ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

三谷幸喜作「紫式部ダイアリー」

2014-12-30 17:29:30 | 芝居
11月11日パルコ劇場で、三谷幸喜作「紫式部ダイアリー」をみた( 演出:三谷幸喜)。

斉藤由貴と長澤まさみの二人芝居。しかも三谷幸喜の最新作だから当然満席。

とあるバーで清少納言(斉藤由貴)が紫式部(長澤まさみ)を待っている。曙文学賞の選考会と発表を明日に控え、和泉式部を推薦したい
彼女は、2年連続、記者会見で講評をやっており、今年もやりたいので、その根回しに紫式部(以下紫)を誘ったのだ。ところが紫は話を
聞くだけ聞いた後、言う、先ほど実行委員たちに講評を依頼され、承諾したと。しかも彼女は和泉式部を嫌っていた…。
二人は次々にカクテルやウイスキーを注文しては飲む。が、紫の携帯に原稿の催促の電話が何度もかかってきて、その都度会話が中断され
る。彼女は体調が悪くて今実家に来ていると偽り、清少納言(以下清)に実家の母のふりをして電話に出てくれと頼んだり、執筆中の「源氏
物語」のプロットをイラストレーターに伝えないといけないから一緒に考えてくれと迫ったり、と清を困らせる…。

観るまでは、一体どういう芝居なのか、どう料理するつもりなのか、と思ったが、要するに、平安時代の二人をそのまま現代に置き換えて
みたら面白いんじゃないか、という軽いノリのようだ。紫の「ツイッターとかやらないんですかぁ?」というセリフが象徴的。

始めは源氏物語を「読んでないの」と言っていた清が、実は熟読していることがうっかりバレてしまったり、清の作品への紫のいかにも
彼女らしいコメントとか、面白い。藤原道長との関係について探りを入れる清に対して軽くいなす紫とか。
ただ、紫が電話の途中で急に気が変わるところが納得行かない。この作品の一番の問題点だ。三谷さん、何とかして下さい。
ラストも弱い。何とか工夫してほしい。

紫式部役の長澤まさみは初めてナマでみたが、そのうまさに驚嘆した。まさかこれが初舞台ではないと思うが、そして三谷さんがいつもの
ように当て書きしているとは思うが、それにしてもうまい。声はよく通るし、メリハリはあるし、細かなニュアンスもしっかり表現できる
人だ。

清少納言役の斉藤由貴も、ナマでみるのは初めて。奔放な紫式部に振り回されるさまがおかしい。





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オペラ「プラテ」

2014-12-23 21:57:25 | オペラ
11月7日北とぴあさくらホールで、ラモー作曲のオペラ「プラテ」をみた(セミステージ形式、オケ:レ・ボレアード、
指揮・演出:寺神戸亮)。
仏語上演。

今年はラモー没後250年の記念の年ということで、彼の作品中、当時最も人気を博したこの傑作オペラを取り上げることになった由。

天上の神々が浮気者のジュピテルと嫉妬深い妻ジュノンの関係を使って喜劇を作ることに。ジュピテルに好かれていると嘘を聞かされた
カエルの女王プラテは醜いが自意識過剰。すっかりその気になり、あれよあれよという間に(偽の)結婚式を執り行うことに。そこへ
夫の新たな浮気に怒り狂うジュノンが登場して…。

初めてみたオペラだが、18世紀フランスの大家ラモーの音楽の美しさ、楽しさにすっかり魅了された。

歌手たちがすごい。まず愛の神アムール(キューピッド)と陽気な精ラ・フォリー役のベツァベ・アース。第2幕でのアリアのあまりの
見事さに、つい拍手してしまった。日頃はアリアの後決して拍手しない主義だが、ここは舞台上のカエルたちも拍手するシーンなので、
芝居を中断するわけではないし、許されるだろう。
そして主役プラテ役のマティアス・ヴィダル。
最高神ジュピテル(ゼウス)役のフルヴィオ・ベッティーニ。この人は北とぴあではお馴染み。
ギリシアの王シテロン役の与那城敬は声がいい。
ジュピテルの使者の神メルキュール役の安富泰一朗は演技がうまい。

その他、中には残念な歌手もいたが…。

音楽が変化に富み、話の内容に見事に沿っていることに驚嘆した。

歌のないオケだけの所は間を持たせるために、歌手たちが計算し尽くした所作(芝居)をやってくれたので、何とか耐えられたが、
それでもやはり、3箇所ほどある長い部分が辛かった。初演当時は、その部分でバレーが上演されたので、聴衆は退屈することなく
楽しめたらしい。

このオペラはまたぜひ見たい(聴きたい)が、その際はぜひ
 ① 歌のない部分をバッサリカットするか(1時間半で終われるのでは?)
 ② 当時のままにバレーを入れるか(入場料は高くなるだろうが)
のどちらかにしてほしい。

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オペラ「戯れ言の饗宴」

2014-12-18 18:26:09 | オペラ
10月26日新国立劇場中劇場で、ウンベルト・ジョルダーノ作曲のオペラ「戯れ言の饗宴」をみた(台本:S.ベネッリ、オケ:東京
オペラ・フィルハーモニック管弦楽団、指揮:時任康文、演出:馬場紀雄)。

イタリア語上演。日本初演。

15世紀後半のフィレンツェ。3人の男が美女ジネーヴラをめぐり繰り広げる愛憎劇。ネーリ(村田孝高)とジャンネット(上原正敏)は
ジネーヴラ(翠千賀)に愛の告白をすると、彼女はネーリを選ぶ。ジャンネットは恋合戦に破れたことをネーリとその弟ガブリエッロ
(北嶋信也)にからかわれ、袋詰めにされ川へ放り込まれる。復讐に燃えるジャンネットは宴席でネーリを酩酊させ、その隙にジネーヴラ
を略奪。それを知ったネーリは錯乱し、皆に狂人扱いされる。
ジャンネットは復讐を続行、弟ガブリエッロも密かにジネーヴラに思いを寄せていることを利用し、兄ネーリには自分がジネーヴラと
部屋で逢引をすると伝え、弟には彼女が部屋で待っていると伝える。兄は彼女の部屋に忍び込みベッド上の男を刺し殺す。しかし
殺してしまったのが最愛の弟と分かり、ネーリは今度こそ本当に狂ってしまう。

知らない作曲家だが、1924年初演というから現代音楽かと思ったら、古典的で、緊張感に満ちた美しい音楽だった。

第1幕が始まると、そこは宴会場。この時点で、既に「袋詰め ⇒ 川に放り込まれ」事件は終わっている。この宴会はそもそも「和解
の宴」のはずだったが、そうはいかなかった。

ヒロイン、ジネーヴラはとんだ食わせ者で、恋人の弟であるガブリエッロにも色目を使う。

歌手はみなうまい。特にネーリ役の村田孝高は演技も達者。

第2幕。ネーリとジネーヴラは結婚したらしい。ネーリが狂ったという噂を流し、策略を巡らして留守宅に忍び込み、ジネーヴラと
まんまと床を共にするジャンネット。

当時の恋愛事情、結婚事情がよく分からないので、話の展開について行くのが大変だったが、音楽は素晴らしい。

ラスト、執念深く、執拗に復讐を果たしたジャンネットに、仲間が「逃げよう」と言うが、彼はその場を動かない。自分のしでかしたこと
が恐ろしくなったのか、己の罪の重さにおののいたのか。
憎い敵ネーリは、間違って最愛の弟を殺してしまったと知って本当に気が狂ってしまう。それを見てジャンネットはうめき声を挙げて泣く。
彼の心理描写の深さに打たれた。
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「ブレス・オブ・ライフ」

2014-12-09 16:21:10 | 芝居
10月17日新国立劇場小劇場で、デイヴィッド・ヘア作「ブレス・オブ・ライフ ~女の肖像~」をみた(演出:蓬莱竜太)。

日本初演。この秋の二人芝居シリーズの第1弾。
ロンドンで興行記録を塗り替えた話題作の由。

イギリスのワイト島にあるテラスハウス。その家の住人であるマデリン(若村麻由美)の元を、フランシス(久世星佳)が訪れる。
専業主婦だったフランシスは現在流行作家となり、夫の長年の不倫相手だったキャリアウーマンのマデリンとの回想録を書きたくて
訪れたのだ。当の夫は、すでに若い彼女とシアトルで暮らしている。一人の男を愛した二人の女の夜を徹した対話が始まる。

舞台は終始、マデリンの書斎。天井まで占める本棚にぎっしり詰まった書物が圧倒的な存在感(美術:伊藤雅子)。

マデリン役の若村麻由美がうまい。自立して一人生きるキャリアウーマンで、精神の自由を体現しているよう。とにかくカッコイイ。
フランシス役の久世星佳は始めぎこちないが、回想シーンでは挽回してきた。意外とユーモアのある役だ。

フランシスの夫マーティンと出会ったのは、マデリンの方が先だった。二人は出会った直後に些細なことで喧嘩別れしてしまい、
次に偶然会ったのは何年も後で、彼はすでにフランシスと結婚していたのだった。
それから二人は長い間不倫の関係を続け、しばらくはフランシスも二人の関係に気づかなかった…。

若い二人が初めて出会った日、キング牧師の演説を聴いたとか、時代と社会の流れが興味深い。

翻訳(鴇澤麻由子)が素晴らしい。全編を通して実に自然で流れるような、違和感のない日本語。

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