ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

ヴェベール作「バカのカベ~フランス風~」

2012-12-28 17:12:19 | 芝居
11月17日下北沢・本多劇場で、フランシス・ヴェベール作「バカのカベ~フランス風~」をみた(訳・演出:鵜山仁)。

パリのおしゃれなマンションに暮らすピエール(風間杜夫)には一風変わった習慣があった。週に一度、これぞと思う「バカ」
をパーティに連れて来て、その本人には主旨を秘密にして友人たちと「バカ」を笑い者にして楽しむという、かなり悪い趣味だ。
今夜のパーティのゲストは、フランソワ(加藤健一)という、税務署勤めで超ド級の変わり者。ところがピエールが突然
ぎっくり腰になってしまい、家から出られない事態に。
そこへやって来たフランソワは、ピエールの窮地を助けようとするが、やることなすことすべてが裏目に出てしまい・・・。

加藤健一と風間杜夫の30年振りの共演の由。

よくできた話で笑える。
主人公ピエールは編集者で、美しい妻クリスティーヌがいるのにマルレーヌという愛人がいたり、妻の元カレと友人だったり
と、やはりフランスらしい。

フランソワという男の造形がうまい。
加藤健一がいつもながら味のある演技。おバカな行動には笑わされ、真心こもるセリフにはしみじみさせられる。
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井上ひさし作「日の浦姫物語」

2012-12-21 23:14:56 | 芝居
11月13日シアターコクーンで、井上ひさし作「日の浦姫物語」をみた(演出:蜷川幸雄)。

薄汚い説教聖(木場勝己)と赤子をおぶった三味線女(立石涼子)が語るは「日の浦姫物語」なる説教。
平安時代、母の死と引き換えに生まれた美しい双子、稲若(藤原竜也)と日の浦姫(大竹しのぶ)は、世にも仲睦まじく育った。
15歳となった夏、父が亡くなったその日、2人はあえなく禁忌を犯した。それが不幸の始まり。たった一度の交わりで子を
身籠る日の浦。後見人の叔父(たかお鷹)は恐ろしい事実を知り、日の浦を引き取り、稲若を都に遣る。それは恋しい2人の
今生の別れとなった。
美しい男児が生まれたが、叔父は手元に置くのをよしとせず、赤子を小舟に乗せて海に流した。日の浦の手紙の入った皮袋
と鏡を持たせ、運命を神と仏に預けて・・。

大竹しのぶが藤原竜也の妹役!だがこの人に不可能はない。15歳の姫を何の問題もなく愛らしく演じ切る。
ただ、子を生んだ後あたりから、声がやはりよくない。残念ながら最近何度か指摘しているが、割れて汚い。

2幕冒頭は説教聖の妻によるフォーク調の歌で経過報告。

オイディプス王の話は、息子がそれと知らずに母と結婚するだけだが、これはその何倍も複雑でおぞましい。オイディプスの
両親は普通の男女だが、ここでは両親が兄妹なのだ。オイディプスの母は再婚後妊娠しないが、ここでは同じ女が2度も妊娠
する。最初は兄の子を、次に息子の子を。
つまりオイディプスでは彼と母との「行為」が問題であるのに対して、ここでは彼の「存在」自体が罪の結果なのだ。しかも
孫の代には更に罪と血とが濃くなる・・。

説教節を語る夫婦の語りが枠構造となっているが、これは余計。評者が演出するなら全部削除するかな。

音楽・・例によってシンクレティズム(グレゴリオ聖歌に雅楽とか)。

「女の一生」の中の杉村春子のセリフが語られ、字幕が出ると笑いが。ここは確信犯的ウケ狙いか。

悲劇のクライマックスで泣きそうになっている時に客席のあちこちから笑いが起こることがあった(2人が自分の目をつぶす
シーンなど)。耐え難い気分だった。原因は何なのか。客がいけないのか、演出の手際が悪いのか、それとも作品そのものに
問題があるのだろうか。
評者としては当夜の客がたまたまよくなかったのだと思いたい。
だが、一体作者は泣かせたいのか笑わせたいのか分からないという箇所もあった。危ういバランスを保っている作品なのか。

兄役と息子役を立派に演じた藤原竜也が素晴らしい。叔父役のたかお鷹と言い、今回のキャストは考え得る最高の組み合わせ
だと思う。
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蓬莱竜太作「楽園」

2012-12-15 16:15:13 | 芝居
11月12日吉祥寺シアターで、蓬莱竜太作・演出「楽園」をみた(モダンスイマーズ公演)。

ある地方の廃屋となったホテル。ここは5人の小学生の秘密基地だった。無邪気に見える彼らの間にも子供なりのパワーバランス
が存在している。他愛ない会話を発端に、その関係性はいとも簡単に一変し、新たな関係が生まれる。そして5人にとって一生
忘れることのできない出来事が起こった・・・。

今年4月、「まほろば」で新鮮かつ説得力ある物語の書き手、蓬莱竜太と出会った。これは彼の2007年初演の作品。

子供時代を大人となった彼らが大人のかっこうのままで演じるという斬新な手法なので、最初は観客も戸惑うが、台本が
巧みなのですぐに状況に慣れて入り込める。

「ランボー」ごっこ。
4人の少年たちの力関係が目まぐるしく変わるのが面白い。だが実際子供の世界ってこんなもんだ。

ヒロイン篠井ユリコを演じる深沢敦が素晴らしい。声がでかくて張りがあってとにかくすごい。しかもそれはまさに女の子なのだ!
作者兼演出家が言う通り「この手があったか!というヒロイン」だ。
西條義将、古山憲太郎らも少年たちを生き生きと好演。
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寺山修司作「上海異人娼館」~China Doll ~

2012-12-07 18:25:31 | 芝居
11月6日東京芸術劇場シアターウェストで、寺山修司作「上海異人娼館」~China Doll~をみた(Project Nyx 公演、演出:
金守珍)。

ステファンは上海の娼館に日本人の恋人、桜(オウ)を連れて来て、彼女がここで娼婦として働きたいと言うので置いてやって
くれ、と女主人黒蜥蜴(毬谷友子)に頼む。桜は自分のステファンへの愛が変わらないかどうか知りたいと言う。
日本人の彼女は評判になり、男たちは彼女目当てにやって来る。「中国の不思議な役人」と呼ばれる男もやって来る。彼が桜と
一緒にいるところに一人の若者が現われ、役人を殺してしまうが、死んだと思った役人はむっくり起き上がる。何度殺しても
死なない・・。

娘の名前は「桜と書いてオウと読む」。「桜嬢」つまり「O 嬢」・・なるほど!これはあの世紀の奇書「O 嬢の物語」の翻案か。

劇中、吉田日出子の歌う「ウェルカム上海」が素晴らしい。だいぶ弱っておられるようだったが、実にうまい。名曲を堪能して
観客は大いに沸く。

バルトーク作曲の「中国の不思議な役人」に基づいて、寺山は同名の戯曲を書いたらしい。それに例の「O嬢の物語」、そして
アンデルセンの「夜鳴き鶯」の物語が加わり、人形劇が挿入され・・かなり錯綜している。

役者は毎度お馴染みの面々。今回はステファン役の前田尚子さんが素敵だった。
いつもながら寺山修司の世界にどっぷり浸った。
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