ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

サローヤン作「君が人生の時」

2017-07-30 22:19:49 | 芝居
6月13日新国立劇場中劇場で、ウィリアム・サローヤン作「君が人生の時」をみた(演出:宮田慶子)。

舞台はサンフランシスコの波止場の外れにある、安っぽいショーを見せるニックの酒場。様々な事情を抱えた客がやって来ては去ってゆく。
ピアノの名手、ダンサー、港湾労働者、哲学者、警察官、娼婦・・・。若い放浪者ジョーは、いつからかこの店にやって来て毎日朝から晩まで
シャンパンを飲んで過ごす不思議な男だった。彼の弟分となったトムは、客の一人で自称女優の魅惑的な女性キティに恋しているが、想いを
打ち明けられずにいた・・・。
その初日。

とにかく登場人物が多い。少なくとも16人以上(チラシによると25人!)。芝居の本筋に関わりのある人はそのうちの数人だから、話が
どんどん拡散してゆく。それらをうまくまとめるのは至難の技だ。
酒場の主人ニックはカトリック。常連客ジョーはアイルランド出身。後で出てくる女性客もアイルランド人。
娼婦キティ・デュバルはポーランド出身で、本名はカタリーナ・何とかスカヤ。
新聞売りの青年はギリシャ出身、ハーモニカ吹きの男は何とアッシリア人!
このように、移民社会の縮図のような店だ。

今回席が遠く、知ってる役者が何人も出ているはずなのによく分からなかった。
唯一木場勝己だけはすぐに分かった。今までこの人を何度も見てきたが、今回の役が一番よかったように思う。「きらめく星座」などでの
説教臭さもないし。
ピアノ弾き役の人のピアノがうまい。タップダンサー役の人のタップも上等。この二人の演奏と演技は大いに楽しかった。

キティを苦境から救い出すというのが縦糸。
ラストはハッピーエンドだが、謎は謎のまま残るので(たとえばジョーはまだ若いのに働きもせずどうやってありあまるほどの金を得ているのか)、
観客にとっては消化不良な感じ。
ちょっぴり少女漫画チックな話だ。

ある時代のある場所での情景を、そのまま絵として描写したような作品か。

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「フェードル」

2017-07-20 13:34:15 | 芝居
4月25日シアターコクーンで、ジャン・ラシーヌ作「フェードル」をみた(演出:栗山民也)。

舞台はギリシャ、ペロポンネソス半島の町トレゼーヌ。行方不明となったアテネ王テゼ(今井清隆)を探すため息子イポリット(平岳大)は
国を出ようとしていた。一方テゼの妻フェードル(大竹しのぶ)は病に陥っていた。心配した乳母パノープ(キムラ緑子)が原因を聞き出すと、
夫の面影を残しつつ夫には失われた若さと高潔さに輝く継子イポリットへの想いに身を焦がしていると白状する。
苦しみの末、フェードルは義理の息子に自分の恋心を打ち明ける。しかしイポリットの心にあるのは、テゼに反逆したアテネ王族の娘アリシー
(門脇麦)。イポリットはフェードルの気持ちを拒絶する。そんな中、テゼが突然帰還して・・・。

バックにかすかに入る効果音がいい。
フェードル役の大竹しのぶは最近発声する時に妙な癖がついてきて、それが終始気になる。迫力があるというのか、露悪的というのか、妙に
力が入り過ぎていて声も異常に低くおっさんのよう。時々ならともかく、いつもそうなので困る。

アリシー役の門脇麦には驚いた。味もそっけもない話し方で、いつも同じ調子で叫ぶのみ。この役にはもっと女性らしい魅力がほしい。
イポリット王子はこんな女のどこに惚れたのか、と不思議に思うくらい。
恥ずかしながら、評者はこの名作を知らなかったので、アリシーの本心が分からず戸惑った。この人、本当に王子が好きなのか?と。
だって、自分が密かに恋する相手が、実は自分に恋していると分かったら、普通嬉しいでしょうが。
その思いがけない喜びの表現がまるで無いので、実に困る。
これが初舞台なのか?だとしても、あまり舞台には向いてないように思う。
その点、イポリット役の平岳大は内面の表現力が豊かでよかったが、意外なことに滑舌があまりよくない。惜しい。

乳母パノープ役のキムラ緑子と王役の今井清隆は好演。

演出は他と比較できないが、素敵だった。
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