風に吹かれすぎて

今日はどんな風が吹いているのでしょうか

ポール・ニューマン

2008年09月29日 | 雑感
ポール・ニューマンの訃報を新聞で読みました。
いい役者だな~と思う男優はたくさんいるのですが、ぼくが男のせいか、
いい男だなぁ~と思う役者は余り多くはありません。
その余り多くはない、いい男だなぁ~と思う役者がポール・ニューマンでした。
遊び半分で始めたドレッシングを販売する会社で成功し、
その会社が上げた純利益2億2千万ドル(ドルですよ!)全額を恵まれない子供たちのために寄付をしたり、
父親の名声の軋轢に負けて麻薬で死んだ自分の息子を悼んで、麻薬撲滅の運動に参加したり、
とにかくスケールが大きく人間味が溢れる俳優さんでした。

ぼくが代表作を一つだけ上げるとすれば、「暴力脱獄」です。
邦題が無茶苦茶すぎます。
「クールハンド・ルーク」が原題です。
日本では知名度が低いですが、アカデミー主演男優賞の候補にもなったみたいです(今日、ググってみてはじめて知りました)。
強いて訳すなら、「いかした奴・ルーク」でしょうか。

カミュの「異邦人」をたっぷりアメリカナイズしたような、かっこいい映画でした。
ニヒルという言葉がその昔流行しましたが、ニヒルというスタイルから独特のイヤミと臭みを抜き取ったのがルークでした。

べろべろに酔っ払って、パーキングメーターを引っこ抜いて、刑務所に入れられてしまいます。
意味もなく威張りくさる看守の言動に思わずニヤリとしてしまいます。
当然、看守から目を付けられ、虐められます。
囚人仲間からも、独自のスタイルを守り通すルークは虐められます。
ルークにとっては、そんなことはどうでもいい話です。
どうでもいい話なのですが、虐められている方のルークはその頑強な抵抗力の強さゆえに周囲からますます憎まれます。
刑期も理不尽に延ばされていきます。

そこからが彼の本領が発揮されます。
彼の関心は周囲の下らなさにはありません。
彼が守り抜いているのは、人々から受ける評価でもなければ、待遇でもないのです。
彼が唯一守り抜いているのは、魂の自由、それだけです。
それからどうなるのかは、まだ見ていない人のために伏せておきます。

学生のころこれを見て、うひょ~と思いました。
その頃の学生ならみな引っかかった虚無とか、アウトサイダーとか、そんな感じの世界の実写版だと思いました。

イェール大学大学院出のインテリでしたが、ハスラーとか私立探偵とか現場労働者とか、場末のニヒルな役柄が飛び切り似合っていました。
アクターズ・スタジオでジェームス・ディーンと同期だったというのも今日知りました。

役柄もカッコよかったですが、生き方がまたかっこいい役者さんでした。
天国に広がる風景を見て、ニヤリとしているような気がします。

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