5月6日天王洲 銀河劇場で、井上ひさし原案、蓬莱竜太作「木の上の軍隊」をみた(演出:栗山民也)。
太平洋戦争末期、沖縄で二人の日本兵が巨大な木の上に逃げ、終戦を知らないままそこで2年あまりを
過ごした(戦った)という実話をもとにした芝居。
上官(山西淳)とこの島出身の新兵(藤原竜也)の二人に木の精(片平なぎさ)の語りが加わる。
二人は昼間はガジュマルの木の上に潜み、夜になると降りていって食べ物を探し敵陣を偵察する。
他にすることがないので、彼らはあり余る時間を思い出話をしてやり過ごす。それぞれの恋人や妻のこと、
小学生の頃のこと・・。
「新婚初夜」とはいつのことか、と言い争う新婚夫婦の話などおかしいが、祝言の日の夜に何もしないという
のは、そりゃ女性にとっては最大の侮辱。彼女の反応は当然でしょう。
若者はこの島で牛飼いをしていた。
手持ちの食糧が尽き、二人は餓えに苦しむ。彼らの心に互いへの密かな殺意が芽生える。
上官は、米軍の捨てた残飯を食べることをかたくなに拒否していたが、或る夜を境に食べるようになる。
その夜、米軍基地からにぎやかな音楽が聞こえてくる。この時上官は、戦争が終わったこと、そして日本が
負けたことを知るが、それを口にはせず、したがって新兵の方は知らないままだった。
タバコは嗜好品だから、食糧のように公平に分けるのでなく見つけた者が全部自分の物にすることにしよう、と
提案する上官。ところが・・。
また或る夜、新兵は米兵が捨てた酒瓶を拾ってくる。彼は珍しく様子がおかしく、上官にからみ、責める・・。
そしてついに或る日、新兵は終戦を知らせるビラを見つける。上官はデマだと言うが・・・。
これは沖縄と日本の関係を描いた作品であり、二人はそれぞれの象徴なのだ。
本土から来た経験豊富な職業軍人である上官は、初め自信たっぷりだったが、敗戦を悟った後、緊張感を失い、部下には
銃の手入れを怠るな、と言っていたのに自分は怠けていたため彼の銃は錆びついてしまう。体の鍛錬も怠けていたため、
戦後、いざ木から降りる段になるとブクブク太っていた(これは実話)。
それに対して新兵の方は、うぶで慣れない志願兵だったのが、こういう上官の姿を傍で見ていて疑問が湧いてくる。
この戦争について、日本と沖縄について深く考えるようになる。
音楽は珍しいことにヴィオラ一台の生演奏。
役者は3人とも素晴らしい。この3人の配役が決まった段階で、この芝居の成功は保証されたと言っても過言ではない。
ガジュマルの木は斜めになっていたのが、ラスト、角度を変え、ほぼ直立する。この仕掛けも見事。
井上ひさしはこの芝居のアイディアを長いこと温めていたが、沖縄の問題があまりに大きく重過ぎて、どうしても
実際に戯曲を書くことができなかった。
蓬莱竜太は彼の遺志を継いで、重いテーマではあるが、全く蓬莱らしい、魅力的な作品を作り出してくれた。
人間を見る彼の目はいつも温かい。「上官」も、「新兵」との会話の中で実に人間的に描かれる。
新兵によって沖縄の言葉で語られる部分が耳に心地よい。
太平洋戦争末期、沖縄で二人の日本兵が巨大な木の上に逃げ、終戦を知らないままそこで2年あまりを
過ごした(戦った)という実話をもとにした芝居。
上官(山西淳)とこの島出身の新兵(藤原竜也)の二人に木の精(片平なぎさ)の語りが加わる。
二人は昼間はガジュマルの木の上に潜み、夜になると降りていって食べ物を探し敵陣を偵察する。
他にすることがないので、彼らはあり余る時間を思い出話をしてやり過ごす。それぞれの恋人や妻のこと、
小学生の頃のこと・・。
「新婚初夜」とはいつのことか、と言い争う新婚夫婦の話などおかしいが、祝言の日の夜に何もしないという
のは、そりゃ女性にとっては最大の侮辱。彼女の反応は当然でしょう。
若者はこの島で牛飼いをしていた。
手持ちの食糧が尽き、二人は餓えに苦しむ。彼らの心に互いへの密かな殺意が芽生える。
上官は、米軍の捨てた残飯を食べることをかたくなに拒否していたが、或る夜を境に食べるようになる。
その夜、米軍基地からにぎやかな音楽が聞こえてくる。この時上官は、戦争が終わったこと、そして日本が
負けたことを知るが、それを口にはせず、したがって新兵の方は知らないままだった。
タバコは嗜好品だから、食糧のように公平に分けるのでなく見つけた者が全部自分の物にすることにしよう、と
提案する上官。ところが・・。
また或る夜、新兵は米兵が捨てた酒瓶を拾ってくる。彼は珍しく様子がおかしく、上官にからみ、責める・・。
そしてついに或る日、新兵は終戦を知らせるビラを見つける。上官はデマだと言うが・・・。
これは沖縄と日本の関係を描いた作品であり、二人はそれぞれの象徴なのだ。
本土から来た経験豊富な職業軍人である上官は、初め自信たっぷりだったが、敗戦を悟った後、緊張感を失い、部下には
銃の手入れを怠るな、と言っていたのに自分は怠けていたため彼の銃は錆びついてしまう。体の鍛錬も怠けていたため、
戦後、いざ木から降りる段になるとブクブク太っていた(これは実話)。
それに対して新兵の方は、うぶで慣れない志願兵だったのが、こういう上官の姿を傍で見ていて疑問が湧いてくる。
この戦争について、日本と沖縄について深く考えるようになる。
音楽は珍しいことにヴィオラ一台の生演奏。
役者は3人とも素晴らしい。この3人の配役が決まった段階で、この芝居の成功は保証されたと言っても過言ではない。
ガジュマルの木は斜めになっていたのが、ラスト、角度を変え、ほぼ直立する。この仕掛けも見事。
井上ひさしはこの芝居のアイディアを長いこと温めていたが、沖縄の問題があまりに大きく重過ぎて、どうしても
実際に戯曲を書くことができなかった。
蓬莱竜太は彼の遺志を継いで、重いテーマではあるが、全く蓬莱らしい、魅力的な作品を作り出してくれた。
人間を見る彼の目はいつも温かい。「上官」も、「新兵」との会話の中で実に人間的に描かれる。
新兵によって沖縄の言葉で語られる部分が耳に心地よい。