ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

カミュ作「誤解」

2018-11-29 22:10:28 | 芝居
10月17日新国立劇場小劇場で、カミュ作「誤解」を見た(演出:稲葉賀恵)。

小川絵梨子新監督の元での第1作。
ヨーロッパの田舎で小さなホテルを営むマルタ(小島聖)とその母親(原田美枝子)。今の生活に辟易しているマルタは太陽と海に囲まれた国での
生活を夢見て、その資金を手に入れるため、母親と共謀してホテルにやって来る客を殺し、金品を奪っていた。そこに現れた絶好の的である男性客。
いつも通り殺人計画を推し進める二人だが、彼には秘密があった。実は彼は、妹マルタと母を捨て、南の国で成功したジャン(水橋研二)だった。
20年ぶりに故郷を訪ねたのは、二人を援助して幸せにするためだったが、驚かせたくて家族であることを明かさない・・・。

1944年ナチス占領下のパリで初演されたこの戯曲は、東欧で起きた実際の事件から想を得た由。
戦時下、しかも占領下という特殊な状況だから、暗くて救いがないのも仕方がない。

思った通りの展開だが、ラストが弱い。これでは締まりがない。
だがこの作品全体を不条理劇として見れば、そんなの別にどうでもいいのかも。

母親役の原田美枝子は、発声に問題あり。客席を向いていても、小声になると後部座席まで声が届かない。それが残念だ。
その点、妹役の小島聖は滑舌もよく、メリハリも効いて迫力満点。

映画「スケアクロウ」のことをずっと思い出していた。
あれも、長いこと家を空けていた男が、戻って来るが・・・という話。
若き日のアル・パチーノとジーン・ハックマンのロード・ムービー、と言ってしまうと簡単だが、胸打たれる、そして、いろいろ考えさせられて、
いつまでも後を引く物語だ。



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Out of Order イカれてるぜ!

2018-11-17 21:21:40 | 芝居
10月9日下北沢・本多劇場で、レイ・クーニー作「Out of Order イカれてるぜ!」を見た(演出:堤泰之、製作:加藤健一事務所)。

舞台はロンドン。臨時国会の最中だというのに与党副大臣のリチャード(加藤健一)が、敵対する野党議員の秘書ジェーン(加藤忍)と
これから内緒の甘い夜を迎えようと選んだ場所は、ウエストミンスター・ホテルのスイートルーム648号室。
ロケーションは最高!テムズ川を一望できるすばらしい景色を堪能しようとバルコニーのカーテンを開けると・・・そこにはとんでもない物体が!!!!こんなものが知られたら私たちの秘密までバレてしまう!!こんなスキャンダルがあってはならないと、もみ消し作業に呼び出されたのは
リチャードの私設秘書ジョージ(浅野雅博)。
事実を知り嫌がるジョージに無理やり後始末をさせるものの、ホテル支配人(新井康弘)やリチャードの妻パメラ(日下由美)など
次から次へと予期せぬ訪問者のせいで、嘘に嘘を重ねて状況は悪くなる一方・・・バレれば政界も巻き込む大騒動!
もう取り返しのつかないこの事態に、果たして収拾はつくのか・・・!?!?(チラシより)

作者レイ・クーニーの名前は、何度も見たことがあった。
今回、初めて彼の芝居を見て、評判通りのおかしさに納得がいった。
特に、ジェーンの夫ロニー(阪本篤)がおかしい。妻の浮気相手を探し回る粗暴な男だが、少々おつむが弱く、意外と心優しい。
一見こわもてで強そうだが、実は自分に自信がないという弱みを抱えた愛すべき男なのだった。

秘書ジョージ役の浅野雅博が大奮闘。この役のために痩せたのだろうか。気のせいか、いつもよりスリムで、いかにも有能な秘書という感じ。
無茶な要求ばかりするリチャードに振り回されて、どんどん深みにはまってゆく。

泡のようにたわいない話だが、キャスティングもよく、楽しかった。
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「レディ・オルガの人生」

2018-11-05 17:39:56 | 芝居
10月1日吉祥寺シアターで、川村毅作「レディ・オルガの人生」を見た(演出:川村毅、ティーファクトリー公演)。

現在に生きる、ある女。普通に学校を卒業し、会社に勤め、ローンでマンションも買った。結婚はしなかったけれど、特に不自由も感じていない。
かといって特にキャリア志向もなく、普通に暮らせればと願っている。誰かと繋がっていたくもないけれど、ひとりでいたいわけでもない。
多少の無理をしても人との付き合いは大事にしなければと思っている。
ずっと、多数の中で目立たずに、静かに生きていようと思ってきた。時々沸き起こる漠然とした不安、思い出したくない思い出。
彼女には隠したいことがあった。でも、自分にとってそれは大切なものだった。だってそれは、本当は私の個性だから。
・・・・・・彼女には美しい立派な髭があったのだ。(チラシより)

レディ・オルガ(本名ジェーン・バーネル)という米国人女性は、内分泌腺の異常による多毛症により2歳から髭が生え始めたという。
4歳の時、母親にサーカスに売られたのを皮切りに、1940年頃まで、アメリカ最大のサーカスのスター「髭女」として活躍し、1932年
の映画「フリークス」にも出演している由。

物語は現代日本に生きる地味な若い女性を中心に展開する。彼女は会社で何となく孤立しており、ある時、小さな劇団に入団しようと
するが、そこは実はサーカスだった・・・?

いくつもの挿話がにぎやかに盛り込まれている。
中ではドラキュラ伯爵の話など面白い。
ただ、ドラキュラ伯や鬼一族などファンタジックな異形の人々はいいが、シャム双生児の姉妹のシーンだけは笑えなかった。
何年も前だが、実際にちょうどあんな形で結合したまま10代後半まで成長した姉妹が外国にいて、思春期を迎え、悩み深く、
将来の夢もそれぞれにあり、分離手術をしたが、失敗して二人共亡くなったことがあった。
そのことがあまりに悲しく記憶に残っているので。
それから、シャボン玉劇場のコントは古過ぎて、観客のほとんどは分からないのでは?

役者では、占い師役などの、のぐち和美が懐しい。かつて寺山修二の芝居で見た、独特の存在感ある怪優。 
主演の渡辺真起子は初めて見たが、好演。

作者はシェイクスピアが好きらしい。
劇中劇の脚本を担当するアルビノの青年は、ハムレットのセリフをいろいろ口にする。

川村毅の作品は初めて見たが、今という時代を見つめる、鋭くて温かいまなざしを持つ人だと思った。
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