ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「パルジファル」

2012-09-30 21:39:14 | オペラ
9月17日東京文化会館大ホールで、ワーグナー作曲のオペラ「パルジファル」をみた(二期会公演、演出:クラウス・グート、
オケ:読売日響、指揮:飯守泰次郎)。

中世スペインのアムフォルタス王は、妖術使いクリングゾルに槍を奪われ脇腹に深い傷を負っている。
そこへ粗野で自分の名前も知らない若者パルジファルが白鳥を殺したかどで聖杯守護の騎士たちに連れて来られる。
騎士たちの長老グルネマンツは、この無垢な若者こそ王の救い主だと思い、聖杯の儀式を見せる。だが若者は儀式の意味を
理解できず、追われるように王のもとを去る。
彼はクリングゾルの魔城に紛れ込む。クリングゾルはこの若者を堕落させるため、敬虔な女性クンドリに妖術をかけ誘惑
させようとする。荒野は花園と化し、乙女たちが現われパルジファルを取り囲む。だが彼はクンドリから接吻を受けると、
突然自らの名を知り、王の苦悩を解し、己の使命に目覚める。誘惑は失敗した。クリングゾルは彼に向けて槍を投げつけ
るが、それは彼の頭上でとまる。若者は聖なる槍をつかみ、傷つき生きる望みを失った王のもとへと進んでゆく・・。

何ともロマンチックな話だ。まさにワーグナー。と言っても恋愛はここにはない。自分の使命をまだ知らぬ素朴で粗野な
若者、それも自分の名前すら知らず皆に嘲笑されるような若者が、邪悪な者の企みがきっかけとなって、ついに目覚めて
王国を救いへと導く、という構図がたまらなくロマンチック・・と、あらすじを読んだ時は期待に胸をふくらませたが・・。

冒頭に黙劇が置かれ、オペラの始まる以前の、王とクリングゾルとの関係が描かれる。
舞台全体に映像が映し出される。最初は少年のすらりとした裸足が緑の草を踏んでどこまでも歩いてゆく。
第2幕冒頭の映像になると、裸足だがちゃんとズボンをはいた男の足が、今度は石畳の上をこちらに向かって歩いてくる。
女たちの誘惑のシーンでは提灯がたくさん飾られている。
第3幕冒頭の映像では、男はがっしりした靴をはき、タイツのようなものをはいている。
王の城に戻って来たパルジファルは、口元を覆う部分のついた帽子をかぶっている。
全体に、話のテンポがのろくて退屈なところが多かった。
回り舞台を多用。
パンと酒による聖餐式、女が若者の足を洗う、そして洗礼・・とキリスト教色満載。

王は自分の罪深さを嘆き悲しむ。彼の腹部の傷はなかなか癒えない。考えてみれば、彼だけが女性と関係したのであって、
他の騎士たちはみな清らかで、女性を近づけない暮らしをしているのだ。
この話は第2幕のほんの一部を除けば男ばっかりの、見た目が変化に乏しい舞台であり、しかも女を男の修業の妨げのように
描いていて、面白くない。男が考えた話だから仕方ないか。

このオペラを見たのは初めてなので、他と比較できないが、かなり変わった演出のようだ。クンドリは死なないし、ラストは
王とクリングゾルとが和解する。
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「から騒ぎ」

2012-09-15 22:48:58 | 芝居
8月26日舞台芸術学院内ホールで、オックスフォード大学演劇協会(OUDS)来日公演、シェイクスピア作「から騒ぎ」を
みた(演出:マックス・ギル)。

毎年英国から学生たちが来日し、若々しい芝居を見せてくれる。

スペイン領シチリア島メッシーナ。知事レオナートの屋敷は、内戦に勝利したドン・ペドロ一行を迎えてにぎわっている。
若き伯爵クローディオは知事の娘ヒーローに一目ぼれ。友人ベネディックはベアトリスと口論ばかり。主君ペドロの作戦で、
二組のカップルは晴れて恋仲になる。
クローディオとヒーローの挙式が迫る中、ペドロに恨みをもつドン・ジョンとボラチオは2人の仲を裂こうと企む。計略に
はまったクローディオはヒーローに裏切られたと誤解し、結婚式の場で彼女を面罵してしまう。この顛末を不審に思った
司祭は、ヒーローが失意のあまり死んだことにして、クローディオの心を取り戻そうとする。
一方ベアトリスはいとこを辱めたクローディオを許せず、ベネディックにある頼みごとをする。
悪意ある嘘と善意の嘘が入り乱れる中、若き恋人たちは互いの愛を貫けるのか・・・?

字幕はほぼ小田島訳。

今回の演出は舞台を1950年代のシチリアのマフィアに設定。若きクローディオはピストルを懐に入れる。

舞台上には衣装掛けが。これ最近流行だからかと思ったが、特にそういうわけではなかった。途中ベアトリスが隠れるのに
使っただけ。

ドン・ペドロ役のマット・ギャヴァンはセリフがクリアで聞き取り易い。
ベアトリス役のルビー・トーマスは背が高く、美人で声がハスキー。
ベネディック役のジョーダン・ウォーラーはうまいが、セリフが若干聞き取りにくい。
ヒーロー役のジェシカ・ノーマンは背が低くて可愛い(どちらも戯曲の設定上必須)。
修道僧役のアンドリュー・マコーマックは声が素晴らしいが、笑い過ぎる。
レオナート役のウィリアム・ハッチャーは声も演技も素晴らしい。第4幕の嘆きの場では大いに泣かされた。

ダンスシーンで男性陣がランニング姿なのはいただけないが、何種類も面白いダンスを披露してくれて楽しい。
若さはじける舞台だ。

ベネディックはあずまやの後ろに隠れ、飲み物を運んできた女性を引っ張り込んで衣装を取り換える!ズボンの上に
ワンピースを着て男3人の前に出て来て掃除したり飲み物を下げたり・・。その時何度か「スクーズィ」と言う。
イタリア語で「失礼」 という意味らしいが、字幕に訳を出してくれないのはサービス精神に欠ける。以前は
こういう時、日本語を使って客席を喜ばせてくれたのに・・・。

2度目の結婚式の場で、女3人が白い花嫁衣裳を着て白百合の束を持って登場。

ラスト、書記がドン・ペドロにドン・ジョンのことを報告しピストルを渡すと、即座にドン・ペドロが部屋から走り出た
かと思うと銃声3発!裏切り者は粛清されたらしい。

「から騒ぎ」は、かつてケネス・ブラナーの映画を見たが、なまの舞台はたぶんこれが初めて。
芝居の楽しさ、面白さを心ゆくまで味わうことができた。
コメント (2)
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井上ひさし「しみじみ日本・乃木大将」

2012-09-05 14:08:53 | 芝居
7月28日彩の国さいたま大劇場で、井上ひさし作「しみじみ日本・乃木大将」をみた(演出:蜷川幸雄)。

明治天皇大葬の日の夕刻、大帝に殉死することを決意した陸軍大将乃木希典が、静子夫人と共に自邸の厩舎の前で3頭の愛馬に
最後の別れを告げている。そこへ出入りの酒屋の小僧が現われ、この家の書生となることを志願する。彼は、かつて日露戦争で
乃木の軍にいて戦死した兵士の息子だった。
一行が立ち去った後、夫妻のただならぬ様子に異変を感じた愛馬たちが、突如人間の言葉でしゃべり出す。しかもあろうことか
3頭それぞれが前足と後ろ足とに分裂し、合わせて6つの人格ならぬ馬格となって動き出した!勝手気ままに語り出す馬たちに
近所で飼われている2頭の雌馬も加わり・・・。

奇想天外とはこのこと、よくもまあこんなことを思いつくものだ。馬の前足と後ろ足にも階級差別があって、それぞれ
上品なインテリ、下品な大衆・・・と性格づけられている。

役者たちはそれぞれ将軍や将軍夫人になったり、その愛馬の足になったりと忙しい。

井上戯曲の初期傑作とのことだが、退屈でたまらないところもあった。

山県有朋(香寿たつき)と児玉源太郎(朝海ひかる)による宝塚のパロディシーンが一番面白かった。朝海ひかるは、昨年12月
にアーサー・ミラーの「みんな我が子」で初めて見たが、輝かしい美貌と生き生きした演技が魅力的だった。あの時は娘役だった
ので、実は宝塚の男役だったと知って驚いた。この作品では、原作にちゃんと「宝塚風に」と指定がある。
作者の遊び心炸裂だ。

乃木大将の妻静子(根岸季衣)は二人の息子を戦争で失い、夫も不在がちなのを嘆いて、長い一日をどうやって過ごせばいいの
でしょう、と夫に嘆くが、この人は教育を受けたことがないのだろうか。そんなことはあるまい。ならば、退屈で困るということ
にはならないと思うのだが・・。

「明治44年9月1日朝の乃木大将」兼「彼の愛馬寿号の後ろ足」役の吉田鋼太郎は声が大きく滑舌もよく、セリフが全部聞き
取れて気持ちがいい。





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