ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「お気に召すまま」

2014-03-27 23:58:24 | 芝居
2月11日あうるすぽっとで、シェイクスピア作「お気に召すまま」をみた(文学座公演、演出:高瀬久男)。

貴族である亡父の末子オーランドーは兄オリヴァーに不当に虐げられ、教育も受けさせてもらえず召使同様に扱われていた。
ある日彼は公爵の開催したレスリング試合で活躍し、公爵の姪ロザリンドと恋に落ちる。だが嫉妬した兄に追っ手をかけられ
忠臣アダムと共にアーデンの森へ逃げ込む。そこには現公爵によって簒奪され追放された兄公爵が廷臣たちと共に暮らしていた。
現公爵の不興を買ったロザリンドもいとこシーリアと共に森を目指す…。

姫2人は白一色のテニスウェアで登場。

道化タッチストーンの恋敵ウィリアムは、名前を聞かれて「ウィリアム・シェイクスピア」と答える。こういうのはあまり
好きじゃないが、その他の場面でコミカルな要素をあちこちに配した演出は楽しい。

極めつきは3幕2場。
オーランドーは、愛するロザリンドを称える詩を思いつき、ここで客席に向かって口にする。

「真珠と言えば、かのインド
 さらに尊き  ロザリンド」

これは実は、彼が木につけておいた紙片をロザリンドが見つけて読み上げる長い詩の冒頭の部分だが、
ここに持ってきたのは素晴らしいアイディア。つい吹き出してしまった。
彼は生まれながらに気品の備わった青年だが、如何せん教育が足りない。可哀想だが彼の作る詩は稚拙で笑いを誘ってしまう。
この演出は素晴らしい。

オーランドー役の釆澤靖起が清々しい演技で魅力的。
タッチストーン役の清水明彦もなかなかの好演。
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寺山修司作「宝島」

2014-03-14 23:30:52 | 芝居
2月10日東京芸術劇場シアターウエストにて、寺山修司作「宝島」をみた(演出:金守珍)。

寺山が子供向けミュージカルとして書いた作品を宇野亜喜良が大人のメルヘンとして大胆に構成して舞台化。
スティーブンソンの「宝島」を元にしつつ、寺山ワールドを展開。

ジム少年は子供の頃から海に憧れてきた。シルバー船長はオウムを肩に乗せ、松葉杖を持つ。棺桶丸という船の船長は、二人組の殺し屋
(「黒犬」と「二本指」)に殺される。彼のトランクには宝島の地図らしきものが入っていた…。

「あばずれ」役のサヘル・ローズが美しい。まさに眼福。
寺山修司の短歌がたくさん挿入される。
寺山修司役兼シルバー役の未唯mieが美しく、語りも歌もうまい。
観客も歌・手拍子・足踏みをさせられる。いつもならこういうのは苦手だが、ここの劇団だと全然嫌じゃないのは何故だろう。
音頭を取る佐藤梟さんが好きだからだろうか。

ビゼー「カルメン」の音楽の力を借りつつ、芝居はノリノリで進む。
寺山の紡ぎ出す言葉が喚起するイメージは鮮やかで、時折ハッとさせられる。
だが、いつもながら全体に笑いの要素はほとんどない。だから佐藤梟さんの役割が重要になる。
現代ではこうやって笑いの要素を付け足さないと寺山の芝居の上演は難しいのかも知れない。


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オペラ「ミレイユ」

2014-03-02 23:01:39 | オペラ
2014年2月8日新国立劇場中劇場で、グノー作曲のオペラ「ミレイユ」をみた(原作:F.ミストラル、台本:M.カレ、指揮:飯坂純、
演出:池田理代子)。

フランス語上演。日本初演。

19世紀プロヴァンス。地主の一人娘ミレイユは貧しい籠作り職人ヴァンサンと恋仲。だがミレイユの父は二人の結婚に反対する。
ミレイユには他に3人の求婚者がおり、その一人ウーリアスはヴァンサンに嫉妬し、彼を襲う。ヴァンサンは怪我をし倒れるが、
彼を殺してしまったと思い込んだウーリアスは恐怖のあまり幻影を見て誤って川に落ちて溺死。
ミレイユは重傷を負ったヴァンサンの回復を祈るため、「どちらかが不幸に見舞われた時はレ・サント・マリーへお参りしよう」
とかつて約束していた教会へ巡礼の旅に出る。彼女は教会にたどり着いたが心労と旅の疲れから力尽き、傷が癒えて駆けつけた
ヴァンサンに見守られて息を引き取る。

グノーの音楽はひたすら甘美で変化に富み面白い。

女性合唱は最初良くない。出だしが揃わなかったのが情けない。

ヒロイン・ミレイユ役の鈴木慶江はいつもながら美しく、多くの若者に言い寄られる役には説得力がある。

魔法使いタヴァンというのが登場し、これが最初から恋人たちに同情的で、この人(?)が逃げるウーリアスに呪いをかけたために
ウーリアスは死ぬことになるようだ。

ウーリアスは恋のために恋敵に打ちかかるが、致命傷を負わせてしまったと思い込み、罪の意識に苦しむ。つまりそれほど悪い男では
ないのだ。彼は渡し舟に乗って川の向こう岸に逃げようとするが、すでに運命は彼を逃がしはしない。
渡し守は白塗りの顔で、死神のよう。さらに川の中から亡者の白い手が幾つも伸びてきて彼を水の中に引きずり込む。
ただ、この恐ろしい場面で音楽が依然穏やかで美しいままなのには驚いた。はっきり言って違和感を感じた。仮にも人が一人死ぬという
のに…。

この直後の舞台転換に手間取ったのはいただけない。

主役の恋人二人を差し置いて、敵役ウーリアスの苦悩に時間を割いているのがちょっと変わっている。

鈴木は薄幸の美女をやらせたら天下一品。

ヴァンサン役の高野二郎がなかなかの好演。

パイプオルガンの音色で天国への道を表し、宗教的雰囲気の中、荘厳に幕となる。

あらすじを読んだ時は、女が砂漠を越えて遠い修道院に行きさえしなければよかったのに(二人共助かったのに)と思ったが、
考えようによっては、この話は、女性が積極的に自分を犠牲にして愛する男性を救う話と解釈できる。
能動的な愛を生きる女性は実に清々しく潔い。
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