鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝の自然71 秋のカモ類‐エクリプス

2015-12-14 16:50:53 | 十勝の自然

Photo by Chishima,J.
コガモ 2007年11月 北海道帯広市)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年9月28日放送)

 秋が深まると、池や川といった水辺はカモをはじめとした水鳥で賑わい始めます。カモの仲間にはマガモやカルガモなど北海道で繁殖するもののほかに、コガモ、ヒドリガモなどロシア北部で繁殖して秋から冬に渡って来る種があり、たとえば秋冬の帯広川下流では10種以上のカモ類を見ることができます。

 しかし、冬から春にかけて見られる緑や赤茶色、白黒などの派手な羽色、あるいは長い尾羽や飾り羽を持つオスのカモはこの時期見ることはできず、皆メスのような地味な茶色や黒っぽい色をしています。秋のカモはメスばかりなのでしょうか?もちろん、そんなことはありません。

 繁殖を終えたオスのカモは、羽の生え換わりによってメスとよく似た地味な羽色になるのです。派手な羽色や飾り羽はメスを惹きつけ、自身をPRするのには良いのですが、自然界ではいささか目立ちすぎてしまいます。くわえて、この時期のカモは翼の羽を一斉に生え換えるので、一時的に飛べなくなり、目立ってしまうとタカやキツネといった天敵に狙われた時、非常に危険です。そのため、次の繁殖へ向けた活動が始まる冬の初めまではオスもメスと似た地味な羽色になり、これを「エクリプス」といいます。「エクリプス」とは本来、英語やラテン語で、日食、月食、または輝きを失うことを意味する言葉です。

 メスにモテて子孫を残すためには派手な色彩やディスプレイが必要な一方、捕食者に見つからずに生き延びるには極力目立たない方が良い。水面に浮かんで呑気に惰眠を貪っているだけのようなカモのオスも、相反するジレンマに悩みながら懸命に生きているのです。


(2015年9月17日   千嶋 淳)

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