ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

三島由紀夫作「白蟻の巣」

2017-05-19 23:48:20 | 芝居
3月17日新国立劇場小劇場で、三島由紀夫作「白蟻の巣」を見た(演出:谷賢一)

ブラジル、リンス郊外の珈琲農園。元華族の農園主・刈屋義郎は、かつて心中未遂を起こした妻・妙子と運転手の百島健次を、彼特有の「寛大さ」
でそのまま同居させていた。一年後、事件のことを承知で百島と結婚した啓子だったが、次第に嫉妬と猜疑心にかられるようになり、とある計画
のもと、刈屋を遠く離れたサンパウロへと送り出す。まるで白蟻の巣のように四人の思惑が絡み合い、やがて奇妙で複雑な三角関係へと変化して
いく・・・(チラシより)。
四人が三角関係というのがひっかかる。四人なら四角関係では?

初めて見た芝居で、しかも筋が錯綜しているので、備忘録的にこの場を借りて全ストーリーを書いておこうと思う。
まさかそんな方はおられないと思いますが、内容(特に結末)を知りたくない方は読まないで下さい。

舞台は暑いブラジル。
若い妻啓子(村川絵梨)が泣いている。ベッドに寝ていた夫百島健次(石田佳央)は驚いて起きる。昨夜、風呂上りの奥様・妙子(安蘭けい)の
左の首筋の傷跡を見てしまったと言う。百島の左首筋にも同じ傷が残っている。二人は心中未遂事件を起こしたが、屋敷の主人刈屋義郎(平田満)
は寛大にも二人を許し、そのまま彼を同居させ、啓子は半年前にすべてを承知して百島と結婚したのだった。が、啓子は次第に疑心を募らせる。
その朝、朝食の席で啓子は昨夜見た妙な夢の話をする。大杉(半海一晃)というコーヒー園の管理人も一緒。
刈屋は日本では殿様と呼ばれていたが、ここでは自分を旦那様と呼ばせている。啓子は彼に苦悩を打ち明け、しばらく家を明けて二人の様子を
見たらどうか、と提案する。彼も面白がり、早速飛行機でリオデジャネイロに行く。

その後3週間たつが、刈屋からは何の連絡もない。妙子は大杉から、夫がリオで一人の商売女にうつつを抜かしているという噂を聞く。
そんな時、土地のお祭りがあり、啓子は普段決して夫から離れないようにしているのに、珍しく友人とお祭りに行く。妙子は百島が一人でいる
部屋に入って来る。これは啓子の罠だ、と言う百島だが・・・。
結局二人は口づけを交わす。
啓子が帰って来て、二人は慌てる。が、もう隠れるわけにはいかない。妙子は部屋を出て、啓子の前を通り過ぎる。
百島は啓子に、何もなかった、と言うが・・・。
その時、大杉が現れ、白蟻が出て大変だ、と百島を連れ出す。
刈屋が帰って来る。啓子が電報で呼んだらしい。啓子は事情を話す。
啓子は刈屋の愛人になると言い、二人は妙子と百島が心中を図った納屋に向かう・・・。
大杉と共に戻って来た百島は、二人が納屋に行くところを見てしまう。彼は苦しむが、そこに踏み込むことはしない。

早朝百島が一人いるところに妙子が現れる。あの夜、百島が見ていたことを知って、啓子は泣いて許しを乞うた。それで百島は主人にならって
妻に寛大にした、と言う。妙子はあの時、二階からすべてを見ていた、百島が銃を手に納屋に行くところを期待していたのに、と言う。
「一度自殺に失敗した人間は、二度と自殺しない」と啓子が言っていたことを百島は思い出す。彼女の裏をかいて心中しよう、と二人は決める。
二人は書置きを残して車で何とかの滝へ出かける。
起きてきた啓子はその書置きに気がつき、刈屋を大声で呼ぶ。刈屋はそれを見ても静か。啓子は、あなたが夫を殺した、と責める。が、主人は
怒った彼女を美しいと褒めたたえ、結婚しよう、と言い出す。
啓子も次第にその気になり、二人は高揚して明るい未来を語り合う。

そこに大杉が刈屋宛の手紙を持って来る。リオで親しくしていた女からの金の無心だった。書いてある額より多く小切手を切ってやる主人に
大杉「女はいいなあ」。大杉の口癖は、いつか日本に帰りたい、だった。それを知っている啓子は刈屋に、大杉にも同じ額の小切手をあげて、
と言う。刈屋がそうしようとすると、大杉はとんでもない、と断る。日本に帰ることができたら、その後何を支えに生きたらいいか分からない、と。

その時、車の音が聞こえる。心中しに行ったはずの二人は結局死なずに戻ってきたのだった。
刈屋と啓子の夢は消えた。啓子は刈屋に「今こそ二人を許さない、と言って!」と迫るが、私にはそんなこと、とてもできない、と弱々しく答える
主人。結局、呆然と立ち尽くす二人。紗幕の向こうから帰って来る二人が見える。幕。

奔放な妻のことを諦めているかのように見える刈屋が、使用人の妻の提案にあっさり乗ってリオに行く。しかもそこで商売女に入れ込んで遊び
まくる。更に、使用人の妻に呼び戻されて帰宅するや今度はその女と不倫する、という話の流れが、いちいち受け入れ難い。
しかも、その妙に肉食系の男を演じるのが平田満では、ますます困ってしまう。

土地の音楽がバックに流れ、異国情緒を掻き立てる。
女の言葉使いが古風。かつ古い東京弁がいささか耳につく。
筋は単純なようで、入り組んでいてこねくり回した感がある。
三島にとって初の劇作品ということで、力が入ったのだろう。

コメント
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