
品川の女郎屋で薩摩の侍たちが飲み騒いでいるシーンは、簡単なふすまを動かしてうまく見せるのが楽しい。
音楽も違う。桃八が鉱山に売られた時はドラマチックに悲劇を盛り上げて感動的。
ただ、歌は古いまま。特に二人が「江戸に帰ろう」と歌う歌がつまらなくて聞いているだけでも恥ずかしい。
ラスト、桃八が落語家として話を終え、黒子が座布団を片づけ、顔の覆いを取ると、これが清之助。
だが面白くない。何かもっといい終わり方はないものか。
船長やら釜石の宿の主人やらを演じる木村靖司は、うまいし声に張りがあっていい。
女郎・袖ヶ浦やら宿の女将やらを演じるあめくみちこは、もちろん安定した演技。
この芝居は言わば18禁のセリフと歌詞だらけ。もろに露骨なセリフの数々に、改めて驚いた。ただ、東北弁のせいもあり、意味がよく分からない
から聞いている方はそうでもないが、練習する間、役者さん達はさぞ赤面したことだろうと想像するとおかしい。
それぞれの土地の方言が面白い。
それにしても、暗い話だ。
山賊たちとの謎解きごっこのシーンなど楽しいところも多いが、若旦那は性病にかかって苦しみ、太鼓持ちは片足を切られて乞食になり、病気の
旦那を養おうとし、やっと施してもらった金を乞食の元締めに取られそうになると、逆にそこにあった金入れを奪って逃げ、袋叩きに合う、など、
まさに落ちるところまで落ちた、どん底の人生。
芝居としてはあまりに暗い。
なかなか再演されないのはそのためだろう。