ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「トップ・ガールズ」

2011-04-28 15:17:20 | 芝居
4月19日シアターコクーンで、キャリル・チャーチル作「トップ・ガールズ」を観た(演出:鈴木裕美)。

第1幕。マーリーン(寺島しのぶ)は会社で専務に昇進し、古今東西の強い女性を招いて昇進祝いのパーティを開く。客は19世紀の旅行家イザベラ・バード(麻実れい)、鎌倉期の日記文学作者二条(小泉今日子)、男性を装い法王になったとされるヨハンナ(神野三鈴)ら。つまりここはまったくのファンタジーだ。それぞれが言いたい放題しゃべりまくり、楽しいが、複数の人が同時に話す時のセリフが聞き取れなくて残念(作者自身による指定らしいが)。

第2幕は打って変わって現実の世界。マーリーンの務める人材派遣会社の人間模様。そして彼女の実家では彼女の姉(麻実れい)と10代半ばの知恵遅れの娘アンジー(渡辺えり)とが暮らしている。

マーリーンの姉はアンジーを愛し大事に育てているのに、アンジーはなぜ彼女を殺したいとまで憎むのだろうか。
時間が前後するので、最後のシーンは初めてアンジーたちが登場する時より前に起こったことだ。そして一番最近の出来事は、アンジーが会社にやって来た日なのだ。それを思うとマーリーンの心の冷たさにひっかかるものがある。

人材派遣会社での面接のシーンは面白いが、1幕と2幕との関連があまりないのが少々物足りない。

2004年に青山円形劇場で観た芝居「ママがわたしに言ったこと」(シャーロット・キートリー作)を思い出した。女4人による4世代にわたる物語。あそこでは、実の母を姉だと言われ祖母を母と言われて育てられてきた娘がいて、彼女も社会でバリバリ働くカッコイイ姉(実の母)に強く憧れていた。真実を知るまでは・・。

つまりこういうことだ。両作品に共通するのは、女が10代で妊娠・出産した場合、その後仕事を人並みにやって自活していくためには、赤ん坊を母や姉に育ててもらわなくてはならなかったということだ。今もその状況はあまり変わってないだろう。育児と仕事が両立可能だったと言いたいマーリーンが「会議室でおっぱいやってる32歳の女性もいるわ!」と言うと、姉は「その優秀な人と17歳の時のあなたと一体どんな関係があるって言うの!?」と言い返す。印象的なセリフだ。

それにしても作者はどうしてこんなに日本文学に詳しいのだろう。この芝居が英語圏で演じられるところも観てみたい。
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映画「12人の優しい日本人」

2011-04-16 18:21:25 | 映画
先日テレビで、映画「12人の優しい日本人」を観た(中原俊監督、1991年)。
脚本は三谷幸喜と東京サンシャインボーイズ。

言わずと知れた名画「12人の怒れる男たち」(シドニー・ルメット監督)に触発されて生まれた?作品。
被告が若い女になっていたり、始め11人が無罪説で1人だけが有罪を主張する設定にしたり、先の映画の主な要素を反転したものかと思いきや、どうしてどうして二転三転、謎解きも十分面白い。女の描き方など時々首をかしげるところもあるが。「ジンジャーエール」のギャグもまあ面白い。

女性は若い女、中年の女、老年の女の3種類が登場する。
男性作家にはこのように、女を年齢別にしか書き分けることのできない人が多い。
斉藤美奈子の「紅一点論」じゃないけど、ここでは12人のうちたったの3人、つまり4分の1しかいない。せめて半分の6人くらいは描き分けてほしいと思う。
でも考えてみれば、かの「・・怒れる男たち」は全員男だったのだから、だいぶ進歩してるとも言える。

林美智子さんが出ていて懐かしい。久し振りに見たが、お元気そうでうれしい・・って何だか親戚のおばさんみたい。
自分の職業を偽った男性がいたが、嘘をついて相手をやり込めるという卑怯な手を使ったのだから、最後に一言あやまってほしかった。
これが映画初出演の若き豊川悦司が、とにかくカッコイイ。


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オペラ「外套」

2011-04-10 18:19:23 | オペラ
3月11日新国立劇場中劇場で、プッチーニ作曲のオペラ「外套」を観た(ただし14時46分まで。新国立劇場オペラ研修所公演)。

セーヌ川の伝馬船船長ミケーレにはジョルジェッタという年の離れた若い妻がいる。彼女は若い荷役人夫ルイージと恋仲で、今夜もマッチの火を合図に逢引の約束をしている。ミケーレは妻に、昔のように愛し合いたいと訴えるが、妻の心は閉ざされたままである。夜になり、ミケーレは甲板でパイプを吸う。この時つけたマッチの火を合図と勘違いして、ルイージが船に忍び込んでしまう・・・。

装置・・灰色の壁に囲まれた空間が様々に動く。
途中「ミミ」のテーマがちょっと歌われる。

妻ジョルジェッタ役の立川清子は声もよく声量もある。
妻の愛人ルイージ役の人は音程が悪い(しばしば高過ぎる)。

「外套」という言葉が出る時、曲調が急に暗くなる。「去年は外套で赤ん坊をくるんで、親子3人幸せだった・・」という歌詞なのに。そう、この夫婦にも幸せな頃があった、それも遠い昔のことではない、しかし赤ん坊の死をきっかけに二人の仲は冷めていき、もう元に戻れなくなってしまったらしい。ここの音楽は、これから起こることを暗示して聴衆に固唾を飲ませる。

夫婦は船上で語り合うが、打ち解けることはできず、妻は去る。夫がこれからパイプに火をつけ、忍び込んできた妻の愛人を殺すという息詰まるシーンとの間、ちょうど歌のない時だった、揺れが始まったのは・・・。

しばらくは舞台の何かの仕掛けかとも思われたが、そのうち客席から立ち上がる人も出始め、オケピットの楽団員が楽器を抱えて逃げて行くのが見えた・・・。

この日はもう一つ、「ジャンニ・スキッキ」というコミカルなオペラと二本立てのはずだった。この日舞台に立つはずだった方たち、オペラ歌手を目指して日々研鑽に励んでいる若い方々には、本当に同情に堪えない。

ちなみに筆者はこの後、いつもなら1時間弱のところを6時間半かかってようやく帰宅できたのでした。


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「夏への扉」

2011-04-04 17:35:26 | 芝居
3月10日ルテアトル銀座で、ロバート・A ・ハインライン作「夏への扉」を観た(劇団キャラメルボックス、脚本・演出:成井豊+真柴あずさ)。

原作は1956年作。そしてこれが何と世界初の舞台化!まさに快挙だ。本作品への溢れる愛を感じた。

実は筆者、この前日(!)にハヤカワ文庫版の原作を衝動買いし、何とか読了したのでした。やっぱり順番(読んでから観る)が大事だと思うし、ハインラインの名前は前から知っていたし、中でもこの作品は「永遠の名作」だとうたってあるので買って損はしないだろうと、「遅読」に自信のある筆者にしては一か八かのリスク(本番までに果たして読み終えられるか?!という)を冒して購入。だって読めなかったらむなしいでしょう。
ところが文章は読み易いしストーリーはメチャメチャ面白いしで、どうにか一日で読了できたのでした。皆さんもぜひ読まれるといいでしょう。

ストーリー:ダニエルは親友と二人で会社を設立、「ハイヤード・ガール」と名付けた家事用ロボットを開発したが、婚約者と親友とに裏切られ、会社もロボットも奪われてしまう。残ったのは飼い猫のピートだけ。彼は二人への復讐を誓うが、逆に捕らわれの身となりコールド・スリープの冷凍場に送られてしまう。長い眠りから覚めると、そこは30年後の2000年だった。会社は?彼の発明したロボットは?愛猫ピートは?その頃彼は、ひょんなことからタイムマシンについて聞き知るのだった・・・!!

台本は長い話をうまく刈り込んでいる。ヌーディストクラブをジュードークラブに変えるなどの工夫も。何よりもまず、この作品では猫のピートが活躍するシーンが重要だから舞台化なんて無理では?SFXを駆使した映画でないと・・・と思ったが、何とこの猫を人がやるのだった。猫でさえそうなのだから、ロボットたちなんか彼らにとって何の問題でもないのだった。

ただ一点、ダニエルが少女リッキーのことを考える時、二階に彼女本人が現れるのはおかしいし、そのために話が分かりにくくなったと思う。

「キャラメルボックス」という劇団は初めて観たが、若い人が多くダンスが売りらしい。
少しドタバタ調が多いようにも感じたが、発声はみんなしっかりしていて好感が持てた。
恐れを知らぬ若者たちの勇気と大胆さに感じ入った次第。
文学作品に感動してこれを舞台化したいと夢見、何年もかけてその夢を実現させた人々に幸あれ!

今回の大震災で、この劇団も困難な状況に直面しているらしい。
どうかあきらめないで、今後もよい作品を上演していってほしい。応援しています。



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