鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝の自然47 ノハナショウブ

2015-09-09 15:36:59 | 十勝の自然


原生花園の中のノハナショウブ 2015年7月 北海道中川郡豊頃町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年7月27日放送)


 6月前半のセンダイハギ、6月後半のハマナスに続いて、7月下旬の十勝海岸や十勝川下流域の草原を彩るのがノハナショウブの紫色です。高さ40~80cmになるアヤメ科の植物で、内側の小さな花びらと外側の大きな花びらとが花を形づくります。ヒオウギアヤメ、カキツバタなど他のアヤメの仲間より花の赤紫色みが強く、外側の花びらの付け根に黄色い筋(すじ)の入ることで区別できます。
 野に咲く花菖蒲(ハナショウブ)が名前の由来で、花菖蒲はアヤメの昔の名前です。紛らわしいことに昔は、現在のショウブをアヤメと呼んでいました。ショウブは武道・武勇を重んじる「尚武」とかけて、端午の節句に軒にかけたり風呂に入れたりするサトイモ科の植物で、葉はアヤメと似ていますが、まったく別の植物です。
 ノハナショウブは北海道から九州までのほか、中国東北部、朝鮮半島などアジア東部に分布し、北海道では海岸や湿地、湿った草地などで7月中旬から8月に花を咲かせます。場所によって大群落を作るほか、毒があって牛馬が食べ残すため、家畜の放牧地がお花畑となることもあります。
 園芸種のハナショウブの原種でもあります。ハナショウブは江戸時代から改良が重ねられ、現在では500を越える品種が作られているそうです。全国各地にアヤメ園やショウブ園があって、初夏には行楽客で賑わいますが、日本最古のものはなんと江戸時代中期に、ハナショウブの栽培が盛んだった江戸の葛飾に開かれ、浮世絵にも描かれました。


(2015年7月21日   千嶋 淳)

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