掲げるモノの未来へ・３

掲げるモノの未来へ・３


弦也「それだけじゃないんです・・・

　　　その日から、うちの施設のホームページにも

　　　そういった書き込みがされるようになって

　　　誹謗中傷が投稿されています・・・

　　　それも複数人を装っているのですけど

　　　文体が一緒だから、たぶん一人が何度も

　　　書き込んでいるみたいで・・・。」

透明「それで、さっきの言葉というわけか・・・」

弦也「すみません・・・くだらないですよね

　　　俺が何か足りないから、こういったことを

　　　書かれるのだと思います・・・」

透明「いやいやそんなことはないよ

　　　弦也くんはプロのカウンセラーとして

　　　一生懸命努力して患者さんの為に

　　　頑張ってるんだもの

　　　でも、そういったことを言われたり、

　　　書き込まれると凹むよね」

弦也「はい・・・」

透明「まあ、昔からクレームとかは、当たり前に

　　　あったけど、今の時代は特に多いよね

　　　ネットの普及で誹謗中傷をしやすくなった

　　　というか思っているフシもあるから

　　　かなり悪質なものも増えてきている気がする」

弦也「そうですよね」

透明「言っている方は、一方的に言い捨てることが

　　　できるけど、言われる側は心が抉られるしね」

弦也「はい正直、ナイフで本当に刺されたくらい

　　　の感覚になります」

透明「まあ、言っている人にも色々とあるのだろうけど、

　　　人って、自分の人生の責任を負うのが

　　　苦手だし、苦しいときもあるから、

　　　

　　　誰かのせい、何かのせいにすると

　　　少し楽になるのかもしれないよね

　　　ただ、そのことに気づけないでいると、

　　　いつまでもそこから抜け出すことが出来なくて、

　　　もっと苦しくなっちゃうから、早くそのことに

　　　気づいて欲しい とは思うけどね」

弦也「でも、そういう人って相手の心を抉るつもりで

　　　そういう言葉使ってきますよね

　　　それって、悪意じゃないんですか」

透明「う～ん・・・

　　　まあ、悪意が無いとは言えないけど、

　　　人にもよるかなぁ

　　　通常は言葉を発した側は言ったことに対して

　　　相手が反省し足りない部分をどうにか改善

　　　してくれるのを望んでいるのだと思うけど、

　　　受けた側もそれに応えるかどうかを考えるよね

　　　ただ、伝え方を間違えると、単なる誹謗中傷に

　　　なってしまうし、今までの関係が一気に崩れる

　　　こともあるから、言葉を選ぶのは大切だと思うんだ」

弦也「う～ん・・・最近ではSNSで誹謗中傷が

　　　騒がれていますけど、加害者を問い詰めると、

　　　傷つけるつもりはなかったとか言いますよね

　　　でも、そんなのは絶対にありえないと思うんです

　　　言われて嫌なことを知っていなければ

　　　使えない言葉ってありますよね」

透明「ま、まあそうかもしれないよね

　　　悲しいことだけど・・・。

　　　確かにSNSだと確実に画面に言葉が残って

　　　世間にさらされる分かなりたちが悪いよね

　　　それだけじゃなく、こういった強い言葉は

　　　言われた側の心に残ってしまうから

　　　二重に苦痛を与えるものなのかもしれない

　　　昔から、小さい時に学校でも言葉の使い方・選び方は

　　　教えられるもので、それだけ大切なものなんだけどね

　　　最近では、特に言葉に対する責任が問題視されて

　　　いるから、普通に犯罪行為なのだけど、相手は

　　　そこまではわかってないのかもしれないね」

弦也「うちの施設でも、こういったことにどう対処するか

　　　今検討しているみたいで、俺も職場で浮いてしまって・・・。

　　　もしかしたら今の所には居られないかもしれません」

透明「えっそこまでしなくても」

弦也「同期達は気にするなと言ってくれてますけど、

　　　他の人の目が明らかに変わっていて・・・」

透明「う～ん・・・そういった問題もあるのか・・・

　　　ちなみに、施設の方からは何か言われたの」

弦也「これ以上続くようなら、開示請求をかけて

　　　訴えるとのことです・・・相手は

　　　匿名での掲載ですから・・・。」

透明「なるほど・・・。」



　　　　　　　　　　　　続く・・・。

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掲げるモノの未来へ・２

掲げるモノの未来へ・２


川崎　弦也（かわさき　げんや）くんは

施設で働くカウンセラーさん

普段は元気いっぱいの彼なのだが、

何故か今日は深刻な面持ちで

鑑定室に入ってきた・・・。

なんとなくそれを察した私は、彼が

リラックスできるようなハーブティーを入れ

席につく・・・。

すると突然先程の発言が飛び出した


透明「と、突然どうしたの」

弦也「いえ・・・なんだか疲れてしまって・・・」


何か辛いことがあったのかもしれないな・・・。


透明「君はカウンセラーという人の気持ちに寄り添う

　　　仕事をしているから、少しナーバスに

　　　なることもあるんじゃないかな」

弦也「そうかもしれませんね・・・」

透明「ちなみに何があったのか聞かせてくれる」

弦也「いや、えっと・・・はい」


何となく言いづらいことなのかな

彼の口は重く、なかなか言葉が出てこなかった・・・。



透明「無理はしなくていいからね

　　　言いたくないことは言わなくて良いし、

　　　自分がスッキリするなら聞くことはできるからさ」

弦也「あっすみません言いたくないとか

　　　言いづらいとかは無いんですけど、

　　　思い出すのが怖いというか・・・。

　　　でも聞いてもらえますか」

透明「もちろん」


彼は意を決したのか、言葉を紡ぎ始める・・・。


１ヶ月前・・・

彼の働く施設では夏に向けた催しがあり、

その催しには多くの施設利用者さんやその家族、

患者さんなどが集まったとのこと

そこでの彼は、いつものカウンセラーとしてではなく

皆さんに振る舞う小さな屋台を任されており、

不器用ながらも一生懸命屋台をこなしていた。


しばらくして一人の患者さんが彼の元に歩み寄り

爆弾発言を投下する


患者「・・・先生さ

　　　そっちの方が合ってんじゃない

　　　診療してる時より、楽しそうだし・・・。

　　　カウンセラーなんてやめて、屋台やったら

　　　あんまり意味ないし・・・。」

弦也「」


「あんまり意味がない」

その言葉は、どういうつもりで投げかけられたのかは

分からないが、彼の頭の中にクリーンヒット

してしまい、その日からその言葉が頭の中で

繰り返されるようになってしまったとのこと。


透明「な、なるほど・・・。」


こりゃ～よっぽど効いちゃったのかもしれないなぁ




　　　　　　　　　　続く・・・。

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掲げるモノの未来へ・１

掲げるモノの未来へ・１


透明「みなさ～んおはようございま～す

　　　今回のお話は、正直かなり迷ったのですが、

　　　これからの皆さんの人生をより良くする

　　　ために、一つの切っ掛けになるのでは

　　　と思い、書いてみようと思います

　　　このお話は本来、語り部がいない・・・

　　　というよりは、あまり触れてはいけない

　　　話なのですが、そこはもう今更かなぁ～

　　　と勝手に判断して「書いちゃおっと」

　　　とか思っちゃったので、注意されると

　　　消さなければならない可能性もあります

　　　・・・ということで、皆さんには

　　　タイムリーに読んでいただけたら幸いです

　　　では早速鑑定ファイル

　　　始めていきたいと思いま～す」


（ちなみに、記事の本題は後半になりま～す）


～・～・～・～・～・～・～・～・～・～・～


とある夏の雨の日



弦也「先生・・・俺・・・

　　　何の為に、生きてるんでしょう」

透明「えっはい」


突然の質問に目を丸くする透明先生

一体彼に何が



鑑定ファイル１４２

川崎　弦也(かわさき　げんや)くん

３２歳　　カウンセラー


スタートです



　　　　　　　　　　続く・・・。

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三郎の歌～・１９

三郎の歌～・１９


泣き崩れていた山路さんの背中をさすり

しばらくすると、落ちた電気が復興する・・・。

３人と１匹は少し落ち着きを取り戻し、

食堂へ・・・。


この後、簡単ではあったが私達の仕事などを

山路さんに話し、落ち着いたところで各自

部屋へ戻り、就寝する・・・。


翌朝・・・

簡単な朝食をとり、昨日の地震で倒れて

しまった箪笥などを元に戻す手伝いをしたり、

民宿が機能するところまで戻すことができた私達は

結界の仕事に戻ることにする


透明「山じいさんお世話になりました」

出口「ありがとうございました」

山路「何言ってるんだ

　　　俺の方が何倍も世話になってしまって

　　　本当にありがとうな」

透明「いえいえ

　　　また、仕事でこちらに来る時は

　　　お世話になりに来ますので、

　　　元気でいてください」

山路「あんちゃんたちはもう俺の家族だからよ

　　　遠慮なく、いつでも帰ってきてくれ

　　　三郎も待ってるからよ」

三郎「わふっ」

透明「くすくすありがとう」

出口「また帰ってきますねそれと・・・」

山路「」


出口くんは、恐る恐る三郎に手を伸ばす・・・。


三郎「きゅ～ん・・・わふっ」

出口「よ～しよ～し」


出口くんの手が三郎の頭を撫でている


透明「出口くん」

山路「あんちゃん」

出口「あははっ三郎はもう家族ですから」

透明「くすっ」

山路「あんちゃん・・・俺も三郎も

　　　待ってるからな」

出口「はい」


私達は山じいさんと三郎に手を振りながら仕事に向かう


車の中・・・


出口「先輩一期一会・・・大切ですね」

透明「そうでしょ～

　　　私達の仕事は理解するのが難しい仕事だから

　　　なかなか人との縁を繋ぐのが難しいよね

　　　それでも、一時でも心を通わせることができれば

　　　きっと人と人は繋がることができる

　　　だから、自分をさらけ出して、真っ直ぐに

　　　向き合うことは大切なことだと思うよ」

出口「・・・・勉強になります

　　　自分はあまり人と関わらない方が良いと

　　　思っていたクチですから、今回のことで

　　　少し考えが変わりましたよ」

透明「あははまあ、気を楽に行こうよ

　　　さて、次の場所は・・・。」

出口「あ～っそう言えば・・・」

透明「」

出口「先ほど連絡があって、昨日の地震で

　　　何箇所かやり直ししなくちゃ

　　　ならなくなったみたいです・・・」

透明「ええ～～～～っふ、振り出しか～～～」


青い空の下、沢山の人の生活があり、

それぞれの物語が紡がれてゆく・・・。

その物語は、その人が中心であり主人公だ

人はそれを人生と呼び、一冊の本を書き上げる


私達は、その物語の主人公はなれないが

少しだけその人の物語をより良く導く為の一節

にはなれるのかもしれない・・・。


「自分で紡げる物語なら

　　ハッピーエンドが好ましいよな」

師匠の口癖・・・今なら少しわかる気がした・・・。


透明「それじゃぁ～急いで終わらすか」

出口「はい」


世界がハッピーな物語で溢れますように




　　　　　　　　　完

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三郎の歌～・１８

三郎の歌～・１８


薄っすらと月明かりに照らされた

霊達は、山路さんと三郎に微笑みかける

山路「よ、よしこ・・・けいた・・・なのか」


二人は少し頷いたように視える・・・。


山路「よしこ～けいた～ごめんな～

　　　・・・ごめんな～・・・。

　　　一緒に・・・いて・・・やれなくて・・・」


今まで影だった霊たちは、少しずつ

自由を取り戻し、山路さんに近づく



よしこ「・・・あなた」

けいた「・・お・・とうさん・・・。」

山路「けいた～・・・よしこ～・・・」


二人はその場で泣き崩れている山路さんを

愛おしく抱えるように重なっている


よしこ「・・・よかった・・・。」

山路「」

けいた「おとうさん・・・会いたかったよ・・・。」

山路「お前たち・・・と・・うさ・・ん・・・

　　　一人だけ・・・生き残って・・・ごめんな」

よしこ「あなたが・・・無事で・・よかった」

けいた「・・・心配・・・したよ」


自然結界に囚われ、成仏もできなかった二人は

さぞ苦しかったはずなのに・・・。

そんな苦しみよりも山路さんのことを心配していたなんて



透明「なんて・・・深い愛情なんだろう・・・」


そんな三人の元に、三郎がヨタヨタと近づく


三郎「く～～～ん」


けいたくんの側で、顔を見上げる三郎・・・。


けいた「三郎・・・おとうさんを・・守ってくれて

　　　　ありがとう」


そう言うと、けいたくんの手が三郎の頭を撫でる

実際には触れることができないはずの霊体だが、

後ろで出口くんが印を組んだままなところをみると

少しだけ感触が残るようにと配慮してくれているのだろう・・・。


三郎「わふっ・・・く～～んく～ん」


三郎の嬉しそうな顔を見ていると、自然と涙が溢れる


出口「・・・ごめんね・・・そろそろ」

出口くんが呼んでくれたのだろう・・・。

玄関に眩い光に包まれた二人の守護霊様が迎えにきている


よしこ「・・・あなた・・・元気でいてね」

山路「よしこい、逝かないでくれ～」

けいた「おとうさん・・・ありがとう・・・。

　　　　三郎・・・おとうさんのこと頼むね」

山路「けいたけいた

　　　　おいていかないでくれ～」

三郎「わふっきゅ～ん・・・きゅ～ん」

透明「山じいさん・・・二人をちゃんと

　　　おくってあげて・・・・」

私は、山路さんの肩に手を置く・・・。

山路「あんちゃん・・俺は・・そうだな・・・

　　　ありがとう」


二人は山路さんと三郎に微笑みかけながら

玄関に進む・・・。


山路「・・・よしこけいた今までありがとう

　　　お前たちの分まで、ここを守っていくからな

　　　だから・・・また、帰ってきてくれ

　　　お前たちがいてくれて・・・家族になってくれて

　　　本当に・・俺は・・幸せ者だったよ

　　　よしこ～けいた～

　　　　　達者でなぁ～～～」

三郎「わおおぉぉぉぉぉぉぉぉん」



三郎の最後の歌が月夜に響き二人の霊たちは

あるべき場所へと導かれてゆく・・・。



残された私達には、少しだけ月明かりが眩しく感じていた




　　　　　　　　　　　　続く・・・。

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三郎の歌～・１７

三郎の歌～・１７


出口「・・・せ、先輩」

透明「・・・・・」


透明の全身から血の気が引いて

顔色が真っ青になってゆく・・・。


透明「(し、心臓が・・・と・・・ま・・・。)」


ドン！！ドン！！ドンドン


出口「せ、先輩」


心臓めがけ、思いっきり右の拳を叩き込んでゆく


山路「あ、あんちゃん」


ドンドンドスッ


透明「く～～～～～は～～～っ

　　　はぁはぁはぁはぁ

　　　ビックリした～」

出口「だ、大丈夫ですか」

透明「だ、大丈夫もうすぐ繋がる

　　　一瞬かもしれないから、見逃さないで」

出口「は、はい」


もう少しもってくれよ


チューブはどんどんと本体へと伸びてゆく


透明「・・・繋がった」

出口「」

三郎「わおぉぉ・・・ぉぉ・・ぉぉん」


三郎も力尽きている


出口「せ、先輩捕まえました」

透明「よしでかした出口くん」

出口「・・・・行きます」


出口くんの能力が霊体を捉え、強制的にパスを通す

そこから出口くんの詠唱が始まる



出口「天地におわす嵩領の神人よ

　　　◯◯のおのき◯◯◯◯をへ、

　　　　　導きの◯◯◯と願う

　　　◯◯・オーキン・◯◯◯◯・ウン」


パスを通じて、呪が行使される


透明「・・・・・どうだ」

出口「・・・・・・ふ～っ・・・大丈夫

　　　完了です　自然結界は外しましたので

　　　こちらに呼びます」


影がゆらゆら動き、その後細かい振動を起こす

真っ暗だった影は、徐々に色を保ち、

霊体と融合して行くのがわかる・・・。


山路「あっ・・あああっ・・・」


これでやっと・・・・・。

私はズキズキと痛む頭と心臓を抑えつつ

その場にへたり込んでしまった




　　　　　　　　　　　続く・・・。

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三郎の歌～・１６

三郎の歌～・１６


透明「・・・・」

出口「先輩」

苦悶に歪む顔を心配している出口くん・・。

それに応えるように右手を軽く上げて見せる

透明「(・・・・よし掴めた)」


山路さんとご家族の想い出がいっぱい詰まった

木人図から、お二人との縁チューブを引き出す

この繋がったチューブを抑えつつ、三郎と家族の

縁チューブから、けいたくんとよしこさんとの

繋がりを見つけ出し、山路さんの円チューブと

一時的にリンクさせて行く

次に、その三郎の縁チューブをそれぞれの

影たちにジョイントし、ルートを作り出す

ここまでくると後は、影達と本体である霊体との

繋がりを復活させる必要がある


ここまでの流れで疑問に思う人もいるかもしれませんが、

山路さんの縁チューブを使って直接、ご家族を

見つけることはできないのと思うかもしれません

もちろんご家族を見つけることだけであれば可能です

しかし今回の場合、最終的によしこさんとけいたくんを

救うには、どうしても出口くんの能力が必要な為

出口くんがお二人との繋がりを認識できるところまで

持って行かなければ救うことができないのです。


透明「(くっかなり難しいが・・・ここからだ)」


私は、影の中に残っているであろう生前の記憶を辿り、

影達の中にある木人図の断片を探す

影達が、この民宿に帰ろうとしたところを見れば

必ず記憶の欠片木人図の断片が残っているはずだ

一縷の望みをかけ、全力で能力を行使する



透明「(・・・・見つけた)」


木人図の小さな断片・・・思念体の行動理念になっている

この小さな欠片が本体に導いてくれると確信した私は

さっそく縁チューブをその断片にジョイントする


透明「(おおっビンゴ

　　　影を介してチューブが伸びてる)」

出口「」


出口くんも変化に気付いたみたいだ


三郎「わぉぉぉおおおおおぉおぉんん～ん」


三郎の歌が大きく強くなる

三郎も最後の力を振り絞っている


透明「(頼む繋がってくれ

　　　・・・・・・・よしいいぞ

　　　もうすこ)」

「ドクン」


透明「うっ」




　　　　　　　　　　続く・・・。




～・～・～・～・～・～・～・～・～・～

お知らせ

　禍津神様のスケジュールページ

禍津神様の進行日を更新しました

ご参考になさってくださいね


禍津神様の３つ権能それぞれに対して

しっかりと対策しておいてください

・地賽効果禍津宵の刻・３

・霊光律領禍津宵の刻・４

・鬼目奉牧禍津宵の刻・５


・透明＆昴の凸凹日記・禍津宵の刻対策法具

・光玉浄霊法(こうぎょくじょうれい)

～・～・～・～・～・～・～・～・～・～

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三郎の歌～・１５

三郎の歌～・１５


三郎「うおぉぉぉおおぉぉわおぉおぉおぉぉぉ～ん」


動物は本能的に能力の使い方を知っている

本来であれば、人間も同じ本能的な能力の

使い方を感覚的に持っているのだが、

色々な柵(しがらみ)に縛られ、本能を解放する

術(すべ)を失ってしまっているのかもしれない。


出口「・・・・頼む・・・・。」

山路「あ、あんちゃんたち、何を」

透明「山じいさん信じられないかもしれない

　　　ですけど、あそこにいる影は山じいさんの

　　　奥さんと息子さんの想いが形になったものです」

山路「お、想い」

透明「今、三郎と出口くんはその想いを引き寄せて

　　　お二人の本体と繋ごうとしています

　　　残念ながら未だお二人は成仏できていません」

山路「」

透明「ですので、ここで何とか山じいの大切な家族を

　　　ちゃんと送ってあげたいんです」

山路「・・・成仏・・・できていなかったのか・・・

　　　あんちゃん達、一体・・・」

透明「それは後で

　　　今は三郎と出口くんが迷子になってしまった

　　　お二人を見つけるのを待ちましょう」

山路「・・・・けいた・・・よしこ・・・」



簡易的な説明しかできないのが心苦しいが

今は二人を見つけることが先決

三郎の想い・・・出口くんの能力

２つが合わされば、きっと・・・・。


三郎「わふっ・・・うわぉおお・・ぉおぉおお」

出口「せ、先輩」

透明「」

出口「だ、ダメです・・・どうしても

　　　最後の道筋が途切れてしまって・・・

　　　・・・これ以上は・・・」


これ以上は、三郎にも影響が出てしまうということか

思念と霊体が完全に途切れている

やはり思念だけが独り歩きしてしまってから

時間が経ち過ぎているのかもしれない


透明「・・・・わかった・・・。」

山路「・・・よしこ・・・けいた・・・」


山路さんが影に手を合わせている・・・。


出口「・・・・・あ、諦めるんですか」

透明「おいおい私が諦めるとでも思ってる」

出口「えっ」

透明「今から、私も手伝うから

　　　一瞬でも繋がったら、その隙を見落とさず

　　　必ず繋いでくれ」

出口「は、はい」



よしやってみるか

かなり無茶な方法だけど

・・・木人図にアクセス


私は山路さんと三郎、二人の木人図に

同時にアクセスし、二人の中にある

よしこさんとけいたくんの記憶を使い、

接続を試みようとする・・・。



透明「(霊体と言えど、霊界に帰っていなければ

　　　縁チューブは今も繋がっているはず

　　　それを何とか・・・・。)」


三郎と山路さんの木人図から縁チューブを取り出し

二人の影に直接繋ぐ

かなり無茶だが、影と霊体を再度結ぶにはこれしか無い

一瞬でも結べれば、出口くんがその糸を確認できるはず

そうすれば、パスを通せるかもしれない


透明「(くっ・・・流石に４人同時接続なんて

　　　やったことがない・・・頭が割れそうだ)」





　　　　　　　　　　　続く・・・。




参考記事（縁チューブとは）

鑑定９９『なんの因果か…。』

鑑定１８『婚カツと縁・４』

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三郎の歌～・１４

三郎の歌～・１４


三郎の遠吠えは、より一層大きくなる


山路「さ、三郎わ、わからないのか

　　　そ、そこにいるのは、けいただぞ

　　　お前の大好きな・・・けいた・・なんだぞ」

三郎「わぉおぉぉぉおおお～～～ん

　　　うわおぉぉぉぉぉぉぉ～～～～～っ」

山路「三郎どうしちまったんだ」

透明「山じいさん三郎は、ちゃんとわかってますよ」

山路「えっ」


三郎の遠吠えは、一定のリズムを刻んでいる。

これは鳴き声というよりは・・・。


透明「出口くん・・・わかるかな」

出口「・・・・はいやってみます」


出口くんが、恐る恐る三郎に近づいて行く・・・。


山路「お、おいあんちゃん何を・・・。」

透明「山じいさんここは彼に任せてあげてください」

山路「」

透明「(頑張れ出口くん)」

出口「さ、三郎・・・気持ちは同じだから

　　　か、噛まないでね・・・」


出口くんの腕が三郎の頭に伸びる・・・。


出口「う、ううっ・・・・。」


出口は三郎の頭に手をのせ、

自分の能力を開放してゆく


三郎「わふっわおおぉおおおぉおおぉぉぉ～ん」


私は目をつむりながら、三郎が飼い主を呼ぶ

切ない歌を聞いていた

三郎の想いが影を通して本体である霊体に

届くように出口くんも能力をフルに使い

三郎と同調してゆく・・・。


山路「三郎・・・・。」

透明「(頼む・・・三郎の歌に応えてくれ)」




　　　　　　　　　　　　続く・・・。

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三郎の歌～・１３

三郎の歌～・１３


透明「あっ・・・」


まずい、山路さんにも視えてしまっているのか


三郎「わおおおお～～～～～ん

　　　うおおおおお～～～～～ん」

山路「さ、三郎

　　　こ、こ、こら

　　　わ、ワシの大事な家族に

　　　何をするんだー

　　　さ、三郎をは、離せ～～～」


どうやら山路さんには、三郎が影に捕まって

いるように視えているようだ


玄関先にある傘立てを取り、影に突っ込んで

行こうとする山じいさんを、出口くんが

すぐさま抑え込む


山路「あ、あんちゃん離してくれ

　　　三郎が三郎が」

透明「(山じいさん、あんなに震えてるのに・・・。)」


三郎くんへの愛情が恐れを超えている


透明「山じいさん大丈夫

　　　三郎くんは捕まっているわけじゃないから」

山路「えっえっ」


そう言うと私は、山じいさんの頭に手をのせ

一時的に視野を共有するように術式を込める。


山路「な、なん・・・」


ゆっくりと、視野が広がり影の形を

捉えられるようになってゆく・・・。


山路「・・・そ、そんな・・・。」


完全に視野が共有され、月明かりに照らされた

それは、山路さんの目に懐かしい大切な人の

面影として映し出される・・・


山路「そ、そんな・・・まさか・・・

　

　　　ぁぁああああああああ～

　　　よ、よしこ～けいた～

　　　お前たちなのか」


影は山路さんの問いかけに答えるように

ゆらゆらと身体を動かしているようにみえる。


山路「お、おおおぉぉぅ・・・

　　　・・・よしこ～けいた～」


山路さんの目から涙が溢れる・・・。

視野を遮る涙を何度も振り払い、

目の前にいる大切な家族の姿を見逃すまいと

必死に拭っている姿が印象的だった・・・。


山路「苦しかったよな～

　　　・・・辛かったよなぁ～

　　　ごめんよ～ごめんよ～～～っ」


かける言葉が見つからない・・・。


三郎「うわおおぉぉぉぉ～～～～～～ん」

透明「」

出口「」


突然三郎の鳴き声のトーンが変わった



　　　　　　　　　　続く・・・。

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三郎の歌～・１２

三郎の歌～・１２


強制コネクト能力

出口くんが目覚めた能力は、対象さえ認識できれば

どのような存在ともパスを繋げることができる能力

パスを通すというだけであれば、お互いの合意があれば

さほど特別な能力とはならないが、彼の場合

相手の意思を介すことなくパスを繋げられる為、

相手に拒否権は存在せず、強制的にパスを通せてしまう

という、とても強力な能力となる

この能力を使い、呪法を行使すれば、どんなに

離れた対象でも１００％の確率で効果を付与

することが出来てしまうため、使い手次第では

恐ろしい能力とも言える



出口「・・・思念から辿って、本体の霊体に

　　　パスを通してみます」

透明「頼んだよ」


私と彼が学生の時、彼は勝手に人とパスが

通ってしまうことで苦しんでいた・・・。

パスはただ繋げてしまうと、その人の思考や

行動理念など、あらゆるものが自然と流れ込んで

きてしまうため、通常はパスから流れてくるものを

自分で制御し、シャットダウンするもの

しかし当時の彼には、そんな知識や技術もない為

常に人の感情や欲求などにさらされ続け、

精神が崩壊寸前まできていた・・・。


透明「(本当によくここまで能力を制御

　　　できるようになったなぁ～今では

　　　結界とのパスを繋ぐ要にまでなれる

　　　ようになって・・・偉いぞ出口くん)」


ちょっと誇らしげな先輩先生・・・。


出口「・・・・・・・。」

透明「・・・・・・・。」

出口「・・・・す、すみませんダメです」

透明「(ズコーッ)　えっえっ」

出口「え、えっと・・・この思念体は

　　　本体と完全に乖離してしまっていて

　　　繋がっている部分が無いみたいなんです」

透明「うっ・・・そ、そっか

　　　そ、そういうこともあるよね

　　　うん・・・う～ん」


こいつは困ったぞ

念と本体が繋がっていると勝手に思い込んでいたけど

別々に存在していることもあるのかぁ～

そうなると・・・・。


三郎「うぉおおおおおおおお～～～～～～ん」

透明「」

出口「ヒッ」

ものすごい大きな声で三郎が遠吠えをし始める


透明「さ、三郎」

山路「お、おいどうしたんだ・・・」


さっきまで、泣き崩れていた山路さんが

フラフラと玄関に近づいてくる


山路「・・・・・・んっんっ」


目を何度も擦りながら、三郎の隣にいる

影を凝視する・・・。


山路「お、お、お、おい

　　　あ、あ、あ、ありゃ～なんだ」




　　　　　　　　　続く・・・。




参考記事パス能力とは

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三郎の歌～・１１

三郎の歌～・１１


出口「こ、この方々って・・・・」

透明「山路さんの奥さんと息子さん・・・」

三郎「く～ん・・・。」

透明「三郎もわかるんだね・・・」


影はゆらゆらと、ただその場で佇んでいる


出口「ど、どういうことですか」

透明「さっき、上から見て分かったのだけど、

　　　ここの前の道は、霊道になっているのは

　　　さっき言ったと思うけど、その中に

　　　この民宿に想い入れがある人がいたんだ

　　　その人は、霊道の途中にあるこの民宿に

　　　帰りたくて、民宿の前で止まってしまい、

　　　その想いに多くの霊が引っ張られたため

　　　民宿の前に霊達が溜まってしまったんだと思う」

出口「・・・・そっか・・・」


出口くんも悟ってくれたみたいだ・・・。

さて、問題はここからだ

一般的な浮遊霊であれば浄霊をし、あの世に

送ることはそれほど難しくないのだが、

このお二人は今、影の状態・・・つまり思念

だけが霊道にのっていると考えるのが正しい

そうなると本体の霊体は未だ海の自然結界に

囚われている可能性が高くなる・・・

ここで影だけ浄霊したとしても

本体が囚われている状態では意味がない・・・。


出口「この方達って、思念ですよね」

透明「そうだね・・・。」

出口「・・・・・・。」

三郎「くぅ～～～～ん」

透明「三郎」


三郎が右に立っている影の側に寄り添い

顔を見上げている・・・



透明「(そっか・・・こちらの子が息子さんなんだね)」



三郎の切ない鳴き声と撫でて欲しそうに

懇願する表情が痛ましい・・・


透明「・・・何とかできないかなぁ・・・。」

出口「」

三郎「くぅ～ぅ」

出口「・・・な、何とかしましょうよ」

透明「えっでも・・・」

出口「俺手伝いますだから・・・」


そっか・・・出口くんも災害で・・・。


透明「わかった

　　　でも、救うのは出口くんだよ」

出口「えっ」

透明「君の能力を使わないと

　　　彼らを救うことは出来ないと思う

　　　それでもいいかな」

出口「・・・・わ、わかりました」




　　　　　　　　　続く・・・。

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三郎の歌～♪・１０

三郎の歌～・１０


透明「おまたせ出口くん大丈夫」

出口「す、すみません結構限界です」


一階に戻った私は、急いで結界をはりなおす

地場が安定しない結界は、土地に気力が

定着しないため、ただ気力を垂れ流す形で

空中にはり続けるしかない・・・。


出口「す、すみません」

透明「いやいや頑張ってくれて助かったよ

　　　お陰で色々と確認できたから」

出口「」


三郎「ゔゔゔううワンワン」


透明「三郎君は偉いね

　　　こうやってずっと山じいを守って来たんだね」


きっとこういったことは何度もあったはず・・・。

その都度、三郎は山路さんを守るため、

必死に吠え続けていたのかもしれない



透明「出口くんさっき、上から確認したら

　　　ここの前の道、霊道になってるみたいなんだ」

出口「霊道・・・」

透明「だけど、この民宿の中には道が入っていない

　　　となれば、考えられるのはひとつ

　　　一度、ここに張り付いてる人を軽く引きはがすから、

　　　このまま結界を維持しておいて」

出口「わ、わかりましたが、頑張ります」


私は結界印を外し、聖天の印を結びなおす


透明「(頼む上手くいってくれ)

　　　オン・・・キキ・・・マエイ・・・。」

詠唱が完了し、印に気力を込める


「ざわざわざわざわ・・・。」


玄関に張り付いていた影達が１つ、また１つと

剥がされて行くのが視える


透明「(もう少し・・・。)」

三郎「ワンワン」


三郎の威嚇でさらに影が剥がされて行く


透明「三郎ありがとうさて・・・・。」

出口「えっ先輩何を・・・。」


扉のスリガラスには、２つの影だけが映し出されている

私は玄関を開けて、その影だけを招き入れた・・・。


黒い影はゆらゆらと玄関に佇む・・・。

もう、三郎も吠えることはなくなっていた




　　　　　　　　　　続く・・・。

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三郎の歌～♪・９

三郎の歌～・９


玄関のスリガラスには、黒い影のようなものが

映り込み、ひとつ、ふたつ、みっつ・・・

どんどんと増えてゆく


透明「・・・・・・。」

出口「・・・ゴクリ」


三郎「ゔゔゔゔゔゔゔううううう

　　　ワンワンワンワン」


出口「ヒッ」

透明「」


一人忙しそうな出口くんをよそ目に

気づいたことがある・・・


影が玄関から入ろうとすると

三郎が吠え、影が怖気づくのか

入って来ようとしなくなる・・・。

しかし、影はどんどん増え、今では玄関の

スリガラスにビッシリ張り付いている


透明「流石に時間の問題だな・・・。」


私は印を組み、結界をはるべく詠唱を始める

出口「サ、サポートします」


私の行動に合わせ、結界の補佐をする出口くん

そこに


「グラグラグラビキッ」

透明「くっ余震か・・・。」


地場が一気に狂いだす・・・。

土地に根付かせる結界は地場の安定が必須条件

この状態だと、弱い結界しかはることができない


透明「出口くんここ任せて良いか」

出口「えっは、はい」


そう言うと、私は急いで二階に上がり

部屋の窓を開け、外の状況を確認する


透明「なっ」


窓の外少し小高い場所にある民宿から見た

景色には、海の方からの一本道にゆらゆらとした

影がものすごい数歩いて来ている・・・。


透明「(こ、これどれだけいるんだ

　　　まさか、この道・・・霊道になってるのか)」


死者の通り道である霊道

・・・この影は海で犠牲になった方々が

彷徨いいでているのかもしれない

しかし霊道に乗っているとはいえ、殆どの人が

あの世に帰れるわけでなく、海の自然結界に引っ張られ

元に戻されてしまい、彷徨い続けることが多い・・・。


透明「(何とかしてあげたいけど・・・

　　　・・・この数は・・・)」


自分の力の無さがうらめしい


透明「・・・・よし」


私は、窓を閉め一階へ戻る




　　　　　　　　　　　続く・・・。

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