ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

2016年の芝居の回顧

2017-03-20 17:50:22 | 回顧
今年も早3月も半ばを過ぎました。昨年一年間に見た芝居は20コ。諸事情あっていつもより少ないですが、その中から特によかったと思うものを
見た順に挙げていきます。カッコ内は特に光っていた役者さんです。


 6月 「あわれ彼女は娼婦」ジョン・フォード作  栗山民也演出    新国立劇場中劇場 (伊礼彼方・横田栄司・浅野雅博・蒼井優)
                                   
             
10月 「お国と五平」   谷崎潤一郎 作  マキノノゾミ演出    吉祥寺シアター  (七瀬なつみ・石母田史郎)
            ※原作が素晴らしい上に、主演の七瀬なつみが魅力的!選曲のセンスにも拍手。          

    「一人二役」    R.トマ  作   福島三郎演出     シアタークリエ  (大地真央)
            ※これも原作がいい。大地真央はコメディセンス抜群。追っかけるファンの気持ちが分かる。
      
    「治天の君」    古川健  作   日澤雄介 演出     シアタートラム   劇団チョコレートケーキ
            この劇団は初めて知ったが、個性的で骨太で実力派。


厳選の結果、今回はたったの4つになりました。

その他の芝居で印象に残った役者さんたちを挙げましょう。

鈴木亮平 (ライ王のテラス)
鈴木杏  (イニシュマン島のビリー)
立石凉子 (尺には尺を)
周本絵梨香(同上)
石住昭彦 (景清)
橋爪功  (同上)
新納慎也 (スルース)
那須佐代子(ヘンリー四世)










 
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オペラ「ベルファゴール」

2017-03-16 23:00:54 | オペラ
2月5日新国立劇場中劇場で、レスピーギ作曲のオペラ「ベルファゴール」をみた(演出:馬場紀雄、指揮:時任康文、オケ:東京オペラ・
フィルハーモニック管弦楽団)。
日本初演。
悪魔ベルファゴールが地獄から使命を帯びて地上へやって来る。悪魔はミロクレートをうまくたぶらかし、彼の3人の娘のうち末娘カンディーダと
結婚することになるが、貞操を奪えない。カンディーダにはすでにバルドという恋人がおり、母親の助けを得て駆け落ちに成功する。しかし
悪魔はバルドを揶揄し、いかにも貞操を奪ったかのように振舞う。娘は証拠が見せられないので悩み、神に祈る。その時、それまで鳴らなかった
教会の鐘が鳴り響き、彼女の貞操を証する奇跡が起きる(とこれだけ読むと、何それ?!だが・・・)。

第1幕
バルドが窓の下でカンディーダを呼ぶ。二人の長い会話。バルドは船乗りか?仕事に出ると寂しい、と互いに言い合う。ちと退屈。
彼女の父の前に悪魔が現れ、妻となるべき女性を探していると言う。父が「昨夜飲んだのはラクリマ・クリスティ(キリストの涙)というワイン
で」と言うと悪魔が苦しみ出して倒れるのがおかしい。そこに母と姉娘二人(黒髪と金髪)が現れ、娘たちは悪魔にしきりに自分の存在を
アピール。彼らが去ると悪魔は手下を呼び、一時間で料理を用意するよう命じる。そしてメニューを列挙するが、それがなかなか珍しくて面白い。
手下はメモ帳に羽根ペンで懸命にメモする。
長女が手袋を忘れた、と戻って来て悪魔と話していると、次女もお祈りの本を忘れた、と戻って来る。二人を相手に悪魔はカタログを出し(!)、
これまで関わった女たちの絵を見せながら「過去の女たちを忘れたい」と歌う。二人といちゃついていると、父が戻って来る。
悪魔は末娘カンディーダに会いたがり、いやがるカンディーダと二人きりになると彼女に言い寄り、宝石の名を列挙して多くのものをあげると
約束しながら彼女の手を取ると、カンディーダは驚いて悪魔の頬をひっぱたく。
すると悪魔は狂喜し、この人だ!と燃え上がる。
戻って来た父たちにそう宣言すると、父も受け合う。カンディーダは悲しみと困惑からバルドの名を呼び、母は「かわいそうな娘」と歌い、姉
二人は落胆を、父と悪魔もそれぞれの気持ちを歌う。

第2幕
悪魔に大金をもらい?父と姉娘たちは楽しげに飲み食いしている。カンディーダは純白のドレス姿。悪魔の手下が上着を着せようとするのを
カンディーダはまた平手打ちし、手下は怒って去る。悪魔も困り果てる。式を挙げたのに7日間も寝室に入れてもらえない、と父母に訴える。
バルドが父母のところに来て「娘を金で売った」と怒る。特に母親は二人の気持ちを知っていたのに、とも。
母が「正式に結婚してしまったからねえ」と言うと、カンディーダ「私はまだ誓っていません・・・」と言う。実は式の間、一心に聖母に祈って
いたのだと言う。その意味はよく分からないが、ここの音楽がいい。
カンディーダと話してバルドの怒りはようやくおさまる。二人は駆け落ちの約束をする。
カンディーダが一人でいると、悪魔が来る。カンディーダは初めて彼に笑顔を見せ、なびくような期待させるような甘い言葉をたくさんかけて
喜ばせる。ただし、今すぐでなく、身支度をするから15分待って、と言って去る。
悪魔は有頂天で待っているが、次第に疑いの念が湧いてくる。音楽が彼の心を描写して見事だ。しまいに階段を上り、カーテンを開ける仕草。
そこにカンディーダはいない。がっくりとうなだれる悪魔。
カンディーダとバルドは夜中に密かに聖職者を訪れ、話を聞いてもらおうとする。

場面は変わって、ボロをまとった老人と子供がどこかで手に入れたパンとニシンの食事を取ろうとしていると、近くで寝ていた男が目を覚ます。
やはりボロいコートを着ているので仲間かと思った二人は一緒に食事を、と招くが、実はこれは企みに失敗した悪魔の姿だった。
この町に悪魔が一人うろついているらしいという噂を聞いた、と子供が言う。教会の鐘が鳴らなくなったのはそのせいだとか、嫁さんをもらった
らしいとか、醜いらしいとか。それを聞いてむくれる悪魔がおかしい。
そこにバルドが来る。悪魔は彼に向かって、7日も一緒にいて何もないわけないだろう?悪魔は絶倫だぞとか何とか言って彼を嫉妬に狂わせ、
立ち去る(ここで初めて人間を苦しめるという悪魔らしいことをしたわけだ)。
カンディーダが来るとバルドは彼女を嘘つき呼ばわりし、カンディーダはバルドが自分を信じてくれないなら人生は終りだ、と言う。
ここで評者の感想:バルドはひどい奴だ。地獄に落ちればいい。少なくともカンディーダに土下座して謝るべきだ。こんな男にカンディーダに
愛される資格はない。
さて、バルドは更に、何もなかったのなら証拠を見せろ、と迫る。カンディーダは聖母マリアに救いを求めて祈る。ここの音楽がいい。
と、ついに鐘の音が聞こえて来る。バルドはカンディーダの手を取る。二人は抱き合う。幕。

すぐに分かるように、モーツアルトの「ドン・ジョヴァンニ」に似ている。カタログの歌とか、手下に料理の指図をするところとか。

台本がとにかくまずいが、音楽は素晴らしい。これはオペラではよくあること。
今回、演出がまずい。チラシの「あらすじ」の文章もひどい。
字幕もよくない。日本語としてさっぱり意味不明な文章があって困った。
ヒロイン・カンディーダ役の大隅智佳子は声はいいが、演技が下手。
このオペラ、悪役のはずの「横恋慕する悪魔」があまりに魅力的で人間的で、それに感情移入してしまうのが問題。それに比べてヒロインの
恋人が情けないのも困る。こんな男のどこがいいのか?やめなよ、と言いたくなる。

レスピーギのオペラは、2013年に見た「ラ・フィアンマ」(日本初演)が強く印象に残っている。
今回も(ツッコミどころは多かったが)素晴らしい経験ができた。


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モリエール作「病は気から」

2017-03-12 23:30:45 | 芝居
1月16日俳優座劇場で、モリエール作「病は気から」をみた(演出:高岸未朝、作曲:萩京子)。

舞台は17世紀フランス・パリのあるお屋敷。
主人公アルガンは自分が大病を患っていると思い込み、かかりつけの医者ビュルゴン先生からたくさんの薬を処方してもらっている。
しかし誰が見てもそれはただの「気の病い」。そんなアルガンは自分の健康のために、長女アンジェリックに医者と結婚するよう迫る。
だがアンジェリックにはクレアントという恋人がいたのだ。一方アルガンの後妻ベリーヌは、表向きは夫に優しく接するも、裏では
近く訪れるであろう遺産相続のために着々と準備を始める。すべての事情を知っている小間使いのトワネットはアルガンの弟ベラルドと
共に、アルガンの目を覚まさせるために一芝居打つことにするのだが・・・。

芝居が始まる前に役者が全員登場し、歌いながら時代背景を説明する。
舞台はルイ14世治世下のパリ。トイレはなく、おまるに入れて外にポイするので往来は臭くて汚い。
ネズミが多く、様々な病気が流行していた・・・。

右手にピアノとヴァイオリンとオーボエが一人ずつ。
他に舞台上でリコーダー2人など。
冒頭、アルガンが椅子に座ってたくさんの処方箋を調べては金額を計算している。役者のせいもあると思うが、このシーンが長くて退屈。
観客が退屈することが、どうして想像できないのか?早くも先が思いやられる。

ヒロインの恋人クレアント役の男優は歌があまりうまくない。
演出がまずいので、芝居の流れが途切れがち。
子役がいい。少年は声がメチャ美しく、少女は演技がうまい。
大人の役者は・・・トワネット役の人と継母役の人が光るが、あとはまるでダメ。特に主役(!)の人と彼の弟役の人がいけない。

俳優座のレベルってこんなものなのか、と驚いた。
間の抜けた芝居で、ところどころ大いに苦痛を感じた。

この芝居は2012年11月に北とぴあ さくらホールで見たことがある(潤色:ノゾエ征爾、演出:宮城聡、オケと合唱:レ・ボレアード、
指揮:寺神戸亮)。
あの時は音楽(シャルパンティエ)に芝居と同じ重きを置き、歌手たちと役者たちが交互に登場するという変わった形をとっていたが、
結果的に素晴らしかった。
歌手は有名な人も多く見事だったし、役者たちもSPAC静岡県舞台芸術センターの人々で知らない人ばかりだったが、全員うまかった。


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映画「ロミオとジュリエット」

2017-03-08 18:25:55 | 映画
1月13日シネ・リーブル池袋で、映画「ロミオとジュリエット」をみた(原作:シェイクスピア、演出:ケネス・ブラナー)。
前回の「冬物語」と同じく、ロンドンのギャリックシアターでの上演を映画化したもの。

まず冒頭に映画化の際加えられた宣言あり。
①白黒で上映する
②或る書物に以下のようなことが書いてあった。パリのカフェで大柄のみすぼらしい男に会ったが、その男は話が無類に面白かった。
一晩愉快に過ごして別れた後、店員に聞くと、あれはオスカー・ワイルドだと言う。その逸話を読んで、この芝居でマキューシオ役をデレク・
ジャコビにするという案が浮かんだ。
つまり、ワイルドは同性愛者として投獄され(当時同性愛は犯罪だった)、出獄後パリで晩年を過ごしたが、それでもまだまだ元気で非常に
魅力的だったということらしい。
ジャコビは素晴らしい名優だが、マキューシオつまりロミオの饒舌な友人を演じるのは相当無理があると思ったが、なるほどそういう背景があったのか。

演出のケネス・ブラナーが舞台挨拶に立ち、ロミオ役の俳優が48時間前に足に大怪我を負ったが、出演することにした、そのため演出を少し
変えた、と告げる。だがどこが変わったのか全然分からなかった。

20世紀初頭のヴェローナか、タバコを吸う人々。
イタリア語を多用。字幕は< >で囲んで区別している。
「ロミオ」の場合、時代を現代にすると、公爵の扱いが難しい。今回も警察署長か警視総監のような格好。

パーティの客のリストが読めない召使を演じる女優が面白い。
マキューシオ役のジャコビは、やはり恐れた通り無理がある。好きな俳優なので言いたくはないが、白いスーツで太ってて、まるでカーネル・
サンダース。もちろんセリフ回しは素晴らしいし発音もいつもながら美しいが。決闘の場では彼に配慮してだろう、すぐにやられる。年齢的には
ロミオの祖父でもいいくらいのはずだ。
ブラナーよ、盟友をこんなふうに使うな!

バルコニーの場で、ジュリエット(リリー・ジェイムズ)はワインをラッパ飲み!
それを見てロミオ(リチャード・マッデン)「彼女が話す・・・、いや話さない」。もちろんここで笑いが起こる。このように、割と自由に
セリフを変えたりつけ足したり。カットも多い。
ロミオの母はイタリア語で息子のことを祈り続ける。
ロレンス神父の3幕3場の素晴らしいセリフの後半がカットされていて残念。
ただ、その直後の乳母のセリフ「ああ、一晩じゅうでもありがたいお説教を聞いていたい。学問って大したもの」はちゃんと言われ、仕草で強調されて笑いを取っていた。
ジュリエットの偽の死後、父が大げさに嘆く長いセリフもほとんどカット。これは適切。
乳母は倒れたジュリエットの体のそばに薬の小瓶とナイフを見つけるが、とっさに隠す。

ロレンス神父は墓所のジュリエットのところに行かない!外で泣いているところを夜警に発見されるだけ。
ここは、ジュリエットを連れ出そうとするが彼女はきっぱり拒絶する、という重要なシーンなのに。
目覚めたジュリエットは、ロミオが床に置いたカンテラ?か懐中電灯で辺りを照らし、ロミオを見つける。

役者は皆うまい。特に主役の二人は熱演。

池袋のシネ・リーブルでは、1月5日にブラナー主演の「エンターテイナー」という映画も見たので、この冬は懐しいイギリス英語を3回も聴けた。


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