ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「錬金術師」

2014-06-23 18:16:17 | 芝居
5月30日東京芸術劇場シアターウエストで、ベン・ジョンソン作「錬金術師」をみた(演劇集団円公演、上演台本・演出:鈴木勝秀)。

作者はシェイクスピアと同時代人で、ライバルだった人。

主人の留守を任されている男(橋爪功)は、仲間の詐欺師たち(金田明夫と朴璐美)と共謀して人々を騙し、金儲けをしようとする。
金持ちの男、タバコ屋の女主人、果ては聖職者たちが次々に彼らの巧妙な手口に騙され、金を巻き上げられる。とそこにひょっこり
主人が帰ってきて…。

ただのドタバタ劇とも言えるが、橋爪功の芸、朴璐美の迫力と美しさ、そして円の役者たちの質の高い演技、演出の巧みさで
面白い作品になった。
幕間はないが、隣人たちが世間話をするというシーンが挿入されている。その間に主演の3人が休憩をとっているのだろう。

朴璐美という人をみたのは、確かこれで3度目だが、この役が一番ぴったりと言ったら気を悪くされるだろうか?
でも悪い意味ではない。最前列の席だったこともあり、とにかく彼女の迫力に圧倒された。
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三谷幸喜作「酒と涙とジキルとハイド」

2014-06-16 18:28:03 | 芝居
4月8日東京芸術劇場プレイハウスで、三谷幸喜作「酒と涙とジキルとハイド」をみた(演出:三谷幸喜、プレヴュー公演)。

タイトルからも明らかなように、スティーヴンソンの「ジキル博士とハイド氏」を元に三谷幸喜が書いた最新作。

19世紀末のロンドン。ジキル博士が開発した新薬は、人間を善悪二つの人格に分ける画期的な薬、のはずだった。
それを飲んだジキル博士は、別人格のハイド氏に変身する、はずだった。
学会発表を明日に控え、薬が全く効かないことに気づいたジキル博士。
追い詰められた末の起死回生の策とは?

期待しないで行ったら、これがまことに面白かった。実質この日が初日なのに、そして役者と音楽家との細かい連携プレイが要求される
芝居なのに、既に完璧なまでに練られていた。
何よりシチュエーションコメディとしての脚本が冴えている。

わらにもすがりたい博士は奇策を思いつき、無名の役者(藤井隆)に目をつける。
助手(迫田孝也)がまず彼に「反復横跳びできます?」と聞く。唐突だ。なぜここで反復横跳びが出てくる?もちろん後でその理由は明らか
になるが、その時思い返すとおかしい。バカバカしいけど、とにかく文句なくおかしい。
助手が「解毒剤」を差し出すタイミングも素晴らしい。

ジキル博士役の片岡愛之助は美貌と美声を併せ持つが、女性に対して不器用で無骨な男にはとても見えないところが難点。まあ無いものねだり
ですが…。

助手役の迫田孝也はいい味を出している。チラシではチョイ役みたいな扱いだが、この役は非常に重要。

博士の婚約者役の優香は可愛らしい。この役も女優にとってやり甲斐のある役だ。


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イプセン作「幽霊」

2014-06-02 17:15:58 | 芝居
3月28日シアターコクーンで、イプセン作「幽霊」をみた(演出:森新太郎)。

愛のない結婚を否定しつつも世間体に縛られて放縦な夫のもとに留まり、夫亡き後も家名を守るため偽善に終始してきたアルヴィング夫人。
夫の偽りの名誉を称える記念式典を前に、可愛い一人息子のオスヴァルが、病を患って留学先から帰国する。
オスヴァルは夫人の召使いレギーネとの結婚願望を母親に打ち明けるが、彼女は亡き父が当時の女中に産ませた異母妹だった…。

状況が少しずつ明らかになってゆくが、しまいには救いのない結末が訪れる。まさに「親の因果が子に報い」。

チラシによれば、「1881年に発表され、当時の社会ではタブーとされる問題に果敢に切り込んだため、決して上演が認められなかった
イプセンの問題作」とのこと。タブーとは何だろうか。一家の主人が女中に手を出すことか。階級社会ゆえにそういうことが起こると、
レギーネの母のように、即何とかうまく隠してしまったのだろう。そう言えば、デンマークの哲学者キルケゴールの場合も、母は父の女中
だった(後に正妻になるが)。そのことを知って、彼は苦しんだのだった。

牧師マンデルス役の吉見一豊は、いつもながら達者な演技で安心して見ていられる。
夫人役の安蘭けいはうまいが、必要以上に笑いを誘うような演技が見られ、違和感があった。演出家の意図なのか。
レギーネ役の松岡茉優はなかなかの好演。
息子役の忍成修吾は体のバネが効いている。

タイトルの意味するところがイマイチよく分からない。セリフにもちょっと出てきたが。

若く健康で生命力に溢れたレギーネと、同様に若いにもかかわらず病のために未来に希望の持てないオスヴァルとの対比が鮮やか。


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