トシの旅

小さな旅で学んだことや感じたことを、
まとめるつもりで綴っています。

皇室の御香華院、御寺泉涌寺

2011年09月07日 | 日記
「御香華院」とは、「香を焚き花を供える場所」、すなわち「先祖が眠る寺」という意味で、「皇室の菩提寺」という意味だそうです。
また、この寺の公式サイトには、
「応永7(1374)年1月、後光厳院をここで御火葬申してから、以後9代の天皇の御火葬場となり、御水尾天皇から孝明天皇までの、江戸時代のすべての天皇、皇妃の御陵もここに造営された。さらに明治維新の後は、他山奉祀の歴代天皇、皇妃の菩提寺、『御寺(みてら)』として尊崇されるようになる」と書かれています。
「天皇家の菩提寺」という泉涌寺に、急に行ってみたくなりました。

JR奈良線の東福寺駅からスタートしました。

東大路通りを進んで泉涌寺口のバス停から泉涌寺道に入り、総門にむけてゆるやかに上っていきます。

振り返ると民家の間から、京都タワーが見えました。

総門からは、静かな参道を進みます。

泉涌寺山内にある寺院では、それぞれ七福神を祀ってあります。毎年の成人の日には、「七福神めぐり」の多くの参拝者でにぎわうとか・・

総門前にあった即成院の福禄寿は1番、2番戒光寺は弁財天、・・・  6番悲田院は毘沙門天、7番法音院は寿老人。そして、泉涌寺楊貴妃観音は番外だそうです。

写真は、弁財天を祀る戒光寺の身丈1丈8尺の観音「丈六さん」の碑。運慶と湛慶父子の手になる釈迦如来像、国指定の重要文化財。大きな仏像を「丈六」と呼んでいたから名付けられたものです。

緑と静寂の中を進むと、天皇陵への参道に入ります。

この写真は、泉涌寺の紹介でよく使われているアングルです。仏殿と舎利殿が並んでいます。東門の近くの参道からの姿です。

さらに参道を上ります。
 
 
一番最初にある天皇陵、後堀河天皇観音陵に着きます。坂をのぼって右手の、鳥居の先に御陵がありました。静寂の中をお参りしました。坂道から泉涌寺の伽藍が見えました。

引き返して、泉涌寺東門から拝観料を支払って境内に入ります。「ここから入ると正面に泉屋形があります。泉涌寺の名前の由来になったところで、今も泉が湧き続けています。」「月輪陵(がちりんりょう)へは、霊明殿の前を歩いて行ってください。」
僧形の男性のていねいで、落ち着いた説明でした。

正面の山裾に水屋形がありました。

水屋形に向かって、左手に仏殿、右手に大門が見えました。仏殿前から見ると大門は坂の上の方にありました。下は白砂利。静浄な雰囲気です。このお寺は、大門から入ると仏殿に向かってくだって行くつくりになっています。

鎌倉時代、月輪大師俊芿(がちりんだいししゅんじょう)が開いた泉涌寺。舎利殿は、俊芿の弟子、湛海(たんかい)が南宋慶元府の白蓮寺から請来したといわれる仏牙舎利(釈尊の歯)を安置しています。

説明板には、謡曲「舎利」の話が書いてあります。「足疾鬼が舎利殿に飛び上がり舎利を奪って虚空に跳び去ったところ、この寺を守る韋駄天がこれに追いついて取り返す」という「太平記」の説話に基づく逸話が紹介されていました。

仏殿、舎利殿の脇をとおって、本坊に向かいます。

本坊の入り口の菊のご紋、皇室の菩提寺らしい雰囲気です。皇室の御紋は16花弁、ここは15花弁の菊の御紋でした。拝観料を払って入ります。「どうぞ、ゆっくりご覧になってください」と、丁寧に頭を下げられた僧形の職員の方。思わず、私も姿勢をただして頭を下げていました。

本坊から御座所に向かって順路が定められています。御座所は、皇室の関係者がお参りに来られた時に使われます。一番尾印象に残っているのは、御座所庭園に面した玉座の間。天皇、皇后が来られた時の休息所として使われます。玉座は畳や上敷で4段に分かれていて、一番上には菊のご紋がついていました。御座所内部はもちろん撮影禁止でした。

本坊を出ると、本坊・御座所の並び、舎利殿の後ろに霊明殿が見えます。「歴代天皇の尊牌(位牌)をお祀りしているところ」、檜皮葺で、すべて尾張産の檜材でつくられているとのことです。昭和天皇の尊牌もここにお祀りされているようです。

霊明殿の前を通って霊明殿の裏に回ると、月輪陵に着きます。ここには歴代天皇ら25陵、5灰塚、9墓が営まれているそうです。

この泉涌寺が皇室と深いかかわりができたのは、仁治3(1242)年からのようです。「四条天皇が12歳で崩御されたとき、当山で御葬儀が行われ、御陵が開山大師御廟近くで営まれ、当山に天皇の御影や尊牌が奉安されて、皇室の御寺としての寺格が備えられた」(泉涌寺公式サイト)とあります。

ここからゆるやかな坂をのぼって大門脇の楊貴妃観音堂に向かいました。

楊貴妃観音の参拝を終えて、トイレをお借りしようと、大門の拝観受付の脇を通ったとき、窓口にいた高齢の男性はていねいな会釈をしてくださっていました。

参拝者を大事にしてくださる、感じのいいお寺でした。

東口の受付でも、本坊でも、そしてここ大門でも、礼儀を尽くして参拝者を迎えてくださったことに感謝しています。