鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝の自然98 オオワシ

2016-12-10 22:43:32 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
オオワシ成鳥 2010年12月 北海道十勝川中流域)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年11月30日放送)


 今年も冬の猛禽類、オオワシの季節がやって来ました。サハリンやカムチャツカなど世界でもロシア極東でのみ繁殖し、10月下旬に稚内の宗谷岬から北海道に渡って来るオオワシは分布が狭いだけでなく、総数も5000羽程度と少ないため、世界中のバードウオッチャーがオオワシを見に冬の北海道を訪れます。翼を広げると2.3mにもなる巨体や精悍な眼差しは、バードウオッチャーでなくても実際に出会えば圧倒されること請け合いです。

 ところで、オオワシというと十勝の人でも知床に行かないと見られないと思っている人が多いようです。確かに、1980年代までは日本で越冬するオオワシやオジロワシの大部分が知床半島の羅臼で、スケトウダラ漁のおこぼれに預かっていました。ところがその後、漁の不振に伴い、餌を求めて各地へ分散するようになりました。あるものは川でサケを、別のものは山間部で撃たれたエゾシカの残滓(ざんし)を求め、といった具合に「海ワシ」と言われた生態は徐々に変化します。

 その過程で目を付けた場所の一つが、幕別町の十勝川千代田新水路。新水路の浅瀬が産卵に適していたため、多くのサケが遡上・産卵後に死に、それがワシの餌となったのです。12月上旬・中旬の多い日には50羽を超えるワシが観察され、それらが鈴なりになって羽を休めるドロノキを、私たちは「ワシのなる木」と呼んでいます。

 帯広市街から車でわずか15分の距離で、たくさんのオオワシやオジロワシを見ることができるのです!!新水路で多くのワシを観察できるのは11月から、サケを食べ尽くす1月前半くらいまでですので、是非その勇姿を楽しんでほしいと思いますが、一定の距離を保ち、できれば車の中から観察するなど、警戒心が強いワシの食事を邪魔しないよう、配慮をお願いします。写真を撮るため必要以上に近付いたり、逃げたワシが戻って来るのを待ち続けたりするのはご法度。皆でマナーを守りながら、新水路をいつまでもワシたちの楽園としてゆきましょう。


(2015年11月29日   千嶋 淳)


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