7月13日紀伊国屋サザンシアターで、井上ひさし作「頭痛肩こり樋口一葉」をみた(演出:栗山民也)。
原稿用紙の紗幕。
以前みた公演は、1991年の夏、原田美枝子の夏子、佐々木すみ江の多喜、三田和代の稲葉鑛、新橋耐子の花蛍・・という
顔ぶれで、新橋耐子の存在感が圧倒的だった。一発で彼女の名前が脳に刻み込まれた。
この日、夏子役の小泉今日子は調子が悪かった。「実入り」という語の発音を何度も失敗したり・・。
母多喜役の三田和代は自分勝手で世間体に縛られ娘たちを困らせる母親を好演。
稲葉鑛役の愛華みれは、切れのよい演技とセリフ回しで出色。
花蛍役の若村麻由美は美しい幽霊を楽しげに演じる。新橋耐子とはまた違った魅力たっぷりな幽霊に、客席はすっかり魅了された。
中野八重役の熊谷真美は後半、苦界に身を沈めてから俄然精彩を放つ。稲葉鑛相手に啖呵を切るあたり、実に見もの。
ラスト、一人生き残った邦子に向かって、死んだ母が「世間体なんて気にしなくていいんだよ」「幸せにおなり」と声をかける
(相手には聞こえないが)。そこで温かい気持ちになる人もいるかも知れないが、評者はいつも邦子と夏子が可哀想で涙が出そうに
なる。そして二人の母多喜への怒りが湧いてくる。自分は好きな男と駆け落ちして何人も子供をもうけ、一家に君臨して長生きした
から満足だろうが、娘たちに対してはどうだったか。結婚の邪魔はするは、見栄っ張りのために始終借金をこしらえて困らせるは、
揚句「樋口家の戸主」という重荷を負わされ仕事に追われ続けた夏子はとうとう24歳の若さで亡くなり、邦子は600~700円
もの借金を一人で背負うことになったのだ。「死んでから分かったって遅いんだよ!」と言いたい。
この芝居は、花蛍を演じた女優が舞台をさらうようにできているようだ。まことにおいしい役ではある。
原稿用紙の紗幕。
以前みた公演は、1991年の夏、原田美枝子の夏子、佐々木すみ江の多喜、三田和代の稲葉鑛、新橋耐子の花蛍・・という
顔ぶれで、新橋耐子の存在感が圧倒的だった。一発で彼女の名前が脳に刻み込まれた。
この日、夏子役の小泉今日子は調子が悪かった。「実入り」という語の発音を何度も失敗したり・・。
母多喜役の三田和代は自分勝手で世間体に縛られ娘たちを困らせる母親を好演。
稲葉鑛役の愛華みれは、切れのよい演技とセリフ回しで出色。
花蛍役の若村麻由美は美しい幽霊を楽しげに演じる。新橋耐子とはまた違った魅力たっぷりな幽霊に、客席はすっかり魅了された。
中野八重役の熊谷真美は後半、苦界に身を沈めてから俄然精彩を放つ。稲葉鑛相手に啖呵を切るあたり、実に見もの。
ラスト、一人生き残った邦子に向かって、死んだ母が「世間体なんて気にしなくていいんだよ」「幸せにおなり」と声をかける
(相手には聞こえないが)。そこで温かい気持ちになる人もいるかも知れないが、評者はいつも邦子と夏子が可哀想で涙が出そうに
なる。そして二人の母多喜への怒りが湧いてくる。自分は好きな男と駆け落ちして何人も子供をもうけ、一家に君臨して長生きした
から満足だろうが、娘たちに対してはどうだったか。結婚の邪魔はするは、見栄っ張りのために始終借金をこしらえて困らせるは、
揚句「樋口家の戸主」という重荷を負わされ仕事に追われ続けた夏子はとうとう24歳の若さで亡くなり、邦子は600~700円
もの借金を一人で背負うことになったのだ。「死んでから分かったって遅いんだよ!」と言いたい。
この芝居は、花蛍を演じた女優が舞台をさらうようにできているようだ。まことにおいしい役ではある。