ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「イーハトーボの劇列車」

2013-12-28 23:22:39 | 芝居
11月12日紀伊国屋サザンシアターで、井上ひさし作「イーハトーボの劇列車」をみた(演出:鵜山仁)。

大正7年、宮沢賢治は故郷花巻から上野行きの夜行列車に乗り込む。東京の病院に入院している妹とし子の見舞いのためだった。
彼は東京に理想郷を求めては挫折を繰り返し、9度の上京の中でいつしか花巻に理想郷を見出す…。

賢治(井上芳雄)と上京してきた父(辻萬長)との宗教論争(法華経と浄土真宗について)が面白い。

妹とし子と相部屋となった女性とその兄。二人は上流階級に属し、賢治兄妹とは価値観が違う。女性の兄は妹ととし子に体力をつけ
させるため、生の牛肉のタルタルステーキを食べさせようとするが、仏教に帰依する賢治は殺生を嫌うので困惑する…。
そういうエピソードが積み重ねられてゆく。

実はこの日、我ながら驚くほど眠く、芝居が始まるとすぐ寝てしまい、時々目が覚めるたびに場面が変わっているといった按配で、
いやあ、とても批評なんてできません…。それにしても、前の晩にちょっと飲み過ぎたことは確かだけど、午前中はいつもと同じように
過ごしたのに、昼食後、なぜ急にあれほど眠くなったのか?
とにかくこれからは芝居の前日にあまり飲み過ぎないように気をつけます。


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オペラ「リア」

2013-12-19 00:10:35 | オペラ
11月9日、日生劇場で、アリベルト・ライマン作曲のオペラ「リア」をみた(台本:クラウス・ヘンネベルク、指揮:下野竜也、
オケ:読売日響、演出:栗山民也)。

ドイツ語上演(日本語字幕付き)。日本初演。
言わずと知れたシェイクスピアの悲劇「リア王」のオペラ化。
「ヴェルディも二の足を踏んだシェイクスピアの傑作を、20世紀のライマンが豪快に描く!
 フィッシャー=ディースカウの求めで書かれたA.ライマンの傑作。現代作品としては未曾有の人気を誇るオペラ、待望の日本初演!」
(チラシより)

リア王は3人の娘たちに国を分けてのんびり余生を過ごそうと考え、彼女らに、父たる自分をどれほど愛しているか言わせようと
する。姉2人は言葉巧みに美辞麗句を連ねるが、末娘コーディリアはそんな姉たちへの反発もあり、「お話しすることは何も
ありません」と答えてしまう。家臣たちの前で恥をかかされたと思った父王は激怒し、彼女を勘当。求婚しに来ていたフランス王は
持参金も無くなった彼女を連れて帰国。リアは早速隠退生活に入り、長女の邸に居候の身となるが…。

客席前方を削ってオケが陣取り、舞台の左右にも管と打楽器がいる。
中央にやや右に傾いた、どっしりした質感のある灰色の舞台を設けてある。

序曲もなくいきなり王が語り出す。カラー刷りの大きな地図を王が破って与えるのが分かり易い。バーガンディ公はいない。
フランス王はコーディリアのそばにいる。この二人は白い服。他に舞台にいるのは道化のみ。
回り舞台が面白い。
あばら小屋ならぬ床下から、お尋ね者となったエドガーの声(カウンターテナー!)が長く響き渡る。彼は腹違いの弟エドマンドの
陰謀で、父グロスター伯爵に反逆の疑いをかけられて追われ、気違い乞食トムに扮して荒野に潜んでいるのだ。
オペラならではの場面だと思ったのは、半ば狂い、疲れ果てて眠る父に、コーディリアが歌いつつ近づく割と長いシーン。
ここの音楽が実に美しい。

父娘再会の長い会話が終わると、いきなりエドマンドらが現れて二人は逮捕される。
リーガンは舞台上で死ぬ。ゴネリルも舞台上で、短剣で己の首を刺して自殺。原作の芝居より分かり易い。
リアは殺されたコーディリアを引きずって登場。これはひどい。いくら死んでるからって…。歌手も痛いだろうに(戯曲では抱いて登場)。
コーディリアは縊死なのに胸が血だらけなのは変だ。
ケントは追放されたまま、出て来ない。
リアの最後のセリフで長い間があり、死ぬのかとずっと待っていたが、座ってうつむいたまま暗転。
しかも戯曲の最後のセリフが、作曲上の理由からかカットされていた。このラストはイマイチ。

現代音楽を評者の耳は残念ながらなかなか受けつけないが、エドガーのソロとコーディリアのソロは胸に沁みた。
この日、作曲家も来ていた。
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「その場しのぎの男たち」

2013-12-10 11:28:37 | 芝居
10月29日下北沢 本多劇場で、三谷幸喜作「その場しのぎの男たち」をみた(東京ヴォードヴィルショー公演、創立40周年記念
興行第4弾、演出:山田和也)。

初演は92年で、その後何度か再演されてきた作品。
期待せずに行ったら予想外に面白かった(失礼)。「アパッチ砦の攻防」を見た時は、ついて行けない所が多くて困ったが、
この作品は、幸いそういうこともなかった。

歴史上有名な大津事件が題材。ロシアの皇太子が大津で巡査に切りつけられ、傷を負った。前代未聞の大事件に日本中が大騒ぎ。
政府はロシアとの関係がこじれることを恐れ、ロシア側の納得するような処分を下すべく知恵を絞るが・・・。

当時の松方内閣は元老伊藤博文(伊東四朗)の傀儡政権だった。皇太子の容態が不明のまま、松方正義首相(佐渡稔)、陸奥宗光大臣
(佐藤B作)らの思惑が絡み、犯人である巡査津田三蔵(京極圭)の処遇を巡り様々な奇案、珍案が出され、巡査の妻きを(あめく
みちこ)らを巻き込んで、話は右往左往・・・。

薩摩弁、京都弁が入り乱れて楽しい。

初演以来伊藤博文役を引き受けている伊東四朗がやはりいい味。他の人はちょっと考えられない。
元「くのいち」(そんな人も登場するのです!)のホテル女中、亀山乙女(山本ふじこ)が「御意」と答えるのがおかしい。

再来年に三谷さんの新作をやるらしいが、三谷さんは歴史物が面白いので、ぜひそういう路線で書いてほしい。
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「秋のソナタ」

2013-12-02 16:45:32 | 芝居
10月28日東京芸術劇場シアターイーストで、「秋のソナタ」をみた(原作:イングマール・ベルイマン、翻訳・台本:木内宏昌、
演出:熊林弘高)。

国際的ピアニストのシャルロッテ(佐藤オリエ)は長年付き合っていた愛人と死別。その知らせを聞いた娘のエヴァ(満島ひかり)
は自分の家でひとときを過ごさないかと母を誘う。シャルロッテはこの申し出を受け入れ、7年ぶりにエヴァの住む家を訪ねる。
そこには脳性マヒのもう1人の娘ヘレナがいた。エヴァが妹を施設から引き取ったのだ。母シャルロッテと次女ヘレナも久々の再会
だが、母親は正直、再会を喜んではいない。不快な気持ちを押し殺して明るく振舞おうとする母。母親の持つそんな二面性に長女
エヴァは長い間苦しめられてきた。母を告発するエヴァの容赦ない言葉のつぶて。長い長い地獄のようないさかいの幕が、ついに
切って落とされた…。

母国スウェーデンのみならず国際的な名声を確立している映画監督・舞台演出家の巨匠イングマール・ベルイマン。彼が手がけた
1978年の同名映画を、二人芝居のスタイルで日本初演(チラシより)。

ベルイマンの映画を以前テレビで見たことがあるので、筋は知っていた。だがこれは元の映画とはだいぶ印象が違う。

映画にはエヴァの夫も妹ヘレナも登場するが、ここでは(何せ二人芝居なので)役者たちは他の人々が目の前にいるかのように演じる。
中央のテーブルが、時にはピアノになりベッドにもなる。
娘がショパンのプレリュードを弾き、母が模範演奏をしてみせるのもこのテーブルで、音は無い。映画ではちゃんと二人のそれぞれ
の演奏(下手なのと上手なの)が流されたのに、ここでなぜ音楽を流さないのか不思議。

夜中に悪い夢を見てうなされた母の部屋に娘がロウソクを持って入ってきて、長い話になる。子供の頃からの恨みつらみをようやく
吐き出す娘。しまいに激しい言葉を投げつけ、睨みつけ…二人共床に這いつくばり…映画よりずっと生々しくて見ていて辛い。
娘は今の夫との間にできた息子エリックを4歳で亡くした。溺死だった。現在彼女は夫と共に教会の仕事をしてはいるが、可愛い
盛りの息子を失った打撃から立ち直れないでいる。だがもっと若い頃、彼女には別の恋人がいて、妊娠してしまい、二人の結婚に反対
する母に中絶させられ、それを知った恋人はいろいろあった挙句、去っていったのだった(このエピソードは映画にあったのかも
知れないが全く覚えていなかったので驚いた)。とにかく一事が万事、母は彼女を支配していたのだった。「…私のせいだって言う
の?」「ママのせいよ!」
母は自分の両親のことを話し始める。二人共自分をかまってくれなかった、私は人を愛することを知らない、と。どうもそうらしい。
子供たちに対しても、放任するか過度に干渉するかで、適切な関わり方ができない。だがこれはまあ、わりと普遍的な問題だろう。
子供と適切な関係を築ける親なんて、それほどどこにでもいるわけじゃない。

ただ、この母は結局夫と娘たちを捨てて愛人の元に出て行った。そんな、家庭的とは言えない彼女にとって、まして孫など欲しくも
なかっただろう。長女の第一子は中絶させた。次女のたった一度の恋のさなか、その相手を横から奪った…。
こういう女性はかなり特異なので、理解したり感情移入したりするのは難しい。
一方的に責められ続け、尻尾を巻いて逃げ出す母。

ラストは映画と同じく、娘がお詫びの手紙を書いて読み上げ、これを送ると言うが、あそこまで言われたらもう二度と来ないだろう。

途中、娘は客席に向かって「どうです、皆さん?…」と話しかける。

女優二人の力量は素晴らしいが、何しろ重たい芝居だ。
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