9月14日世田谷パブリックシアターで、エリック・エマニュエル・シュミット作「謎の変奏曲」を見た(演出:森新太郎、翻訳:岩切正一郎)。
1996年パリで初演。アラン・ドロン主演で大好評を博し、以来世界各国で上演されている由。
作者シュミットはフランス人。題名はイギリス人作曲家エルガーの「エニグマ変奏曲」から来ている。二人芝居。
日本ではこれまで、仲代達矢と風間杜夫、杉浦直樹と沢田研二という組み合わせで上演されてきた。
その初日を見た。
ノルウェー沖の孤島で一人暮らしをしているノーベル賞作家アベル・ズノルコ(橋爪功)のもとへ、地方新聞の記者と名乗るエリック・ラルセン
という男(井上芳雄)がやって来る。ズノルコの最新作、恋愛小説「心に秘めた愛」についての取材のためだ。ラルセンは、屈折したズノルコに
手を焼きながらもインタビューにとりかかる。
ある男と女の往復書簡からなる「心に秘めた愛」に実在のモデルは存在するのか?なぜ突然ぷっつりとこの手紙のやりとりは終わってしまったのか?
記者嫌いのズノルコが特別にラルセンの取材に応じた理由とは?ズノルコにとっての愛とは?
すべてが謎であった。
まさに白夜が終わり、夜の季節に移り変わろうとするその日の午後、こうしたラルセンの意味ありげな質問は続き、やがて二人をめぐる衝撃的な
真実が次第に明かされていくのであった。(チラシより)
批評の前に、世田谷パブリックシアターの客席について不満を述べさせてもらいたい。
2階の端の6人掛けの椅子の一番中央寄りの席だった。既に4人が座っていて、通路の片側は柵があって通れないようになっており、しかも
列と列の間が狭いため、普通するように人が座っている前を通ることができない!仕方なく、4人全員に一度立って出てもらって入るしかなかった。
こんな劇場が他にあるだろうか。ここには何度も来たことがあるからこういう席はほんの一部だろうが、それにしてもひどい。
こんな経験は二度としたくない。何とかしてほしい。
さて、芝居だが、重苦しい成り行きに、ラストをどうやって締めくくるのかと心配になったが、意外と軽い感じでコミカルに終わった。
随所に笑いも。
3つの衝撃がズノルコ(と観客)を襲う。
ズノルコはかつての愛人エレーヌと長年手紙を交換してきたが、ラルセンは彼女の夫だった。そして彼女は死んだという。だがその後、さらに
驚くべき真実が明らかになる。
作家は偏屈だが、青年はそれに輪をかけた変わり者だった。
それで、マクドナーの「スポケーンの左手」という芝居を思い出した。そこにはとてつもなく変な中年男が出てくるが、別の若者の方が彼よりも
さらにオカシイことが次第に分かってくるのだった。
二人にとって大事な人であるエレーヌは登場しない。ただこの女性が「顔がひどく醜い」と描写されるのが、劇のヒロインとしては非常に珍しい。
「体は肉感的で卑猥な印象を与える」とも。二人はひどく下品な言葉も発する。
ところでタイトルになっているエルガーのエニグマ変奏曲は、途中何度かレコードをかけるシーンで流れるが、ストーリーとは直接関係ない。
だからなぜこの題名にしたのかよく分からない。
風変わりな芝居だった。
ラルセン役の井上芳雄は何度か見たことがあり、ミュージカル出身でありながらストレートプレイも達者にこなす優れた役者だと思うが、
この日は初日だったせいか、セリフや体の動きにいささか精彩が欠けていたような気がする。
橋爪功はいつもながら楽しませてくれた。
1996年パリで初演。アラン・ドロン主演で大好評を博し、以来世界各国で上演されている由。
作者シュミットはフランス人。題名はイギリス人作曲家エルガーの「エニグマ変奏曲」から来ている。二人芝居。
日本ではこれまで、仲代達矢と風間杜夫、杉浦直樹と沢田研二という組み合わせで上演されてきた。
その初日を見た。
ノルウェー沖の孤島で一人暮らしをしているノーベル賞作家アベル・ズノルコ(橋爪功)のもとへ、地方新聞の記者と名乗るエリック・ラルセン
という男(井上芳雄)がやって来る。ズノルコの最新作、恋愛小説「心に秘めた愛」についての取材のためだ。ラルセンは、屈折したズノルコに
手を焼きながらもインタビューにとりかかる。
ある男と女の往復書簡からなる「心に秘めた愛」に実在のモデルは存在するのか?なぜ突然ぷっつりとこの手紙のやりとりは終わってしまったのか?
記者嫌いのズノルコが特別にラルセンの取材に応じた理由とは?ズノルコにとっての愛とは?
すべてが謎であった。
まさに白夜が終わり、夜の季節に移り変わろうとするその日の午後、こうしたラルセンの意味ありげな質問は続き、やがて二人をめぐる衝撃的な
真実が次第に明かされていくのであった。(チラシより)
批評の前に、世田谷パブリックシアターの客席について不満を述べさせてもらいたい。
2階の端の6人掛けの椅子の一番中央寄りの席だった。既に4人が座っていて、通路の片側は柵があって通れないようになっており、しかも
列と列の間が狭いため、普通するように人が座っている前を通ることができない!仕方なく、4人全員に一度立って出てもらって入るしかなかった。
こんな劇場が他にあるだろうか。ここには何度も来たことがあるからこういう席はほんの一部だろうが、それにしてもひどい。
こんな経験は二度としたくない。何とかしてほしい。
さて、芝居だが、重苦しい成り行きに、ラストをどうやって締めくくるのかと心配になったが、意外と軽い感じでコミカルに終わった。
随所に笑いも。
3つの衝撃がズノルコ(と観客)を襲う。
ズノルコはかつての愛人エレーヌと長年手紙を交換してきたが、ラルセンは彼女の夫だった。そして彼女は死んだという。だがその後、さらに
驚くべき真実が明らかになる。
作家は偏屈だが、青年はそれに輪をかけた変わり者だった。
それで、マクドナーの「スポケーンの左手」という芝居を思い出した。そこにはとてつもなく変な中年男が出てくるが、別の若者の方が彼よりも
さらにオカシイことが次第に分かってくるのだった。
二人にとって大事な人であるエレーヌは登場しない。ただこの女性が「顔がひどく醜い」と描写されるのが、劇のヒロインとしては非常に珍しい。
「体は肉感的で卑猥な印象を与える」とも。二人はひどく下品な言葉も発する。
ところでタイトルになっているエルガーのエニグマ変奏曲は、途中何度かレコードをかけるシーンで流れるが、ストーリーとは直接関係ない。
だからなぜこの題名にしたのかよく分からない。
風変わりな芝居だった。
ラルセン役の井上芳雄は何度か見たことがあり、ミュージカル出身でありながらストレートプレイも達者にこなす優れた役者だと思うが、
この日は初日だったせいか、セリフや体の動きにいささか精彩が欠けていたような気がする。
橋爪功はいつもながら楽しませてくれた。